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栄翼の瞳  作者: 水城四亜
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01 邂 逅

※昔書いたものが出てきました。今とかなり文体も違うのですがそこはそこ、暇な学生が書いたものと思ってくれれば。個人的に、腐女子くさい文章だなぁと今は思います。ほぼ9割まで書いてあるので、更新は早いと思います。

 私の名は堤京介。現在、某短期芸術大学生である。


ただ今の 時刻一時四十五分。名鉄線T駅からバスに乗り、そこから歩く。現在目的地を目指し地図と格闘しているところである。 ちょうど、近くに大手スーパーの看板が見える。ということは、この目の前の信号を右に曲がればいけるはずだ。私は地図を閉じ、そろそろタクシーでも拾おうかなどと本気で考えながら先のまだずいぶんあるだろう道のりを急いだ。


そもそも、何故土曜の休みに昼飯もロクに食べないでこんな所にいるかというと、全ての原因は上月彰にある。

  T大で社会科人類学を教えている熱烈なる考古学おたく(失礼)のいとこに誘われて、私の悪友である上月はK遺跡まで来ている。しかし、そのいとこというのが事前に用意しておいた資料をすっかり忘れてしまい、とっさに上月が私の携帯に電話し、現在に至るわけである。


だいたい、私も人が良すぎる。上月本人ならともかく、面識のないいとこの為にT大研究室まで 資料を取りに行くなんて。これが冬なら即お断りなんだが。
もうすぐ梅雨に入るせいか、湿気を含んだ空気が肌にじっとりとした感覚を与える。いい、天気だった。この辺は木々も私の住んでる所よりは多く、夏へ秒読みを開始した日差しさえ、心地よく感じた。しかし。
しかしだ、本来決して体育系ではない私が、一時間近くこういう所を歩くのは、自殺行為である。自分の見知らない土地なら、なおさらのことであるから、やはり私はそこからタクシーを拾うことにした。




  T市というのは、私の住んでいるN市から南西に下っていった所に位置するのだが、ここまで車で来ようとすると、とてつもない時間と、資金がかかってしまうため、やむおえず一時間弱かけて路線を使って来たのである。
はじめは、自分の見知らぬ土地を目の当たりにして、まるでこれから冒険に行くような感覚でいたのだが、それも四十分ほどたてば飽き、持参したエラリー・クイーンの短編集を読破してしまった。
陶器の町というだけあって、資料館や、博物館それに某大手陶器会社などの工場も多い。そういえば、同じ大学の坂口郁江嬢もT市の人だった。どうせなら、案内してもらえば良かった。汗を含んだ白いポロシャツが乾き始めた頃、私はようやく目的地のK遺跡に着いたのだった。





    坂道だったせいか、やたらと高くついたタクシー代を払ってーーーあとで上月になにか奢らせようなどと考えながらーーープレハブの見える小高い丘の方へ向かった。
今朝、上月から電話があった時遺跡と聞いて私の脳裏に浮かんだのは、弥生時代の新しい遺跡が発見されて、何とかの首飾りが発掘されたとか何とか。
後で二日前の朝刊を引っ張りだして、それが三世紀後半から四世紀前半にかけての小さな社の跡だということがわかった。
小さな、とはいっても出雲大社や伊勢神宮と比べたらの話で、それ自体は今の普通の神社の倍以上あった。何とかの首飾りというのは、おそらく巫女さんかなにかが神事の際使った飾りで、黒曜石でできている土台の真ん中に穴があいていて、そこには多分宝石か何かがはめ込まれていたらしい。
その宝石というのは発掘されていないようだったが、まわりに大小四つの勾玉がついていて、それが不思議な翡翠色をしていて綺麗だった。孔雀石とも違ったそう、変な、という表現がよくあう。変な、見たことのない色をしていた。






    ふと、プレハブからこちらへ向かってくる人影を確認する。手前の、いかにも優等生ですという面構えの(顔だけは。)男が、上月彰。私をここに呼び出した原因であり、その後ろのひょろりと背が高い男がおそらくいとこだろう。


「堤!ー遅かったな。心配したよ。」本当に心配したのかよくわからない顔で言う。


「誰の所為だと思ってるんだ・・・?」私は上目使いで上月を見る。


「お前。どうせ道に迷ったんだろう。折角俺があんっっなに明確な地図を送ってやったっていうのに・・・」


「どこが明確!?ゼ○ラの油性マジック(太)で直線が並んでただけじゃないかっ。」多分、上月が送ってきたFAXの手書き地図のことを言っているんだろうが、あれで迷わなかったらそれこそ凄い。


「あれは、マッ○ーじゃなくてサ○ラ油性なまえペン、だ。お前って、地図持ってても迷うのな。」上月は笑う。おそらく、鞄の中の地図の事を言ってるんだろう。ほっとけ。私が憮然としていると、後ろのいとこが、


「わざわざ有り難う、君が堤君?」髪は琥珀色に近い。目も色素が薄いようで、さっき見た時より以外とがっしりした体つきだ。白衣など着ていなければそれこそ、グラビアのモデルでもつとまりそうな男だった。


「遅くなってすいません。」私は鞄に入れていた書類の入っている封筒を渡す。


「気にしなくていいんだよ。むしろ、すまないと思ってる。この書類は明後日までに間に合えば良かったんだ。それを、彰が勝手に連絡してしまってものだから・・・・」いとこさんは、申し訳なさそうに言う。


「・・・・」今までの距離が私の頭にどっと押し寄せてきた。


「別に承が謝ることないぜ?どうせ、こいつも暇だったに違いないから。」


「何で、わかるわけ?」


「だって、暇だろ。」


「だから、何で。」


「いいじゃないか、どうせ見に来たかったくせに。」確かに、元々こういう遺跡や古墳、神社仏閣を巡ることが好きな私としては、用事ついでに見て来ようとも思ったわけだが。


「『蜃気楼』の餃子とラーメンで手をうとう。」私は近所で一番気に入っている中華料理店のメニューを言う。ここの餃子は高くても金をけちる気にはならない。


「・・・・・仕方ない。乗った。」上月があきらめて同意する。


「ところで、これからどうするつもりだい?」承さんは聞く。(ちなみに名字は上月。バッジにプリントされた文字が入ってる。)


「あ、はい。差し支えなければ、少し見学していきたいのですが。」


「ああそれは構わないけど、昼飯、食べてきた?もしまだなら来てもらったんだから、ごちそうしたいんだけど。」どうする、と言外に聞く。


「・・・じゃあ、いただきます。」少し食べてきたけれど、ここに来るまでに消費してしまったらしく、空腹をおぼえていた。
私達はそこから住宅地のほうにある小さな喫茶店で、 遅めの昼食を取ることにした。


個人的には、友人と共にトリップには萌えません。(笑)異世界トリップ王道が大好きです。

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