表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
栄翼の瞳  作者: 水城四亜
57/79

57花 街

苦しい。

水が欲しい。

喉がかわく。

腹も減ってる。

だけど、もう、胃の痛さも感じない。

神経が麻痺してる感じだ。





「おい、お前、どうしたんだよ?」誰かが声をかける。

「み…みず…」ひゅーひゅー息をはくばかりのこの声は、届いただろうか。

「おい、こいつ…」複数の足音が聞こえる。

「おい、ちょっと遊んでいこうぜ。」

誰かが、俺の身体を押さえる。もうひとりが俺の着物をはいだ。


(……ちょっとまて。)

なんだこの状況は。

「お…おと…」

(俺は男なんだけど!)


「んなこたー見りゃわかってるって。」

(……………マジ?)

「なあに、水ならくれてやるさ。たっぷりと、な。」

(………………………)

いくらなんでも不味いだろう。

俺ってば何でこう毎回毎回、最低な目にあうわけ!?

力の入らない身体を無理矢理開かれる。

冷たい手が身体を這う。

(今そんなことしたら確実にあの世に行ける…)

身体がもうダメだって言ってる。

どうにか窓から落ちてみたはいいが、ここまで這ってこれたのが奇跡なくらいだ。

まだ頭は朦朧とするし、暗闇でゴミみたいに路地に転がるし。

おまけに野郎に襲われるし?



(ああ、一体俺が何をしたというんですか。)



途方も無く三途の川を夢見た瞬間、風が起こった。


「ったく、最近の男はこれだからイケない。」うら若い女の声がする。

気付くとあの男たちの気配も、身体を這っていた手もどこかへ消えてしまった。

そして、今度は俺が首ねっこを掴まれて、ぶら下がっている。そう、宙に。


「……あんた、礼も言えないの?」

「み…みず………」


真正面から見た女の顔は逆光で見えなかったけれど、ふっと笑ったようだった。


「売り物?ならあたしが買うわ。いくらよ?」

いや、お姉さん俺が欲しいのは水であって。さらに言うと売り物ではないのだが。

「ま、いいわ、土産にしよう。」

(…………だから、ちょっと待て…)

俺はそのまま、その女にかかえられ、何度目かの意識を失ったのだった。





「わかったが…厄介だ。」唆字が頭を掻く。

元の雪桜の間に戻ると、唆字が仲間からの報告を聞く。

「その、お前の探しているやつは、どうやら、売り物と間違えられたらしいんだが…」唆字は言葉を選んで言う。先程から目の前の青年は自身も疲労が激しいというのに、一向にその怒りをしずめない。

「売り物?」

「ここの着物を貸していたから、間違えられたんだろう。」翡翠が付け足す。

「まあそれで、向の店から見てたやつが言うには、襲われそうになった所に女が入ってな、そいつを連れ去ったらしい。」

「……女?」

「……報告では、「風」を操ったらしい…」

「何だ、唆字。お前の同胞か。」

「違う。」

「心当たりがあるのですか。」トヨが聞く。

「まあ、心配はいらんだろう。こんな夜更けに遊楽をどうどうと歩く女はそう多く無い。」

「どこに?」上月の質問に唆字は溜息をつくと、立ち上がって、

「大府に。つうわけで、今日のところは戻るぞ。坊主。」





弦宮殿につくと、唆字は今日のところは琵琶殿へ帰るよう促した。

「一体誰が?」上月は先ほどより少し表情をやわらげ聞く。

「報告によっちゃ、その女は赤髪だという。そうなると、1人しかいねぇ。兵部の左衛大尉、おまけに博士。明王院様のご寵愛を一身に受けた、君の親族____つまりはあの三輪殿と同じ立場の人物だ。」

「厄介なのか?」

「………まあなぁ……。悪いが明日にしてくれないか。」唆字は何度目かになった溜息をつきながら、ひらひらと手を振った。

上月はとりあえず琵琶殿に引き返し、すでに先に休んでいたアキジとフジエの横で床に入った。日向に事情を説明しようと思ったが、志気にひどく怒られたのでそのままになってしまった。

「……まったく、どうしたらそう次から次へ巻き込まれられるんだ……?」今は隣にいない友人にむかって呟き、そっとまぶたを閉じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