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怪奇討伐部Ⅵ-Star Handolle-  作者: グラニュー糖*
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ゲームで再現するのはよしましょう。(戒め)

第二話 ペットを紹介します、鮫です




 __________


 皇希に電話をしたあと……。


 俺はムジナと話をしていた。

 ムジナを外に連れ出し、家の裏にある泉の方へと向かう。そこではサメがのんびりと過ごしていた。


「サメ!」

「……ふぁあ……。どうした?ヘラ」


 一言にサメと言っても、宇宙で仲間になった人間の姿をした高身長の『サメ』だ。しかもサメではなくジンベエザメだ。


 彼は銀色の長髪で、右目を隠している。たまに髪留めで両目を見せているときがあるが、今日はやっていないようだ。

 彼もムジナと同じように服のセンスがあまり無く、最初に出会ったときに付けられていた枷をかっこいいと言っていた。

 しかし革製の黒いコーディネートはかっこいい言える。……ドクロがドン!と描かれたシャツさえ脱げばの話だが。


 ちなみに目をよく見ると、図鑑で見たような『サメ』の目をしており、とても怖い。


「留守番を頼む」

「また出かけるのか?」

「廻貌がうるさくてな」

「さっき帰ってきたばっかだろ。魔力もそれほど回復してないはずだ。炎出してみろ」


 言われた通り、炎を出してみる。

 ……マッチ程度しか出なかった。


「う……」

「ヘラ、やっぱり回復してからにしよ?今日はもう遅いし……」


 ムジナが空を見上げる。

 太陽は顔を見せていなかった。


 ここは森の中だ。あまり遅くにいることは好ましくない。


「……そうだな……」

「ヘラ、なに慌ててるんだ。お前らしくないぞ」

「慌ててる……?俺が?」

「とにかく今日は休め。な?ムジナ」

「そうだよ!オレも疲れちゃった」

「……わかった」


 宇宙から帰ってきてまだ四時間ほどしか経っていない。

 月光はすぐにどこかに行ってしまった。

 メリアは俺の家にいる。


 爆風のせいで付いてしまった焦げ臭いにおいはまだ残ったままだ。

 未だに俺たちが宇宙に行っていたなんて、虹の粉が集まったなんて信じられない。俺は窓際に置いた瓶を見るたびそう思っている。


「サメさん、夜もここにいるの?」

「どういう意味だ?」

「あー……夜の森は危ない。吸血鬼が出るかもしれないからな」

「えっ」

「方位磁石は……持ってるな。夜の間は家に入れ。昔使っていた水槽がある。そこで寝たらどうだ」


 昔まだ海が開放されていたとき、俺とムジナで海に行ったことがある。そのときはまだ魔界だったので釣れた魚は食えたものじゃない。だが、大物を釣るたびに俺たちは喜んでいたものだ。


 それを入れていた水槽だ。


「……なんか骨入ってる……」


 家に引き返し、水槽を見せるとサメは微妙な顔をした。


「掃除する。……お姉ちゃん!ついてきて!」

「あら、久しぶりに見たわ、その水槽!いいわよ、行きましょう。ムジナくん、サメくん、ゆっくりしていってね」

「はーい!」

「ありがとうございます」


 どうして姉を連れ来たのかというと、俺の力じゃ水を入れたあと持ち上がらないからだ。


 イリスの泉は妖精の加護がついているといわれており、常に綺麗な水になっている。数多くいる妖精の中で最も仲が良かったのは『ルージ』という妖精だ。……今は姿は見えないが、きっとどこかで暮らしているはずだ。生きているはずだ。


「よいしょっと。これでいい?」

「ありがと!上の蓋を開けて、息ができるようにして……。おーい、サメ!」


 サメを呼び、見てもらう。どうして方位磁石を持っているのに水槽を用意したのかというと、寝返りをうったときに落としたら一大事だからだ。それで不安になるくらいなら水槽に入れたほうが早い。


「おお!これなら息ができるぞ!」

「これならみんなで寝室で寝られるね!」


 ムジナもはしゃいでいる。

 喜んでもらえてよかった。

 ……本……当に……。


「……ぅ……」

「ヘラ!?」


 頭がフラフラする。

 頑張りすぎたからなのか?

