二の腕だるんだるん姫、敵国だった皇帝に溺愛される。
──これは私の責務。
夢や希望なんか抱いちゃいけないわ──
初めて敵国の後宮に入ったルアーニアは、凛と姿勢を正した。その瞬間、だるんと二の腕が揺れる。
嫁ぎ先であるザス帝国にルアーニアがやってきたのは、故郷であるシファーヨン王国との同盟強化が目的だった。
実際は、人身御供みたいなものよね。
ルアーニアはハァっと息を吐く。同盟強化といえば聞こえはいいが、同盟を組むことになったのはここ数年前の話。
遠い過去には二国間で戦争もあったし、同盟を結ぶまでには険しい道のりがあったようだ。
だからこそ、シファーヨン王国の第四王女であるルアーニアが、ザス帝国の皇帝ゼンドに嫁ぐことになったのである。この同盟を、磐石のものにするために。
まぁ、お姉さまをここに来させるよりは、よかったわ。
本当はルアーニアの姉の第三王女が来るはずだったのだが、気弱な姉が他国で馴染めるとは思えなかったし、密かに愛し合う相手がいたことを知っていた。だからルアーニアは、第三王女の代わりに自分が行くと申し出たのだ。
しかし、部屋に用意された服を見て、ルアーニアはため息をついた。
だけどこんな服を着させられるってわかっていたら、絶対に身代わりになんてならなかったわよー!!
そこにずらっと並べられていたのは、ノースリーブのワンピースドレスだらけ。確かにどれをとってもデザイン性が高くて素敵なものばかりなのだが。
私は、二の腕がコンプレックスなのに!!
ルアーニアは特段太っているわけでもないのに、なぜか二の腕だけがだるんだるんしている。祖国にいたときには、このような服など絶対に着なかったデザインだ。
しかしこの国は年中暖かく、女性はみんなノースリーブで過ごしているらしい。
腕を隠せる服はないのかとお世話係に聞いてみたが、そっけなく『ない』と言われてしまった。
さいっあく、ほんっと最悪!
しかし裸でいるわけにはいかないので、ルアーニアは仕方なくそのひとつに袖を通す。いや、ノースリーブなので袖はないのだが。
服を着終えると、近くに控えていたお世話係がにっこりと微笑んだ。
「ルアーニア様、ゼンド様がお越しになりますので、ご用意を」
「え、もう?!」
後宮に入る意味を理解はしていたつもりだが、あまりに早くて覚悟が追いつかない。
ルアーニアがここに来たのは同盟強化のためであったし、後宮にはたくさんのきれいな女性がいるのだろう。こんな二の腕だるんだるんな女など、相手にはされないはずだと楽観視していたのもある。
やだ、嘘、どうしよう……っ! 怖い……っ
そう思っている間に、ゼンドが部屋に入ってきてしまった。
この方が……皇帝?
思った以上に若かったが、光り輝くようなオーラが皇帝だと確信させる。
自信に満ち溢れた瞳、浅黒くも輝く肌、讃えられた微笑、流れるような漆黒の長い髪。
祖国では見たことのないタイプだが、不快感はない。
思わず見惚れてしまっていたルアーニアは、慌てて膝をついた。
「皇帝陛下におめもじ叶いましたこと、大変光栄に存じます。わたくし、シファーヨン王国より参りました、ルアーニアと……」
「立て。ここではそんな挨拶など必要ない」
そう言ったかと思うと、ゼンドはルアーニアの二の腕を掴んで立たせてくる。その瞬間、ルアーニアの腕がだるんと揺れた。
「き、きゃ!」
「なんだこの腕は……だるんだるん?!」
「誰がだるんだるんよーーッ!!!!」
パァンと軽快な音が部屋に鳴り響いた。ハッと気づくと、己の手がジンジンとしている。
あ。やっちゃった!!
どうしよう、私は同盟強化でここに連れてこられたのに!!
