08迷 走2
「原因が、わかったのか?」ホテルを出たところでタクシーを拾い、K遺跡へ向かっている所で隣の上月に聞いた。
「・・・さぁな。」と、答えたきり、何か考え事でも始めたように顔つきが変わった。
こうなると何を聞いても無駄なことはわかっているし、進んで話さない涼子さんも話す気は無い、ってことだろう。
私は自分なりに整理、というか推測してみることにした。遺跡に向かうのだから、何かいわくつきなものを承さんが発見して、それで呪われるとか?…これじゃあ王家の呪いだ。でも、そんないわくありげなものが発見されたなんて聞いていないし、だったら行動を共にしていた佐々木さんだって仮死状態になって良さそうなものだ。
ーーーまてよ、佐々木さんが実は、操られていたとしたら?だいたい、部屋には承さんしかいなかったし、居合わせた医者というのも怪しい。佐々木さんが何らかの、例えば昨日の女のようなものにとりつかれているとしたら!?承さんが危ないじゃないか!考えていくうちにどんどん良くないことばかりが浮かんでは消える。とうとう最悪の状況まで想像したら、ホテルに残っていれば良かったという思いはどんどん強くなった。
「上月・・・俺、やっぱホテルにもど・・・・」そこで、タクシーが止まる。K遺跡に着いたのだ。涼子さんが料金を払って、上月が有無を言わさず私をおろす。
「あのっ・・・だから・・・」タクシーが走り去ってゆく。
「馬鹿かお前。ホテルに戻ったところで何にも出来ることは無いんだぞ。・・・だいたい、なんで、戻るなんて言い出すとこにいったんだ?どうせ、ろくな考えじゃないだろうけど。」
「なんだよ、それ!ここにいても俺は何の役にも立たないだろう!?だったら、承さんの側にいた方がいいと思ったんだよ。悪かったな、ろくな考えじゃなくって!」全ては想像にすぎ無くても酷いいわれようだ。私はついかっとなって、上月にくってかかった。
「・・・間違えるな。承の側にいたいというのはその方がお前が楽だからだ。目下のターゲットはアイツだからな。そうしている間お前の身の安全は保証されるーーー・・・悪い。言い過ぎた。そうじゃないんだ。堤・・おい、泣くほどのことか?。」
「!誰が泣いてるかよっ。」私は緩みそうになった涙腺を気合いで止めて怒鳴りつける。
「すまん。言い過ぎた。お前だから、お前だからこそ出来うることがあるんじゃないのかと言いたかったんだ。」
「ーーそれって・・・」昨夜のことを思いだし上月を見る。
「賭けてみよう。お前の勘とやらに。」上月は不敵に笑うと、遺跡の裏山を指さした。