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怪奇討伐部Ⅵ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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ついに地下へ!

第五話 出発




 朝ごはんの時間が終わり、現在九時。


 姉ちゃんはまだ起きてこない。

 サメは泉に行っている。

 ムジナとメリアはリビングで俺の本を読んでいる。

 その横で俺は窓際に置いていたあの虹の粉の瓶を見ていた。


「……」

「おっはよーう!ヘラ!」


 バコン!と音を立ててドアから入ってきたのはレインだ。普通、ドアはそんな音を出さない。


「おはよう、レイン」


 だが、俺はこの入り方に慣れているので怒りはしない。


「ムジナもおはよ!」

「おはよー!」


 レインはマフラーをはためかせてズンズンと入ってきた。


「レイン、飲み物はいるか?」

「あー、すぐに出るからいいよ。それより、ヘラ。地下からの魔力が急激に膨張している。ノートやヌタスをどうにかするより先に行かないと大変なことになるぞ」

「今日行こうとしてた。あとお前も呼ぼうと思ってたんだ」

「おっ、ならナイスタイミングってやつだな!」


 彼はニコニコしている。

 大変なことになっているというのにこの緊張感……まぁいつものことだ。


「今回はサニーとスノーは置いていくことにした。危険な場所にかわいい弟と妹を連れて行くわけにはいかないからな」

「当たり前だ。俺でも連れて行こうとは思わない」

「そういやあのモサモサの人は?」

「モサモサの人……?あぁ、サメのことか」

「そうそう!あいつは?」

「泉だが……。あいつは留守番だ」

「そうか……まぁ三人いれば問題ないな」


 レインはポケットに手を突っ込んだ。

 そして取り出したのは……。


「ん?何それ」

「通信機。もし地下で死んだら誰が迎えにくるんだよ?」

「いやいや、死なないからな?」

「……。地下は本当に危ない。その辺も考えていかないと生きて帰れないぞ。……奇跡が起きない限りな」


 レインはそう言うが、この部屋には死神がいる。それに、姉ちゃんの言うことが正しければ、俺たちの力が拮抗し合い、死ぬことはないだろう。

 それを知ってのことだろうか?


「……は?お前なぁ、魔界の管理してたのは誰かわかって言ってんのか?」

「魔王じゃないのか?」

「違う違う!人間界と魔界の海を隔てる結界を作ってたのは、オレたち呪術師だ。特にオレの両親はその中心だった。でも、スノーが生まれて……『化け物さん』たちが両親を殺した。だから結界を作る技術が幼いオレたちに伝わらないままになっちまったんだよ」

「……!」

「知りたがりのお前でさえ知らなかったなんてな……。だが、まぁいい。ヘラでさえ知らなかったことがあるってことなんだから、地下の危険さは理解してくれたよな?」

「……理解したよ。疑って悪かった」


 レインはにっこりと微笑む。

 それは家族であるサニーやスノーに見せるものと同じだった。


「さ、オレの準備はできてる。泉に行ってるから、準備ができたら呼んでくれ」

「あぁ。……ムジナ、聞いていたか?」


 ちら、とテーブルの方を見る。

 ムジナは絵本を置き、表情一つ変えずに頷いた。


「ねぇ、二人とも……私は?」


 隣のメリアが心配そうに声をかけた。

 隣にいたのだから、さっきの「死ぬ」「死なない」の話を聞いていたのだろう。


「メリアは……ダメだ。宇宙の人を地下なんかに連れていったらどうなるかわからないからな。それに……」

「?」

「……もうちょっと魔界を楽しんでほしい」


 なぜか顔が熱い。

 ちゃんと前を向いていられない。

 体が……震えている?