 もう……立っていられない……。


 __________


「よっと!……ったく、無理しやがって……」


 サメさんがヘラをキャッチした。

 サメさんがいてよかった。

 サメさんはヘラをソファーに寝かせた。


「……二人とも、いつもヘラに全部任せてるんだろ」

「えっ」

「うっ」


 サメさんの鋭すぎる目が光る。

 その場にいたオレとメノイさんが図星という顔をした。


「だ、だって……いいよって言ってもやってくれるから……」

「昔から何もできない私の代わりになってやってくれるから……」


 それぞれの理由を口にすると、サメさんは目を閉じて小さくため息をついた。


「お前らはヘラに感謝を述べたことはないのか!」

「だって……」

「だってじゃねぇ!ったく、ムジナはいつもいつも弱気になって……!!」


 サメさんがイライラしながら説教をしていると、上の寝室からメリアさんが出てきた。


「うるさくて眠れないわ!」

「だってムジナとメノイが____」

「それになに!?ヘラってば倒れちゃってるじゃない!」

「それは二人がいつもヘラに無理をさせるから……」


 ちら、とこっちを見る。

 その目には恨みが込められていた。ごめんなさい、サメさん。


「……はぁ。なら目を覚ましたら驚くようなことをしてあげたら?」

「驚くようなこと?」


 わけがわからない、と三人で顔を見合わせる。


「部屋をピカピカにしてあげるとか、ヘラが好きなご飯を作ってあげるとか。サプライズは結構効くわよ?」

「でも、明日には地下に行かなきゃ……」

「休憩するときは休憩するの!しないというのなら、私の角カチューシャが火を吹くわよ?」


 そう言って牛の角を模したカチューシャをコツンとつつく。

 しっかり尖っており、痛そうだ。


「……はぁい」

「よろしい!メノイさん、ヘラの好物は何ですか?」

「そうねぇ……基本的には何でも食べるけど……。あの子なら、『ムジナが喜ぶものは俺も好き!』とか言って食べそうね……」

「すごく言いそう」


 たはは、と苦笑いしながらサメさんも頷いた。


「ちなみにムジナの好きなものは?」

「シチューとかオムライスが好きだよ」

「クノリティアは雪国だからシチューがよく食べられているものね」

「……魚料理は?」


 サメさんが慎重に呟く。

 自分が魚だからってそんな発想おかしいでしょと言おうとしたが、よくよく考えてみたらグランドゥプリュイで捕まったのは、魚料理を作ろうとして魚釣りしていたら……というものだった。もしかするとワンチャンあるかもしれない。


