表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
栄翼の瞳  作者: 水城四亜
10/79

10波 間2

ようやく・・・・

ひゅおおう。

ひゅおおう。


まるで何かの鳴き声みたいに風が渦巻く。

じめじめしてはいるが、沖縄の防空壕に入った時よりはマシだった。土はわずかにしめってはいるものの、地面もある程度の硬度は持っているし、なにより普通の洞穴なのだ。

私は、涼子さんの懐中電灯に照らされた何もない壁面を見ながら、ほっとして自分が照らしている足下に視線を動かした。

「何もないようですね。てっきり、よくある風葬用に使われたものだと思っていたんですが・・・」上月はいぶかしげに涼子さんに言う。

「風葬・・・?」私は嫌な予感がしながらも聞かずにはいられなかった。

「穴の・・・ちょうどお前が立ってるあたりに、死体を置いてそのまま野ざらしに埋葬したってやつだな。」上月はそんなことも知らないのかという顔で言う。

「はじめっから!そのつもりだったんだな!」私は今にも逃げだしたかった。冗談ではない。もしそうなら頭がおかしくなりそうだ。

「・・・そのようね。」涼子さんは半分残念がっているような声で答え、こちらへ反転した。

「!わっ。」

「へぇっ!?」何かに躓いたのか、涼子さんがぶつかってきて、私はそのまま後ろの上月にむかって倒れ込んだ。

「!・・・・重いっ。」幸いにして上月がクッションになって踏みとどまったので地面とご対面とまではいかなかったが、

「・・やめてくださいよ涼子さん、だから、ヒールの高さは控えめにっていつも旦那にも言われてるでしょう?」上月がぼやく。私といえば体が硬直したまま心臓がばくばくいってる。

「あら、それじゃ茜也さんに抱き留めてもらえないでしょう?・・・どうでもいいけど京ちゃん、固まってるわよ。彰。」

「・・・ったく、しっかりしろよ。おい。」返事が出来なかった。

「おいって、立てなくなったわけじゃないだろ?」 上月が呼んでいる。・・・それはわかるのだ。けれども。私の目はある一点から逸らすことは出来なかった。硬直した姿勢のまま、上月に無理矢理立たされてからも、魅入られたようにそれを見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