イカサマは見ていないところでもダメです
第十七話 勝利の法則
__________
「うっはあああ」
幸せそうにクリスタリオを眺めるレイン。顔が緩みきっている。
扉が開いたので次の部屋に行こうとしているのだが、レインが剣から目を離さない。置いていってやろうかと脅すと、待って待ってとついてきた。剣を見ながらだが。
「ちゃんと前見ないとだめだよー?」
「わかってるってー……あだっ!!」
顔面衝突。
クリスタリオはその名の通りクリスタルでできているので、屈折がある。扉の隙間に向かったはずが、そのすぐ隣の壁に激突してしまったのだ。
「……あほくさ……」
「う、うるせぇ!ヘラ、お前だって廻貌が手に入ったときこんなんだったんじゃねぇのか!?」
「……」
「なに、その無言!?」
無言になるのも当たり前だ。
廻貌は俺の家を破壊してやってきたからだ。しかも俺の愛剣、ヨジャメーヌまでへし折りやがった。ありゃあカリビアさんでなくては元に戻せない。そんなカリビアさんは今、城に囚われているんだから、無言というのは呆れ返って何も言えないのだ。
「レイン、もうちょっとヘラの言うこと聞いた方がいいよー」
「うるせぇ!」
クリスタリオから目を離し、ずんずんと進んでいく。
今回は廊下無しだ。
「また変な仕掛けの部屋だな……とうとう六つ目か……」
「六つ目……って、何個か知ってるの?」
「全部で七つだ。オレの考察が合っていればの話だがな」
「おいおい、それってまさか……」
「賢いヘラはすぐにわかったか?」
「……『イシュタルの冥界下り』を元にしているのか?」
「アタリ」
『イシュタルの冥界下り』。
神話だ。俺もちょっとしかわからないが、簡単に言うと、冥界に行っていろんな装飾を剥ぎ取られ、裸になったイシュタルが冥界に閉じ込められるという話だ。結局帰ることができたのだが。
ここの関門は試練という形を取っているが、俺たちからいろんなものを奪い取っていることには違いない。
体力、魔力、精神力、そして仲間だ。
さらには敵まで存在している。ゴールに着く頃にはもしかすると杖無しじゃ立っていられないほど疲弊しているのかもしれない。そうなると、廻貌を戻すどころかここのボスに勝つことすらできない。
「神話内の『冥界』は、地下よりもっともっと深いところにあるらしい。日本で言う『地獄』みたいなものだ。まぁ『冥界』と『地獄』の意味は違うけど、場所だけで見ると同じ感じだ」
「『地獄』!黒池さんのところで聞いたよ!」
「なら話は早いな。だから『冥界』の門である試練があったり、『地獄』の使者である鬼や天狗がここに存在する……オレはそう思うよ」
「レインにしては冴えてるな」
「だろぉー!?へっへーん!」
レインは満足そうに腰に手を当てた。
たまに褒めてやらねばこいつは拗ねるのだ。
「それでそれでっ!今回はどんな内容なのかな?」
「……なんかテーブルがあるぞ?何か話し合いとかするのか?」
「円卓……」
「何か言った?」
「いや」
丸くて白いテーブルだ。
高さは腰辺りまで。周りには椅子が人数分あり、テーブルの上には何かが散らばっている。
「また警戒も無しに近づいて……大丈夫なんだろうな?」
「うん!これだけみたい」
「これは……ボードゲーム?ヘラ!」
「だから何でも俺に聞くなって」
とりあえず行ってみる。
ペンキで白く荒く塗られた木製の机の上には本当にボードゲームが置かれていた。
「スゴロク、だな」
「すごろく?」
「そ。そこのガラスの器に四角いのが何個か置いてあるだろ?これを転がすんだ。こうやってな」
コロン、と転がす。
試しに転がしたサイコロには肆と書かれていた。
「む」
「わぁ、見たことない文字だ!何て書いてるの?」
「『四』だな。古い書き方をすればこうなると本で読んだ」
「これならオレだって知ってるぞ。札に書いたりするしな。でもなんでこんなわざわざ古くするんだ?」
「さぁ?鬼の趣味じゃねぇの。廻貌だって元はこんなんじゃなかったのに!って無言のままだし」
元はといえば廻貌の領域なのに、全く元気がなさそうなのはやはり鬼の影響なのだろうか。
「あ!プレートがテーブルの下にあったよ!えーっと……『勝者のみが通るべし』……って、本格的に人数を減らそうとしてるね……」
「ならズルすればいい!結果が全てだろ!」
「『(なお、イカサマはカウントしないものとする)』……だって」
「マジかよ」
レインが残念そうな顔をした。
とにかくこの椅子に座り、スゴロクを終わらせないとここから先には進めなさそうだ。
「早く終わらせるぞ。そんなに長くなさそうでよかった」
「伸びたらどうする?」
「物理法則が許さないだろ。まず俺が許さん、へし折って燃やし尽くしてやる」
「ヘラ、そんなことしたら進めなくなっちゃうよ!」
「……冗談だよ」
((と、とても冗談には思えない……!!))
椅子に座り、順番を決めるためにじゃんけんをする。幸い、プレイ方法は書かれていた。
「俺、レイン、ムジナだな。ちょうどいい、よく見とけよ」
「うん!」
「ふふん……研究させてもらう」
「いや運要素なんだが……まぁいいか」
コロンと転がす。また肆だ。
幸い、ボードにもこの古い文字が書かれている。二人が読めなくてもこれなら置けるだろう。……問題は二桁以降だが。
「こいつをここに動かす。ほら、いちにーさんよん……っ!」
「どこに行ったらいいの?」
「このでっかくゴール!って書いてるところだよ。全部で五十マスくらいはあるけどな……」
「ん……参だ……なぁ、文字が書いてるところは?」
「その通りにする」
「……変顔……」
「しょうがない、ルールだ」
「え……やだ……」
……すごい嫌そうな顔だ。
「終われないぞ」
「うぅ……。……これでどうだ!」
レインが全力の変顔をかまし、爆笑するムジナの手にスゴロクを握らせる。
「ん?えーい!ころころー!」
コロコロ転がるサイコロ出た目は……。
「陸!やったな、最高値だぞ!」
「わーい!でも何も書いてなーい!」
「何もないことこそが平和だぞ……うん……」
__________
しばらく経って。
次のターンで決着が付きそうだ。
ゴールから見てヘラ、レイン、オレの順番だ。じゃんけん通りの順番になっている。
「ねぇ、なんか対策練ってるの?」
「当たり前だろ。つまり、全員勝者になればいいんだろ?なら……!」
ヘラはにや、と笑い、ペンを取り出してキュッキュッと何かを書く。
そこには……。
「『あと伍進む』」
「『あと漆進む』。……セコ……」
「全員同時にゴールすりゃあいいんだよ。行くぞ!せーのっ」
全員が駒をゴールに乗せる。
それと同時に扉が開いた!いいのか、それで。
「心が痛い」
「結果が全てだ!!」
「たまにヘラがわからない」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