浅黒い肌に、くっきりとルアーニアの手形が付いていた。
自分がやっておいてなんだが、とても痛そうだ。
「あ……ご、ごめんなさ……」
ルアーニアが全てを言い終える前に、ゼンドは背を向けてなにも言わずに出て行ってしまった。
終わった……私の人生、終わった!!
ああ、どうかシファーヨン王国は無事でありますようにーー!!
──という、初っ端から悪印象を与えてしまったルアーニアであったが、なぜかゼンドからのお咎めはなにもなかったのだった。
でも、さすがにあんなことがあったんだから、夜のお相手に選ばれることはないわよね。
お咎めなしで夜伽の相手も必要ないとなれば、ルアーニアにとってはもうパラダイスである。
自由にしていいという了承を得て、ルアーニアは後宮内を見て周り、暇なので食事の手伝いをしたり子どもの相手をしてあげたり、老人の話し相手になったりしてあげていた。
「っていうか、どうしてこんなに子どもや老人が多いの? ここ、後宮よね」
後宮というと、煌びやかな女性が皇帝の寵愛を競う場所だと思っていた。が、しばらく住んでみて気づいたが、それらしい女性は一人も見かけない。
「ここは後宮といっても、その役目を終えた場所だからな」
急に後ろから声が降ってきて、ルアーニアにぴゃあっと飛びのいた。その瞬間、二の腕がだるんだるんと揺れる。
「ゼ、ゼンド様!」
「敬称はいらん、ゼンドでいい。俺もお前のことはルアーニアと呼ばせてもらう」
「は、はぁ……」
どうやらザス帝国はシファーヨン王国と違い、そこまで上下関係にうるさくはないようだ。
シファーヨンでは、王妃である母親も国王のことは敬称をつけなくてはならない。ずっと幼い頃からその姿を見て育ったルアーニアは、それが当たり前だと思っていた。
「あの、ゼンド……役目を終えたって……?」
「確かに後宮として機能していた時代もあったが、俺の祖父の代で変わった。その頃には大きな戦争や災害があってな。夫を失った女たちを保護し、彼女等が子どもを育てたり教育を受ける、そんな場所になった。今は平和になり、たくさんの者が集い、学び、働き、交流する場所となっている」
「なるほど……」
道理で女臭さがないはずだと、ルアーニアは納得した。
後宮がひとつの町のようで、それでいて家族のようになっているのも理解できる。
「こんなに素敵なところだとは思わなかったわ」
「我が国は帝国ではあるが、祖父の代で帝国主義は終わりを告げた。昔ながらのやり方を続けていては、国はいつか滅びる。時代は変わっていくんだ。それに合わせて柔軟に対処していくことが、皇帝である俺の役目だと思っている」
ゼンドの視線の先は子どもたちを見ていて、優しいながらも決意の瞳がルアーニアの胸を刺した。
だからゼンドは、シファーヨン王国の姫を迎え入れることに決めたんだわ。
皇帝であるゼンドを見て、ルアーニアは理解した。
ザス帝国とシファーヨン王国は同盟国にはなったが、それは綱渡りのような危うい上辺だけの関係であった。
きっとゼンドは子どもたちの未来のために、シファーヨン王国からの嫁を受け入れたのだ。皇帝であるがゆえの、強い責任感から。
ゼンドの揺るぎない決意と、皇帝に君臨する器である男らしさ、同時に優しさも見てとれたルアーニアは、その横顔に見惚れてしまった。
国のことを、民のことを一番に考えられる素敵な人なんだわ。
なのに……私みたいなだるんだるんが来るなんて、がっかりしたわよね……。
ルアーニアもゼンドと同じく、これが己の責務だという思いで婚姻を承諾したとはいえ、ゼンドの人柄を知ってしまうと罪悪感が募る。
やっぱり、お姉様が来るべきだったのかしら……
私がしゃしゃりでていなければ、ゼンドはきれいで優しくて奥ゆかしいお姉様と、心置きなく結婚できたでしょうに。
しくりと胸が痛みを抱き、ルアーニアは唇を噛み締める。ゼンドがこちらに首を向けたのがわかった。こころなしか、二の腕を確認しているように見える。
「ルアーニア、近々俺はお前との婚姻の儀を正式に挙げなければならないが」
「ごめんなさい!」
あまりにいたたまれなくなったルアーニアは、ぶんっと頭を下げた。と同時に、二の腕がだるんだるんする。
「私……」
私なんかで、という言葉を繋げることができず、ルアーニアは頭を下げたまま揺れる自分の二の腕を睨みつける。
こんな腕、こんな嫁、嫌に決まってる……!
