11鼓 動
「おい!?・・・どうしーーー」
「彰!それよ!」私の異変に気づいたのか、涼子さんが視線を追ってあるものに気づく。
瑠璃色の石。ラピスラズリでも普段通信販売などで載っている安物の群青を塗りたくったようなのではなくて、時価何億円のそれこそ秘宝の王冠にでもつけられてそうなどでかい宝石が、あったりした。
しかも、ものすごい威圧感でもってまるで、冷気でもその周りから出ているようだ。私は身震いした。
何故、今頃になってそれがこんな足下に落ちているのかわからない。だいたい、普通祭壇とかあったりしてそのなかに大事に納められてるもんだろう!?普通ーはっ。かなり偏ったヴィジョンを持っているとは思うが、でもだからって、ラムネのガラス玉じゃああるまいし、こんなに簡単にころがってていいモンなのか!?
数秒間の動揺の後、気のせいかその石が意志を持っている動物のような気になる。
(ちょぉっとー、なにもたもたしてんのよぉさっさと元の所にもどしなさいよねぇー。)
・・・・・なんて命令されてる気が・・・違う、違うだろう俺!何でこの石にこき使われなきゃならんのだ。ううしかし、手が勝手に・・・・。すうっと石へ向かって動き始める。
「堤!」上月の声にはっとなる。その瞬間ひらめいたもの。それは確信。
「これだ!これなんだよっ。」私は次の瞬間その石を手にし信じられない勢いで駆け出した。
「!おいっ。堤っ!・・・・あんの馬鹿!」
「見事に、さらわれたわねぇ。」涼子は溜息をつきながら髪に手を入れる。普段運動しない彼女の若き友人は脱兎のごとくプレハブへ駆けてゆく。
「金と女に弱くてね。」ぼやいた彰も堤の後を追うことは忘れなかった。
彼はーーー彼の親愛なる馬鹿で奇妙な友人は、常にイレギュラーなのだ。折角立てた計画も見事に脱線してくれる。
それにつきあって元通りに修復する自分ははっきり言って酷い役回りだ。
胸騒ぎのするのを無理矢理封じ込めてプレハブのドアを乱暴に開けた。