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栄翼の瞳  作者: 水城四亜
35/79

35暗 流

ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、



ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、ど、





(何の音だ………?)体の中から誰かにたたかれたら、こんな音も出るだろうか。
それとも、まだ夢うつつの世界をさまよっているのか、私は…。



はじめに見えたのはぼんやりとした光。灰色の、岩肌。
あまり爽快とは言えない気分で、目覚めた。


「…………。」どこだろう、ここは。ひんやりとした洞くつのようだった。しかし、地面は土ではなく、磨かれた石だ。そして、その上の藁の上に私はいた。
まわりを見渡しても、ここには宙に下げられた明かりが一つしかないので、目が慣れないうちはそれほど遠くまで見ることはできない。
かけられた布をたたみ、服についた藁をはらう。立ち上がって、まわりを見渡したが、ここには何もない。





「目覚めたか。」ふいに、肩ごしに声をかけられて驚き、振り向くと、私をここへつれてきただろう少女がいた。少女はまだ16、7程度のいや、それよりもっと若いかもしれない、そんな年ごろのようだ。
黒い瞳が私を見つめていた。


「………ここは…………?」私は寝起きでしゃがれた声で聞いた。


「おまえたちが「地」と呼んでいるものがいる。来い。」そういわれ、わたしは素直に少女について行く。また、剣などつきつけられてはたまらないからだ。


「………おまえ、蓬莱の者ではないな。」少女を見失わないよう慎重について行く私に少女が言う。
「………………きみは……。」


「……しかし、石を知っている。」
それきり、少女は黙ったままだった。


綺麗な子だ。いや、薄汚れて化粧などしていないから、その表現をするのもどうかとは思うが。
しなやかにのびた手足は、以外なほどしっかりしていて、背丈もそれほど低く無い。むしろ、こういう高校生はいるだろう。私は歴史で習ったものとのギャップに苦笑しながら、ふと、上月のことを思った。



あの一瞬。彼は見ただろう、俺を。


見たわけでもないのに、その確信があった。大変なことになっているのは自分の方なのに、何故だか残してきた彼の方が気にかかる。
そんな事を思っていたら、明るい場所に出た。



「っ……。」視線だ。


そこには、まるで雪男のような男たちがひしめきあって、座っていた。おそらくこの村ともいえる集団の集会所のようだった。
くいいるように見る視線をあえて感じない様に、私はひとりの男を見た。


「……座れ。」少女はそう言うと、自らもその横に座った。



(……………すっげーー怖いんだけど…。)私は座り、またひとりの男を見た。
その男は、雪男たちの中でも一段と大きく、また強く見えた。荒々しい顔に険しいしわをよせて、こちらを見ている。何故か、目をそらしてはいけない気がして、私も見返す。
その大男は体のわりには綺麗な目をしている。節くれだった指が顎をひとなですると、


「名をなのれ。」地の底から震えるような声で言った。


「……堤、京介。」私は、できるだけ大きな声で返した。だが、きっと蚊の鳴くような声だったに違いない。


「伏たちの境界線で何をしていた?」また、その男が聞く。


「……何っていわれても…。」どう説明すればいいんだろう?私は困ったように少女を見てから、また男を見て、


「俺…わたしのモノではないが、わたしが必要なものを探していた。」言葉を選んで男に答える。
「……お前のものでないなら、誰のものだ?それは何だ?」男は静かにきく。


「……本当のところは知らない。ただ、葉月のトヨのものだと言っていた。わたしはわたしのためにそれが要る。」


「………それは、何だ?」男はまたきく。
私は諦めて、一度回りを見渡してから、


「………『四尺碧玉石』、そう呼んでいるらしい。石の首飾りだ。」
まるで全員の神経がわたしに向かってきたようだった。








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