22事 情
「オミヤですね。・・・おはいりなさい。」静かに言う。すると、すっと風が入ったかと思うと、御簾の向こうに人影があらわれた。
「こちらへ。・・・・静かに。」トヨは静かに言う。
声をひそめてはいないが、これでは我々が何かの陰謀をたくらんでるようではないか。
「・・・しかし、」オミヤと呼ばれたのは声からまだ若い青年のようだ。何か躊躇するような様子で、御簾の向こう側にいる。
「構いません。わたくしが許します。・・・・時がありません。早く。」トヨは少し苛ついたように早口で言った。すると、オミヤと呼ばれた青年がこちらへ入って来た。年からして、高校生くらいだと思った。なかなか綺麗な顔立ちをしている。
服装は、弥生時代の頭の部分をくり貫いた布を巻く形に似ていたが、藍色の長袖長ズボンだ。その上に布を羽織っている感じで、ベストのようなものだろうか。短い太刀を携帯していて、首には石の飾りをしている。その服なんかも材質がそれほど悪くなく、綺麗に縫ってあるのには驚いた。
彼は、トヨの斜め横まで行き、正座する。
靴下なんかはもちろんはいて無くて裸足だが、綺麗な足をしていた。よく働いている足だった。私がじろじろ見てると彼は不審に思ったらしく、
「・・・何だ?」と聞く。また、その声も心地よいもんだから私はつい、
「いやぁ、綺麗だなぁと思って。」
「・・・・?」
「・・・堤。」上月が溜息をついたのがわかる。
「お兄さん苦労してるだろ、若いのにねー。まあ、それで綺麗だなぁって思ったもんで・・・」 私が機嫌良く言うと彼はますます不可解だという顔をしてこちらを見る。
「まあ、堤様、あなたもそう思われますの?・・・わたくしも、オミヤはとても綺麗だと思いますのよ。なのに、オミヤは・・・」トヨが、両手を組んでとても嬉しそうに言う。
「姫・・・キレイというのは・・・?」どうやらオミヤには綺麗という言葉はわからなかったようだ。
「美しい、ということです。・・・わかってくださるかたがいましたわ。」そう言って私を見てにっこりと笑う。上品な笑い方は大人びていたが、とても可愛らしかった。
「・・・男が、美しいなどと・・・私はそんなものではありません。」オミヤは、ぶ然として答える。もしかしたら照れているのかもしれない。
「それを言うならばむしろ・・・」そう言って、オミヤは上月の方を見る。
「上月は、綺麗だけどね。オミヤさんの方がなんて言うか、清純的?」
「・・・堤。」上月の声のトーンが下がっている。そろそろやめた方がいいかもしれない。しかし、そんな思惑とは別に今度はトヨまでが、
「清らかであるということですね?・・・それはわかります。ああ、決して上月様が清らかでないとか、そういうんではないんですの・・・」あまり、フォローになっていないような気がした。
「つまり、上月の方がダークな感じなのかもね。根が暗いから。そこが魅力って騒いでた女子も沢山いたけど・・・」私は横から感じるあまりにも冷ややかな目線に極力あわせないようにして、言う。
「・・・・そろそろ、本題に入りたいんだが。ここが蓬莱と呼ばれていることはわかった。後から来たもの、というのはこの地に他の地から移り住む者がいるということか?」いい加減頭にきたのか、それでもまだトヨやオミヤがいる所為で物腰はいくらか柔かいが、上月は不毛な会話に終止符を打った。
ギャグに走りました。。。。でもこれからほとんどギャグ無いので。。。