ゼンドが嫌な人ならよかったのに。
そうすれば、『あんたなんか私程度で上等でしょ』って思っていられたのに!
「ルアーニア」
なにも言えないルアーニアに、ゼンドが名前を呼んでくれる。
その声はどこか優しくて、ルアーニアはゼンドの顔を見上げた。
「ルアーニアも義務感からここに来たのであろうことはわかっている。すぐにこの国に馴染めというも難しい話だろう。だが、この国に来たからには、お前も俺の守るべき者の対象だ」
「ゼンド……」
一つにまとめられた彼の長い髪が揺れる。まるで、ちゃんと理解してくれと要求するように。
「シファーヨン王国との契約で、ルアーニアと俺との結婚は絶対だ。一ヵ月後には、不本意でも婚姻を結ばなければならない」
「ええ、わかっているわ」
確かにここに来たのは不本意だった。王族の娘の定めで、誰かがここには来なければならなかったから。
適齢期で未婚だったのがルアーニアとすぐ上の姉だけで、姉の代わりにここに来たというだけのこと。できるならば、自国で暮らしていたかった。それは間違いない。
「ルアーニア。この国に来るには、強い勇気が要っただったろう。両国のために嫁ぐ決意をしてくれたこと、感謝している」
「お礼を言われる必要はないわ。シファーヨン王国のためであり、それが私の仕事だもの」
そう伝えると、ゼンドは痛みでも感じたかのように右の顔だけを歪めた。
「……ゼンド?」
「俺はお前を後悔させたくはない。後悔させはしない。必ず、大切にする」
真っ直ぐに射抜かれるように言われて、一陣の風が通りすぎたようにルアーニアの心は洗われる。
いい人過ぎない……?
婚姻は義務でも、優しくする義務なんて……
そこまで考えて、ルアーニアはハッと気づいた。
これはやはり、義務なのだ。
皇帝であるゼンドは、守るべき存在として国民を見ている。その延長線上にルアーニアがいるというだけの話。
それにザス帝国でルアーニアがひどい扱いを受けているとなれば、シファーヨン王国にいる両親だって黙ってはいないだろう。
つまりゼンドは、死ぬまでルアーニアのことを気遣い続けなければいけないのだ。その決意を持って、彼はシファーヨン王国から嫁をとることにしたのだろう。
なんてかわいそうな人なの……。
好きでもない女と、しかもこんなだるんだるん女と結婚しなくてはならないなんて。
ずっと、こんな私を気遣いながら生きていかなければならないなんて……!