「魚は危険なところのものしか残ってないの。昔はヘッジとカリビアの元でムジナくんと釣りに行ってたんだけどね……。だから魔界の人たちはほとんどベジタリアンなのよ」

「プチトマトとかいっぱいあるもんねー!」

「あ、私魚料理ならできるわ。アシリアに作ってたものね」

「うぅ……アシリアぁ……」


 今日のことなのに昔のことのように思えてしまう。


 確かにシアエガはとてつもなく強く、大きく、恐ろしく、さらには『オリオン』という星を取り込んで強大になってしまった。


 だが、何かできることはあったのではないかと思ってしまい、ゆっくり休めない。


 シアエガに突き飛ばされたときのアシリアの諦めたような笑顔が頭から離れない。


「大丈夫だ……犠牲が少なかっただけでも儲けものだ」


 サメさんが後ろから抱きつき、頭をポンポンとする。

 サメさんだってつらいはずだ。一緒に行動してきた商人ちゃんが『ナイアーラトテップ』という生き物であり、まさか最初から死んでいたなんて。


「……みんな大変だったのね」

「そう!ヘラも大へn____むぐぐっ」


 シャドウアースの話をしようとすると、サメさんは頭の上にあった手を口へと持ってきた。

 そして部屋の隅に連れていかれる。


「ぷはっ!何するの!?」

「アホか!心配させてどうする!」

「え?でも、いつも無茶してるのは知ってるよ?」

「それでもだ!心配はしないほうが精神的にも安定するものだ!だから変なことは言わない!わかったな?」

「はーい」


 オレの気の抜けた返事にサメさんは微笑んだ。


「よろしい!……じゃ、俺たちは海か川にでも行くか」

「川はあまり魚いないよ」

「なら海だ」

「端から端だよ」

「……」


 ……めちゃくちゃ嫌そうな顔してる。

 でもしょうがないことだ。イリスの川はハレティの雨の異変のせいで埋まっちゃったし、海は昔は人間界とは繋がっていなかったのに、突然繋がるようになってしまい、危険区域とされてしまったのだ。

 ところどころに川はあるが、川と言えるかはわからない。


「やっぱり、服とかは?」


 メリアさんが提案する。……が。


「オレはパス!変なデザインって怒られそう」

「俺もパス。センスが悪いって言われた」

「……って、ダメじゃない!」

「「そうだよ!!」」

「えぇ~……」


 オレとサメさんの自信満々な発言に少し引くメリアさん。


「じゃあインテリアとかは?」

「掃除するものが増えるからパス」


 あらぬ方向から声が聞こえ、振り向くと……。


「ヘラ!」

「寝てなきゃダメじゃないか」


 ヘラが身を起こす。

 するとドアをノックする音が聞こえた。


「私が行くわ。……はーい」


 メノイさんがドアを開ける。

 その間、ヘラはソファーから立ち上がろうとしたがサメさんに止められた。


「無理するんじゃない」

「俺が……やらないと……誰もやらないでしょ……」

「……あら、レインくん!」

「お邪魔します!」


 レインの名前にオレとヘラが反応する。

 そしてひょこっと現れた元気そうな顔にオレは「あぁ、帰ってきたんだな」って改めて安心した。


「レイン!」

「よっ、ムジナ。……ヘラ、なんで寝てるんだ?」

「俺だって起きたいよ」

「ヘラは無理しすぎて倒れたんだ。しばらく安静にするからな」

「誰……?」


 レインからすると見知らぬ顔が二人。

 だが、宇宙や地下の話に詳しいレインはすぐに納得した。


「……あー!また新しい人増えたんだな!時間の計算からすると……お前ら、宇宙に行ってきただろ」

「詳しいな」

「……レイン、カリビアさんは?」

「まだだよ。今日スグリさんと話しに行ってきたばっかだ」

「内容は?」

「……。バルディに聞いた話じゃ、ヘッジは精神的に傷付き、書斎から出てこないらしい。だからムジナ、お前を探す気力もないらしいぞ」

「大丈夫。お兄ちゃんにはカリビアさんが必要だもん。それに今が楽しいからいいの」


 少し寂しいとも感じたが、仕方ない。

 レインは悲しそうな表情を顔に出した。


「オレだって兄弟はいる。ヘッジが心配する気持ちはよくわかってるよ。……バルディにオレたちがカリビアを助けようとしていることを内緒にしてもらう約束をしてきた。だから家に戻っても問題はないはずだ」

「でも……」

「……帰るか帰らないかはお前が決めな。じゃ、オレはここで。地下に行くときに呼んでくれよ」

「あら、もう帰るの?」

「うん。次来るときはサニーとスノーも連れてくるよ。お大事に、ヘラ」


 そう言ってレインは出ていってしまった。

 地下に行くときに呼んでくれ、ということはレインも地下が気になっているのだろう。


「……あいつは何だったんだ?」

「レインだよ。呪いとかの専門で、いろんなところの結界を作って守ってたんだって」

「呪い!?」


 サメさんが後ずさる。だが、レインはいい人なのでそんなことをする必要はない。


「大丈夫だよ!あれでも三兄弟の長男だもん!」

どうも、グラニュー糖*です!

現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!

こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。

本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!


なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!


ではでは〜

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