04遭 遇2
ようやく動きが・・・。
その夜、いやにはっきりと目が覚めてしまった。
私は二、三度寝返りをうったが、冷水でもかけたかのように頭がはっきりと冴えてくるのがわかり、諦めた。
こうなると、なかなか寝付けないのは判ってるので、何か飲もうとキッチンへ向かう。冷蔵庫にあったポカリの缶を取り出し、 プルタブを起こす。
(あーあ。明日も遺跡に行くっていうのにまた体の調子狂うよな。だいたい、花の日曜を何が悲しくて、野郎と二人で古代ロマン?畜生、なんか世の中間違ってる。)
ぼーっと、ポカリを握りしめて、思わず上月の寝ている私の隣にあたる部屋を見てしまう。ちょうど、小腹がすいたので、酒のつまみに買ってきたサラミなんかを食べてしまおうと、再び冷蔵庫に向かった瞬間。
(ーーーーーーーいる。)背筋に走った悪寒も無くならないうちに、気づいてしまったことがある。ちょうど、リビングのほう、つまり、私の後ろ3メートルほどの所に、何かがいるのだ。
(ーーーーなんか、いる。)このまま気のせいですませたかったが、缶を持つ腕の震えが、確信をさせた。振り向きたいような、 でも振り向いたらもう、逃げられなくなりそうな、そんな空気があたりを占めていた。けれど、振り向かなければもっと悪い事態に なりそうな気がして、私はゆっくりと振り向いた。
「・・・っ。」 女だ。 それも、多分まだ若い。 はっきり言って、そういう風に見えるわけではないのだけど、感覚がそう告げていた。 もの静かにこちらを見ている。 目があったわけでもないし、だいたい、どこに目があるのかもわからない。 ただ、じっとこちらをうかがっている。
(どうすれば・・?)私は、声さえ出すことも出来ず、そこで立ち固まった。 3メートル程の距離があったのは、幸いだった。これで、背後にいられたら、間違いなく正気ではいられないだろう。 どのくらいたっただろうか。その女と対峙して、しばらくした時、突然、女がこちらへ動き出した。 私はその動きが引き金だったように、キッチンの棚を開け、塩を取り出した。けれど、それまでだった。 ひやり、としたものが首筋に触れた。 女は私の右隣にいたのだ。 顔が、近づいてくるーーーーーー
「っう、うあああああああっ。」
「・・・・・・?」何も、起こらない? 気がつくと、さっきよりあたりが明るかった。肩に手を置かれ、振り向くと、上月がいた。
「・・・大丈夫か?」手をかして、立たせてくれる。
「・・・・・・ああ。」私は、まだこの人工の光に違和感を感じていたけれど、もう毛穴がふつふつとするような感覚は無い。
「・・そうだ、ポカリを。」そこで、自分が持っていたはずの缶が無いことに気づく。
「左斜め下。」見ると、まだ、一口も口をつけていなかったポカリは無惨にも缶がへこみ、床に池をつくっていた。
「ああああ。もったいない。」直そうとする私を遮って、上月がリビングへ押し出す。
「先に、話してくれないか。」私は肩をさすりながら頷いた。