「どうした? ルアーニア」
ルアーニアを気にかける声。濡れるまつげに手を添えられて、その指先で優しく拭ってくれる。
「なにも心配しなくていい、大丈夫だ。なにかあれば俺に言え。全部解決してやるよ」
どこか傲岸さも感じられるその物言いに、ルアーニアはふと顔が綻んでしまった。
「ようやく笑ったな」
ゼンドもそう言いながら笑っている。
自信に溢れた男が、嬉しそうに目を細める笑顔というのは反則だ。お互いに初めて笑みを見せ合ったルアーニアの胸は、きゅんっと勝手に鳴いているのだった。
***
ルアーニアはそれからも毎日、後宮を歩いて回った。
お年寄りはシファーヨン王国のことをよく思っていない人もいたし、子どもたちはそもそもシファーヨン王国を知らなかった。
祖国を知ってもらうことで、自分が両国の架け橋になればと、ルアーニアは積極的にこの後宮に住む人々と交流を深めていった。
結婚までの一ヵ月の間そうしていると、ゼンドとも頻繁に会えた。
お互いに示し合わせたわけではないのだが、ルアーニアのいく先々で忙しいはずのゼンドと会った。
長く話せないこともあったが、必ず挨拶はして、なにか不便がないかを聞いてくれる。
「気に入るかどうかわからないが」とアクセサリーのプレゼントまでしてくれ、政務のない日は睡蓮の花を見に連れ出してくれた。
たった一ヵ月なのに、ゼンドとの思い出がどんどん増えていく。そして、ルアーニアはどんどんゼンドに惹かれていく。
そう、恋といって間違いない感情が、最大値にまで到達していた。
だからこそ、優しくされるたびにルアーニアの胸は苦しくなる。なぜなら、こうしてわざわざプレゼントをくれるのも、気にかけてくれるのも、外に連れ出してくれるのも。すべて、ゼンドのやらなければいけない〝仕事〟だからだ。
すべてはこの国のためであって、私は愛されてるわけじゃない……
わかってるけど、苦しい……っ
これだけ皇帝という立場の人によくしてもらっておいて、わがままだとは思う。が、自分だけがこんなにも恋心を募らせているということが、悔しくて悲しくてたまらない。
「この二の腕さえなければ、本当に愛してもらえたかもしれないのに……っ」
ルアーニアは、己のだるんだるんした二の腕を睨みつけた。
ゼンドはいつもこの二の腕を見ている。ルアーニアがそれに気づいてゼンドに視線を送ると、彼は『しまった』とでもいうように視線をそらしているのだ。
ゼンドは初めて会った時、このだるんだるんの二の腕を見て、心底驚いた顔をしていた。
誰もが忌避するこの二の腕が、憎らしい。
「この、だるんだるんさえなくなれば……!!」
自分の二の腕に憎悪すら感じたルアーニアは、厨房に行ってナイフを一本借りると、自室に戻ってきた。
ギラリ、とよく研がれたナイフが二の腕の前で光を放つ。
「大丈夫よね……きっと痛いのは一瞬だけなんだから……」
ルアーニアが己の二の腕にナイフを突きつけた、その時。
「なにをやっている?!!!」
バアンと扉を開けて入ってきたのは、ゼンドだった。
「やめろ、ルアーニア!!」
彼はそう言うと同時に、ルアーニアの手の中のナイフを奪っていく。床に乱暴に投げ捨てられたナイフは、クルクルと回り、やがて止まった。
「死ぬ気か!! そんなに俺との結婚が嫌か!!」
初めて見る、ゼンドの怒り顔。どうやら自殺をすると勘違いしてしまったようだ。厨房の誰かがゼンドに報告したに違いない。
こんなにルアーニアに尽くしているのに自死されては、怒りが湧くのも当然だろう。婚姻の儀が明日に迫っている今、勝手に死なれてしまえば両国の同盟にも亀裂が入る問題なのだから。
「落ち着いてゼンド、これは自決ではないのよ! 死ぬつもりなんかこれっぽっちも……」
「ではなぜ、自分を切ろうとしていた?!」
「これは、違うの! 二の腕をなくしたくて……」
「二の腕を? なぜそんなことをする必要がある!!」
「だって……」
ぽろぽろと目から冷たいものが滴り落ちる。