「……。ヘラがそこまで言うなら……わかったわ。ここで待ってるから」

「ありがとう。行くぞ、ムジナ」

「うん。メリアさん、お留守番しててね!」


 ムジナがメリアの方を見る。彼女は「わかってるわよ」とばかりにニコ、と笑い、手を振った。


 __________


「おっ、来たぞ」

「ヘラ!ムジナ!」


 レインはオレたちに背を向けるように泉の淵に座っているので、体を左にひねって手を振っている。

 どうやらサメさんとお話ししていたようだ。


「レインとサメさん、仲良しになったの?」

「仲良しというか……いろいろ教えてもらってた」

「いろいろ?」

「そ、いろいろさ。ほら、ここまで来たのなら準備バッチリってことだよな?」


 オレたちは頷く。

 その姿をサメさんは水から顔を出したまま、腕を組んで見ていた。


「……サメは留守番だ」

「わかってる。地下なんかに水があるとは思えないしな」

「灼熱の水ならあるかも?」

「それはマグマだ!」

「あはは……」


 サメさんが叫んだところで、レインは立ち上がり、ズボンに付いた砂をパンパンとはたいた。


「よし、行こう!ヘラ、瓶は持ってるな?」

「当たり前だ」

「プチトマトもあるよ!」

「おっ!それは楽しみだな!じゃあ留守番頼むぜ、サメ」

「あぁ。宇宙より近いからって、あまり気を抜かないようにな」

「はーい!」


 返事をしたレインはテレポートの魔法を唱える。

 白い光に包まれ、気が付くと街の路地裏にいた。


「わっ、この賑わった音……コルマーだね?」

「破壊と再生の街だ。ちょっと出たところに地下の入り口がある。……あまりジロジロ見るなよ」


 言われてしまうと見てしまう。

 周りをぐるっと見ると、誰かが生活していただろう痕跡がある。

 いずれも少し古いが、何年も前のもの、というわけではなさそうだ。


 コルマーはピンキリの街とも言われており、毎日賭け事、喧嘩をしている人たちと、全てを失い彷徨ってきた人……いわゆるホームレスが集まる場所なのである。


 彼らは全員コルマーの『祭り』の影響を受け入れる代わりに住まわせてもらっている。

 いつも『祭り』は街が消えてしまうのではないかと思えるほどの破壊、暴力が繰り広げられており、そのせいで命が消えても良いよね?という契約のもと、彼らはコルマーに根を下ろしている。


 あまりに危険すぎるため、お兄ちゃんはここに来てはいけないと言われているのだが、以前ヘラと二人で来ている。


「ねぇ、ここには誰が住んでたの?」

「おいおい、ムジナ____」

「……オレだよ」


 レインは目を合わせずに呟いた。


「レインの家?」

「そ。ハレティがガサ入れ……いや、スクーレを引き連れて旅に出るまでのな。……ほら見えてきたぞ、あそこだ!」


 レインが指す方を見ると、サニーが立っていた。


「あれ、サニー?レイン、連れていかないって言ってなかった?」

「観測が大変だからな。サニーの魔力で入口を引っ張ってもらってたんだ。ヘラの家に行ってるときに消えたらどうするんだよ」

「それもそうだな」


 レインはサニーに話しかけに行った。

 お兄ちゃんの姿を見つけたサニーは嬉しそうに笑い、腕を振り上げ、そして下げる。

 するとそこに宙に浮く真っ黒な穴が空いた。

 穴から風が吹いているのか、サニーの濃い水色の髪がワサワサと揺れた。


「気を付けてね、お兄ちゃんたち」

「あぁ。もし一ヶ月ほど戻らなかったら死んだものと思ってくれ」

「結構長く見積もるね……」

「地下は深く大きく長いって聞くからな。……っはは、ただの空洞だったりして」


 こっちを見て笑いながら穴に踏み入れる。

 重心が穴の方に傾くと、そのままレインの体は地面の下に消えていった。


「うわああああああああ!!!!!」

「ちょ、レイン!?」

「お兄ちゃーん!!」


 ヘラとサニーが驚いて穴を覗く。

 オレも遅れて見てみると、遠くの方から叫び声は聞こえるが、暗すぎてよくわからない。だが相当な深さだということと、この穴は地下でいう「天井」あたりということがわかった。


「大丈夫ー!!下がジャングルみたいになってて、なんとかなった!でも水があるから気を付けろよー!!」


 大声で叫ぶレイン。それくらいしないと声が届かない高さなのか……。

 とにかくレインが無事でよかった。


「風があって水、植物が成長できる空間……?地下なのになんでそんな……」

「行ってみないとわからないし、飛び込んじゃえ!えいっ」

「うわっ、押すな!うおおおおおおっ!?!?」

「お、お二人とも……!お兄ちゃんをよろしくお願いしますー!!」


 慌てて避けたサニーの声がいつまでも、いつまでも響き渡った。

 なぜなら、そこはトンネルのように丸く、大きかったからだ。

 ヘラの悲鳴を背に、仰向けで『空』から落ちていく。

『地』から生える木々は、まるで地獄へと引きずり込もうと手を伸ばす亡霊の手のように見えた。

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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