07迷 走
ホテルにつくと、ロビーで私たちを迎えてくれたのが、承さんの友人の佐々木功さん。
「佐々木です。瀬野涼子さんですか?」佐々木さんは、真っ赤なツーピース姿の涼子さんに少々戸惑いながら聞いた。
「ええ。で、承はどこにいるのかしら?」
「1287号室です。6階の奥ですね。・・・ええと、そちらは確か、昨日の・・」
「上月彰です。承のいとこに当たります。…こちらは友人の堤京介。承とは面識があります。」上月が言いにくいことを言ってくれたのでよけいな詮索はされずにすんだ。
私は、身内の問題だと思ったので遠慮したのだが、幽霊事件にかかわってくるなら話は、別だ。もちろん、昨日の今日で、あんなに元気だった承さんが急にそんなことになって様子を見たいという気持ちもあったが。
私たちは、そのままエレベータで6階まで上がって、承の部屋へ行った。6階の一番奥まで来ると、佐々木さんはカードキィ で部屋を開けた。
佐々木さんも同室で、仕事が続くとお互いろくに口も利けなくなるほど疲れてとりあえず安眠出来る場所に転がるのだそうだ。だから、気づくのが遅れてしまって申し訳ない、と言っていた。さほど広くない部屋ー確かに安眠用だけのベットが二つあるくらいで、サイドボード以外とくに余分なものは置いていなかった。
その窓際のベッドに見知った顔を見つける。
「承さん・・・」彼は、眠っているようにみえた。けれど、近づくにつれて、それがなにか不自然な印象を与えた。
「出たわね。」涼子さんがきっぱりと言い放つ。
「で、出たんですか?」聞きたくないけれど聞いてしまったものはしょうがない。
上月は窓のほうをじっと睨んだままだ。
「やっぱり、京ちゃんの会った子と同じかしら・・・?それにしたって、何で京ちゃんを獲物に選んだのかしら?・・・わっかんないわねぇ。」涼子さんは腕を組んでしばらく承さんを見ていると突然、回れ右をして、
「行くわよ。」ドアに向かう。佐々木さんがあわてて、止めようとしたが後ろから来た上月に横へ押しのけられ体制を崩しもう一つのベッドにつまずく。
「あのっ・・・ちょっとまってくださ・・」呆気にとられて見ていると、上月が振り返って、
「行くぞ、堤。」と私についてくるように促す。その一言で、何かつかんだのだとは思ったが、承さんをこのままにしていくことは出来ない。そんな思いが顔に出たのか上月は少し顔をしかめて、佐々木さんのほうに向き、
「承の体のことはおまかせします。僕らは彼が仮死状態に陥ったその原因を探しに行きます。」と、言う。
私はそれでも承さんを残していくのは不安だったが、この二人の言動については何も言うまい。
彼らは結果に対して最上な方法を選ぶのだから。むしろここにいて何もできずに待つことよりも何か承さんの為に出来ることがあるなら、きっとそっちの方がいい。
「それじゃあ、承さんをお願いします。」私は佐々木さんに軽く会釈してから、上月の後を追う。