24親 愛
「続けて。」
「今の世のこの蓬莱での大王は、ここからさらに西に下った大和の山に・・・御名は語れませぬが、その血族に連なります姫様は大王より三つの宝をもたらされたのです。もちろん、姫様だけではなく、他の血族の方々も全て、同じものを賜り、そのうちの一つが『四尺碧玉石』と、我等は呼びまする。それは我等が中つ国へ渡れる唯一の鍵、そしてなにより姫様の力の象徴でございました。」
「無くしたの?」
「・・・いいえ。いいえ・・・!わたくしがあれを手放すはずがございません!わたくしが無くしたのではないのです・・・!」突然、トヨは気がふれたように床に突っ伏して泣き出した。
オミヤがすばやく近寄り、それを支える。
「・・・姫様・・・!」
「あれは・・・あれは・・・っ。」トヨは子供のように泣きじゃくる。みかねたオミヤが上月と私を見て、
「申し訳ありませぬが、今度の件明日以降改めてはもらえまいか。・・・姫がこの様子では・・・。」
「・・・わかった。しかし、その約束違えないとは思えんが。」上月が言う。
「お前たちが何者かわからぬ・・が、しかし私は信じることにした。故に約定を破ることはありえない。・・・姫のために。」オミヤはまっすぐに上月を見る。目で射抜くような瞳に上月は少し苦笑して、
「俺達も同じさ。利害が一致していればまぁ、大丈夫だろう。」後半は呟くように言う。
オミヤはトヨを抱えて、御簾をかき上げ首だけこちらに向ける。
「床は用意させる。・・・心配するな。ここはこの神殿内で最も奥まった場所ゆえ、見つかることもあるまい。お前たちは、姫の客人ということにしておく。ゆっくり休め。」そう言って、出ていってしまう。私は味方が去ってしまったような心細い感覚に襲われながら、入り口を見ていた。
「堤・・・」
「何?」
「TPOわきまえず、綺麗だなんだと言うのはやめろ。」上月はとたんに不機嫌そうになる。どうやら先ほどのことを根にもっていたらしい。
「上月は綺麗だから綺麗だっつったんだよ。いいじゃん、オミヤさんだって認めてたし。」
「お前・・・・」上月はそこで深々と溜息をついて、それから私の目をのぞき込んで、
「馬鹿?」思いっきり馬鹿にしてくれた。
「俺達はそんなことやってる場合じゃないだろう?お前のおかげでもう少し聞けそうだったのに・・・・」
「・・・・ごめん。」私は床にごろんところがりながら上月を見る。
「ほんとはさ、俺も聞きたいことあったんだけど・・・・ちょっと・・・疲れてて、さ。・・・言ってなかったかもしんないけど、貧血気味だったもんで・・・なんか、頭回っちゃってさー。・・・・ごめん。悪かった。やっぱ、動揺してるよ、俺。もし、このままだったらどうしよう、栄翼・・・見つからなかったら、てぇ、ちょっと思ったり・・・した。」言っているうちにも睡魔がおそってくる。ああ、これが夢なら、起きたら覚めていたら・・・どんなにいいだろう。
「堤・・・。」上月の声が近くになる。
「馬鹿だな、さっき言ってただろ?俺達以外にも中つ国・・・つまり俺達の時代から来た人間がいるんだってこと。それに、栄翼の瞳は一つだけじゃなかった。なら、他にも方法はある・・・現状はだいぶマシになったはずさ。」
「そ・・か。そうだよな。」
「目眩とか、するのか?」酷く、優しい。
「さっき、立った時に少し。」見上げると、上月がのぞき込んでいた。
BLな展開になってきました。