28始 動2
それから、フジエたちが迎えにきた時には何とか自己流に衣装を着ていた。
最初は衣装のみで、装飾品はつけていなかったのだがーよくわからないものが多かったためーフジエ達がそのあと勝手につけた。衣装も整えてくれたので、ずいぶんマシにはなったはずだ。
「まあ!流石ですわ。都の方はちがいますのね、二人とも良くお似合いですわ。」フジエが感極まったように手を組み合わせて言う。
「・・・どこらへんが・・・?」聞こえるか聞こえないかのヴォリュームで私は呟いた。確かに、なんとか着てはみたが。これでは大道芸人か、RPGに出てくる妖しげな商人のようなものだ。それはそうと、私は横の上月を見た。
(何で、似合っちゃうかなぁ・・・)そうなのだ。装飾品もさることながら、その衣装自体をもうずっと前から着こなしているように似合っていた。しかも、どこかの王族なんて言っても通ってしまうくらい、ハマっていた。例えるなら、就職活動を始めた大学生がどことなくスーツに着られているあのぎくしゃく感と、勤続何年のサラリーマンがしゃれたスーツを着ているあの一体感の差だ。
「では、ご案内いたしますわね。」そう言ってフジエが歩き出した。私たちはその後に続くように歩き出した。
「あのー、アキジさん?どうしてぼ・・私たちの服はオミヤさんが着ていたものとは違うのですか?」私は気になって聞いてみた。嫌な予感はしたのだが。回廊はほのかに外の光が入るような設計になっていて、その光がアキジの髪飾りを照らし彼女が動くたびにそれが反射して光る。
「それは、当然ですわ。都からこられた方にそんな粗末な恰好はさせられませんもの。それに、オミヤ様は一応姫様付きの方ですから私たちよりは位が上ですけれど、生まれはそれほど高くありませんの。ですから、もっと高い位の服をお召しになってもよろしいのに、ご自分はこれで十分だからなどどおっしゃられるの。お世話する方としては、味気ないものですわ。」アキジは淡々と言う。
「それに、上月様方は今日の宴の席で都の珍しい話しをして下さるとか・・・私たちはそちらが楽しみでなりません。」フジエが後を続ける。
「・・・・あ、あのう。それってやっぱオミヤさんがそう言ったの・・・?」私は目の前が暗くなるような錯覚に襲われながら聞く。
「ええ。ただ、私たちはその宴にはのばれませんので他の方々から聞くことになるでしょうけど・・・もし、おいやでなければ、この地に滞在する間は私たちがお世話いたしますので、その時にでもお聞かせくださいませ・・・。」そこまで話して話しすぎたと思ったのか、フジエは改まって、
「申し訳ございません、出すぎたことを申しました。」と言って先を急ぐ。
「・・・かみつきぃ・・・」私は溜息とともに吐き出した。
「・・・なんとか、なるといいが・・・」それに答える上月の様子もうんざりしているようだった。