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栄翼の瞳  作者: 水城四亜
74/79

74道 程 ※タイトル変更

ただ眼を開くだけで涙が出、ただ息を吸うだけで肺に激痛がはしる。


怨嗟の声がこだまし、あざ笑う光りが彼方に見える。


土はただれ、川は腐敗し、空は暗くどこまでも淀んでいる。


足下すらおぼつかない世界で、渡與とよは静かにその流れに身を任せていた。


そもそも、大地というのがここにあるのか。それすらわからない。


ただ自らの意識だけをよりどころに歩まねばならない、そんな場所。


(来ましたね・・・・)彼方より光りを感じ、意識をそちらへやると海神が見知った意識をつれて彼女の作った即席の道をたゆたうように潜って来る。


(不思議な縁・・・・)思えば、彼女が堤をこちらへつれて来たようなものだった。それすら今では遠い昔のことのように思えた。


(渡與)上月の声がする。彼はやはり自分と同じようにこの世界でも意識を保っていることができたようだった。

(上月様・・・こちらです。この先へ)今の自分には身体は無く、記す指すらないがそれで上月にはわかるはずだ。その一瞬、ほんのわずかに暖かい意識に触れる。

(堤様・・・・)その意識が自らを怨んでいないことに驚く。

(・・・・海神よ、我らが願い、我らが命、その先へ行く者たちよ、どうかーーーー)


そこで意識が途切れた。



その時のことは、覚えていない。

上月と確かに帰るという強固な意思だけしか無かった。

だから、大きな本流の中に巻き込まれ流され自分すら失うだろうその時に何かが、守ってくれたことなど、私にはわからなかった。

後で、上月からあれが渡與であったと聞いた、ただ、それだけなのである。


本当に、私はただ、何もできないでいたのだ。


海神は、神だけに人の意思などついでに連れて行ってくれるだけで、途中でどんな目に合おうがそれは彼らの知るところではなく。

まるで意識の無いジェットコースター(マッハ)に心もとない防護服でひっかけられ、大気圏突入でもしたかのような有様で。


身の毛もよだつ怨嗟の声と腐臭と激痛を免れた瞬間、目に入ったのは蒼と緑の地表。


そこで意識は途切れた。




ねぇ。どうして、どうして人は人を見ることしかできないの。


常世の神は人のために死ぬのなら、どうして人は神のために死なないの。


どうして人は神に祈るの。


小さな、紅い橋。その先は現世。白い、まだ新しい橋が人の愛を一身に受け、輝いている。


小さな橋の上に、現世をのぞいている女がいた。


「威世・・・ここにいたのね。」渡與は、静かに言葉を紡ぐ。その時になってはじめて、自らが元の身体を有していることに気づく。

橋の下には川が流れている。人の手や髪、無味無臭のそれらがうごめくまるで世の果てのように。


今はそれすら怖くない。それは私であり、私であったものだから。


この身を苛む痛みと途方もない渇望が人を人でなくするのなら、はじめから望まなければいいのだ。


「人は知らぬ。」

「ええ。」

「人は知らぬ。我らが上にその命があるのだと。」

「ええ。」


威世はただ小さく呟いた。


「人は愚かだ。」


「こんなところにいたのね。あなたは。」渡與はその小さな背を見つめた。


「どうして。どうして常世が死なねばならぬ。」

「泣いているの?」渡與は威世の頭をなでた。それはずっと離れていた自分の片割れ。


「人は愚かだ。祈りなど、何もならぬのに。」威世が助けてほしいくらいなのに。どうして人は私たちに祈る。

「祈りは力。祈りは心。祈りはー生きること。」渡與も、何度も問うたこと。

「常世は眠った。私も眠りたい。」威世は渡與にもたれかかる。


「人はきっと祈ることで自らを振り返る。それが、何万、何億のうちの一人であっても。たった一人であったとしても。自らの行いを振り返る。そして、歩き出す。それが常世の糧となる。」渡與は言う。


祈りは誓いだ。

自らを裏切らないための足枷。

人は愚かだ。自らを足枷にはめてしまわなければ、生きることすら難しい、脆弱な生き物。


「今は、見守ろう。人が人を壊すのは、人が人で有り続けるための証拠のようなものだ。人は人を殺すことで人であることを証明しようとする。それは彼らが人を問い続ける間は変わらないだろうが・・・・」渡與はまぶたを閉じる。


「ここから・・・・我らは見守っていればいい。人が栄えようと滅びようとも、それは人が行った結果によるもので、それすらも必然なのでしょうから。」


「どちらがいい?」威世は渡與の言葉に興味を覚えた。


「渡與、我らは人に少しかまいすぎました。現世は、人だけの世界ではないのだから。次に目覚めた時、人がいようと、いなかろうと、常世が起きる。ただ、それだけのこと。」


気まぐれで、人を救った。それは、常世のために自分が選んだ道だったが、本当にそれだけだったろうか。


「もう少し、見ていたかったけれど。」次に目覚めた時に彼らは居ないのだろう。


そして二人の巫女は静かに静かに消えた。


紅い橋は静かに闇に溶けていった。







う。。。情景が難しいです。もう少しリアリティが欲しい。。久しぶりすぎ。あと少し。常世が陰薄いねぇ。

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