始まり
「起きなさい」
そんな声がして目が覚めかけたが、覚めずもう一度目が完全に閉じようとした瞬間。
「起きなさい!!」
「うぁ……」
完全に潜りきっていた布団が奪い取られ、締め切っていたカーテンが全開にされている。
そのせいで嫌でも目が覚めてしまう。
「何……? お母さん? 」
「何? じゃなくて。今日は街のほうに行くんでしょう? この村からかなり遠いから、早く行かないとすぐ夜になるよ」
「あ!」
今日は手伝いに手伝いを重ね、貯まったお小遣いで魔法の本を買う予定だった。
俺は最近魔法が使えるようになった。それが何故なのかは分からない。
ただこの村が小さいせいなのか魔法を使えるのは自分だけだった。
寝起きで重い身体をベットから起こし、朝ごはんが準備されているテーブルに着く。
「おはよう」
「おはよう」
そう言うと先に起きてテーブルに着いていたお父さんに同じように返された。
「魔法の学校に通わせてあげられたらいいんだけどなぁ……」
「仕方ないよ。ここから街まで遠いし」
この小さな村から街までは、歩くと半日かからないくらいの距離がある。
まぁ馬車に乗せてもらえばもう少し早く着くが。
そんな会話をしながら朝食を終えると出かける準備を始める。
「貯めたお金を持ってと……。それじゃあ行ってきまーす」
「「はーい。行ってらっしゃい」」
玄関の扉を開け、外に出ると少し先に大きめの噴水が見える。
その上に透明クリスタルのようなものが浮かんでいる。
何故こんな村にこんなものがあるのかは分からない。
てかこの噴水、何も無い空中から水が出てきてるし……。
意味が分からない。
まぁまずは街に行くために馬車を捕まえなければ。
と思っていたところに。
「お、今からどこかに行くのかい?」
「はい。ちょっと街まで」
「おお、それはちょうどいい。私も今から行く所なんだ。乗ってくかい?」
「え? ありがとうございます!!」
なんと小遣い稼ぎのためによく畑仕事を手伝っていた隣の家のおじいさんが馬車に乗せてくれると言うのだ。
ラッキー!
これで無駄なお金の消費がなくて済む。
俺はすぐさま馬車に乗り込み、街に着くのを待った。
夕方になる前。まだ太陽に照らされる時間帯に街に着いた。
それでも今日中帰ろうと思ったら村に着くのは深夜だろう。
「足りるのか……?」
馬車に乗っている間はほとんど眠っていたが、気づいたことが一つある。
そもそも本を買うのにお金が足りるのか? ということである。
今持っているのが銀貨12枚。
本の値段は分からないが、何か食べ物を買おうと思ったら、ほとんどの物が買えるお金だ。
まぁ足りることを祈るだけだな。
そんなことを考えながら街の中を歩いていると本屋にたどり着いた。
中に入りカウンターにいるお姉さん尋ねる。
「魔法に関する本はありますか」
「はい。すぐに持ってきます」
そう言われ、お金が足りることを本気で祈る。
足りろ足りろ足りろ足りろ……。
「こちらになります」
そう言われ数冊の本を見せられた。
「あの……ちなみにお値段の方は……」
「金貨2枚になります」
金貨2枚? 高くね?
アルスが持っているお金では全く足りなかった。
「すみませんでした……」
俺はそう言って店を出た。
結局なにも買えなかった。
かなり落ち込んでしまう。
頑張ってお金貯めたのに……。
馬車に乗せてくれたおじいさんの所に戻ろう。
すぐ用事終わるから待ってるって言ってたし。
しばらく歩くとすぐに馬車の元に着いた。
「用事は終わったのかい?」
「まぁ、はい。一応」
「じゃあ帰ろうか」
「帰りもよろしくお願いします」
そう言って、テンションを低くしたまま馬車に乗り込んだ。
村に着く頃辺りはもう真っ暗だった。
それなのに村は騒がしい。
何をやっているのだろうか。祭りだろうか。
そんなことを思いながら村に入ると驚くべき光景が広がっていた。
それは村の中央にあった噴水が消え、そこに底が見えない程の大きな穴が空いている。
そしてその横には家よりも大きい巨大なサソリの魔物が、何かに食いちぎられたかのような形で死んでいる。
何があったのだろうか、横にいるおじいさんもびっくりして固まっている。
見たところ村に住んでいる人は無事そうだな。
穴の周りに全員集まっている。
俺はそこに近づき、両親に聞いてみた。
「何があったんだ?」
「あ、アルス! 帰ってきたのか!」
「急に大きな揺れと音が外でして、出てみたらすんごい大きな蛇? みたいな目がいっぱい付いてるのが下から出てきたんだよ!」
「その時に噴水とその上のクリスタルを食べて行ったんだよ」
なんだそりゃ。
「このサソリは?」
「蛇に付いてた。そういえば頭に誰か乗ってた様な?」
乗ってた様なって。
聞いてもよく分からないことが返ってくる。
そもそも地面からこんなでかい蛇が出てくる時点でもうおかしい。
「君、魔法が使えるね?」
急にそんな声が上から聞こえた。
驚き見上げると、そこには一本のホウキに乗った一人の女性がいた。