こんな醜い二の腕に生まれてしまったことが、つらくて仕方がない。
「この二の腕さえなければ、私はゼンドに愛してもらえたかもしれないのに!」
「いや……愛しているが?」
「……え?」
ゼンドの言葉が理解できず、ルアーニアはぽかんと彼の顔を見上げる。
「今、なんて……? 愛? それも義務で言っているの?」
「義務? いや、そんなつもりはない。俺は、心からルアーニアを愛している」
「そんなの、信じられない! だって私、だるんだるんだし!!」
「そこがいいんだ!!」
ガバァッと視界を全てゼンドに覆われるくらいに接近されたルアーニアは、パチクリと彼の真剣な瞳を見た。
「こ、これが……?」
「初めて触れた時、衝撃が走った……! しっとりとしていてツルスベなのにだるんだるんした肌!! これぞ究極の二の腕! 俺はこの二の腕に触れた瞬間、胸を射抜かれたんだ!!」
「そんな言い訳、いらないわ! 知ってるのよ?! 私の腕を見て、嫌そうに顔を背けてたことは!」
「それはルアーニアが睨みつけてくるからだろう! 嫌われたのかと思って慌てて逸らしただけだ!」
「そんなことで、嫌ったりなんかしないわ!!」
今度はルアーニアの方が食う勢いでゼンドを見つめる。
「嫌われてない……のか? この国に嫁がされる原因となった俺を、恨んでるんだろう?」
ゼンドの悲しそうな声の問いに、ルアーニアはふるふると首を横に振り、二の腕をだるんだるんさせる。
「恨んでなんか……! 最初は確かに、来るのは嫌だったけど……でも、今は……」
ルアーニアの顔が熱くなる。言いたいことは通じたようで、ゼンドはほっと息を吐くように笑った。
「よかった。俺はこの二の腕もそうだが、初対面なのに平手打ちをするその度胸にも惚れたんだ。大人しく従順な妻なんて、つまらないからな。ルアーニアは理想の俺の嫁だ」
「二の腕だるんだるんでも?」
「そこが良いと言っただろう。何度も触りたい欲求をこらえるのに苦労した」
自嘲するような、それでいて照れているような笑いが、ルアーニアの心に入り込んでくる。
まさか、いつも感じていたゼンドの二の腕への視線は……このだるんだるんに触りたかったからだったの……?
そうに違いないとわかったルアーニアは、クスリと笑って腕を差し出した。
「私、ずっとこの腕がコンプレックスだったのよ」
「そんな風に思う必要はない。この二の腕は、素晴らしいものだ」
「ゼンド……触ってくれる?」
「いいのか?」
ゼンドの問いにこくんと頷くことで応えると、彼は口元を綻ばせてルアーニアの二の腕に触れてくれた。
ゼンドの大きくて骨張った手が、温かくて気持ちいい。
「……うむ。これはもう、手放せん」
ひとしきり二の腕を触ったゼンドの手が、だるんだるんの腕から離れていく。そしてゼンドのきりりとしたその目に、ルアーニアはじっと瞳の奥まで見つめられた。
「ルアーニア」
「はい」
その真剣な顔に、ルアーニアも真っ直ぐ見つめ返す。
ゼンドは威厳のあるオーラを放ちながら、きっぱりとした声で言った。
「もう二度と、この腕をコンプレックスなどとは言わせない。その性格も、この腕も、丸ごと全部愛しているんだ。なにも憂慮することはない、安心して俺の嫁となれ」
姉のように淑やかでなくとも。二の腕がだるだるんでも。
ゼンドは全てを受け入れて、愛してくれる。
「はい……私も、ゼンドが好き……! その威厳のある物言いも、子どもたちに向ける優しい瞳も、国のためなら利他的になれるところ……なにより、私を丸ごと愛してくれるゼンドが、大好きよっ」
ルアーニアのすべての想いを伝え切ると、ゼンドは嬉しそうに笑ってその手を頭に回してくれた。
ぎゅっと抱かれるようにしっかりとロックされると、ゼンドの唇が降りてきてルアーニアの唇に重なる。
一日早い、誓いのキス。
ルアーニアの二の腕は、キスに合わせていつまでも揺れていた。
だるんだるん……と、嬉しそうに。
ーENDー