32乱 雲
(!)気配を感じた時にはすでに振り返っていた。
普段の反射神経以上のそれを使ったが、相手の方が早かった。
「・・・・お前、石を知っている・・・?」そう言って私に剣を突きつけたのは、まだ幼い少女だった。 動物のようなしなやかさと強さを秘めた彼女は、『もののけ姫』の表現がぴったりとあった感じで・・・
「うわあ、すげー。実在してるよ・・・ってあのぅ、これ下げてくれないかな・・・丸腰なんだし、多分、君とやりあっても俺が負けること分かりきってるよ絶対。」剣を指さしながら、少女に言う。
「黙れ!・・・・確かに、そうかもしれないが、お前、怖くはないのか?」
「いや、あの、怖いことは怖いんだけど何が怖いのかよくわからなくなっちゃってて・・・」 たぶん、動揺しているのだろう。
「不気味な奴だ、だが、あいつらとは違うな・・・」少女は一人納得したようで、少しだけ剣を引く。 そこで、上月が俺を呼ぶ声がした。 (!まずいか!?)
「・・・あああの、俺殺しても何にもならないと思・・・っ!!」少女がすばやく動く。 剣の柄が目の前にある、と気づいた時には遅すぎた。まともに鳩尾にはいった。はじめての経験だったが、想像以上の衝撃と嘔吐感だ。
「・・・・っ、君・・・」地面が近づいてくるのを止めることは出来なかった。
上月彰が胸騒ぎを感じて丘に上がって来た時は、すでに遅かった。米粒ほどになった人影に、自分の友人を確認する。
「堤っ!!。」少女らしいもう一人に軽々と背負われて、深い森へ入って行くところだった。 追いかけようとした彼を止めたのは、オミヤだった。
「離せ!」
「いけない!あれは地の者・・!彼らのあとを追うのは土地勘のないお前では無理だ!もちろん、私にも不可能だ。いったん引いて、伏の者に追わせた方が早い。」
「伏?」
「地に唯一対抗できるのは伏だけだ。」
「・・・・」もう堤の姿は確認できなくなっている。
「わかった、では今度こそ話してもらおう。何故、トヨが石を失ったのか。あんたの口から・・・!」 上月はありったけの焦燥感をぶつけるように言った。
急展開でございます。