18接 触
「でも、何か変な感じ。俺等が習った建物ってあんなんだったか?」それは、高床式をはるかに越えた、寝殿造を混ぜたらこんな風になるだろうかという建物だった。
奈良、飛鳥時代ならともかく、弥生から古墳に変わってゆく中で、高度な文明、そう文明だ。
それが、発達していたとは考えずらい。
ネオンのない空は星と月の光だけで、あやしげな雰囲気を演出している。
「いいや。微妙に違う。ーーーーそうだ、堤さっきの『栄翼の瞳』は、どうなった!?」上月が振り返る。
「え、あれ!?おかしいな、なくなっちゃってるよ。」おそらく、私たちを導いた(というより強制的に連れてこられた)あの黒曜石の首飾りはどこにも見あたらなかった。
結構大きなものなので、落ちていたなら気がつくはずだ。
「ちょっと待って・・・それって、パターンだけども。それがないと元んところに戻れなかったりして・・・・?」私は上目遣いで、上月を見る。
「・・・否定はしないが。ただ、俺たちをここにすっとばしてきたものはーーー何処にいったんだ?」
「あーのーさ、もしかして、もしかすると、ここって俺たちの住んでるとことはものすごーくかけ離れた世界だったりしない?・・・・でもって、こういうときって、異邦人が歓迎されるパターンは少ないよね?」先ほどから妙にちくちくする何かを感じながら上月に一歩近づく。
「・・・そのようだな。」上月は闇を見つめていた。
私も彼の隣へ移動して構える。
「げ。」ときどき自分の想像力豊かすぎるのを恨みたくなる。
いつのまにか私たちは奇妙な格好をした(まあ、彼らから見れば私たちの方が異常なんだろうけども。)おそらく原住民と思われる人々に囲まれていた。数は7人。その一人一人が兵士らしく刀を携帯していた。多分、青銅剣だろう。そして、そのうちの4人は槍を、3人は松明を持っていた。
どうやら、ここは私が歴史で学んだ弥生時代とは少しーー違うようだ。
「日本語・・・通じるかな。」ぼぞっと呟いた瞬間、私の右斜め前の男が驚いたのか手にしていた槍を振りかざした。私はとっさに避けようとしたため左足が滑り地面に膝をついてしまう。
私に向けられた槍からかばうようにして上月が私のまえに入ろうとしたが、それでは後頭部にあたってしまう・・!気がつけば上月を両手で押し返し、空を切った槍を男が反転させた瞬間に頭に衝撃が来た!
「!!ツ・・・ッ。」ものすごい衝撃で、ーーこりゃ冷蔵庫にぶつけたとき以来のヒットだなんて思いながらーーー視界が暗くなるのがわかった。
上月の驚いたような、悲しんでいるような、奇妙な顔を見たのが最後だった。
私は見事にもんどおりうって倒れたのである。