13覚 醒
いよいよ行きます。
「大馬鹿野郎っ。どうしてお前はいつもいつもっ・・・・」その間にもあたりは白く輝き始めている。
「うわっ、だーかーら、ごめんってば。でも俺の所為じゃないもんっ。ーーーそんなこと言ってる場合じゃないだろっどーすんだよ、どーすんだよこれぇっ!?」熱を帯始めた首飾りは手でつかむことなんか出来ない。だいたい、私も上月も手は大事な商売道具なのだ。
「京ちゃん、彰!?」後から入ってきた涼子さんが異常な状態に気づいて声をあげる。
「こんなことだったら遺書でも書いて置くんだったーっ。」
「ちょっと京ちゃん馬鹿なこと言わないで頂戴っ。彰!なんとかならないの!?ーーーーーあっ。」
涼子さんが驚きの声を上げる。
「・・・・・何?」私は、その顔色からとてつもなくいやな予感がして聞く。
「京ちゃん、彰、手元を見てくれる?」涼子さんは流石に動揺してそれだけ言うのがやっとのようだった。
「ーーーーは?」私は言われた通り自分の手をーーーーーーーー。
「な、何だこれはーーーーっ。」手は確かに握っているはずなのだ。胸の前で。なのにもかかわらず、それが見えないのは、どういうことだろう。
「おそらく、どこかの空間に転移しているんじゃないのか?感覚はあるんだとすれば、どこか別の次元にとけ込んでるんだろう。」
「上月、冷静に異常なこと言うんじゃないよっ。しかもこれ、だんだん上にむかってるじゃないかっ。」あるはずの足も腕も視界に映らない。なんて、気持ち悪いんだろう。床に立っている影さえ、今は光で打ち消されている。
「・・・・・無理だな。」ふぅ、と溜息をついて何かを悟ったかの如く、上月は遠くを眺める。
「涼子さぁーーーんっ。」我ながら情けないとは思うのだが、気がついたらこんな状態なんて、あんまりだと思う。
「ごめん京ちゃんっ・・・そっちに近づけないのよ。何か、金縛りにでも・・あってる・・みたいで。」苦しげにこちらに向かおうとする涼子さんの姿が見える。
「・・・・こ、こんなことなら手に保険かけとくんだったぁーーーーーーーっ。」
視界が白に染まった。