私は托卵で生まれた子供 ~親の因果が子に報い、そして孫に、曾孫に……~
高天ヶ原彩音は、日本を裏で支配する大財閥の娘だ。
しかし、実は自分の父が頭首ではない事が発覚し、彼女の運命は暗転してしまう。
これは、多くの女性が、たった一人の裏切りによって地獄に堕ちる物語。
私は、高天ヶ原彩音。十六歳。
私はこの日本を裏から支配する大財閥の娘だった。
そう、【だった】だ。
私の母は高天ヶ原家頭首である父を裏切っていたのだ。
そう、私と十三歳の弟と十歳の妹は、父の血を受け継いでいなかった。
私達は以前から父に似ていないと言われていたが、父は母を溺愛していたので、DNA検査は行われなかった。
父は第二夫人を持たない程、母を愛していたのだ。
しかし、あまりにも側近から受けるべきだと言われたので、父は血が繋がっている事を証明するためにDNA鑑定を行ったのだ。
しかし、結果は親子である可能性は0%だった。
しかも、三人全員が。
当然父は激怒し、母に詰め寄った。
私達もその場に同席させられた。
その結果分かったのは、私達の本当の父親は屋敷に仕える使用人だという事。
今の今までずっと不倫をしていた事。
これを聞いた父はさらに激怒し、その場で母を殺した。
そして、不義の子である私達三人は、牢屋に入れられてしまった。
あれから何日も経つ。
私は、そして弟と妹はどうなってしまうのか。
ずっと不安に思ってた。
そんなある日、私のいる牢屋に大人数の足音が聞こえた。
「お久しぶりです」
「藍ちゃん!由香里ちゃん!」
先頭にいた二人は、私の親友で学校では同じクラスの、佐倉藍ちゃんと、山岸由香里ちゃんだった。
もちろん同い年だ。
彼女達は高天ヶ原家の分家の人達だけど、私達はいつも一緒に遊んでいた。
「穢れた女風情が気安く名前を呼ばないでください」
「藍……ちゃん?」
言われて気づいた。
藍ちゃんも、由香里ちゃんも、私をまるでゴミを見るような顔をして見ていた。
「どうして……私達親友でしょ?」
「黙れ!こちらにいらっしゃるのは高天ヶ原家の第一夫人であらせられる高天ヶ原藍様と、第二夫人であらせられる高天ヶ原由香里様であらせられるぞ!」
「……え?」
二人の後ろに控えていた護衛の言葉に、一瞬、脳がフリーズした。
つまり……二人は父の新しい妻という事だ。
「だって……二人とも婚約者がいて……あんなに仲良さそうで」
「黙れと言っているのが……」
「かまいません」
藍ちゃんがそう護衛に言うと、護衛は「かしこまりました」と言って黙った。
藍ちゃんは続けて言った。
「あなたの母親がしでかした件で、高天ヶ原家は後継者がいなくなりました。ですので、新しく子を産む母体として、私たちが選ばれました」
「そんな……じゃぁ、婚約者は?」
「私と藍さんの婚約者、そしてこの結婚を渋っていた私達の両親も、全員交通事故で亡くなりました」
「そんな……」
この言葉を聞いて、二人が私の事を、ゴミを見るような顔をして見ている理由が分かった。
私の母のせいで、そして私達が頭首の血を引いていないせいで、二人の婚約者は、そして結婚に反対する両親も殺されたのだ。
私は、父の事を思いだした。
父は、家族や仲間を大切にし、他者の意見をよく聞く人物だ。
だが、自分が進む道を邪魔する者には決して容赦をしない人だ。
ある意味、この結果は当然かもしれない。
「ああ、それとこれを見てください」
藍ちゃんが左腕を見せた。
そこには、変な腕輪がついていた。
「これはGPSや盗聴器等がついた腕輪です。また、私達には専属の女性監視人が付いています。私達二人は二十四時間監視され、死ぬまで自由な時間はありません」
「そんな……どうして!だって二人は高天ヶ原家の第一、第二夫人なんでしょ!」
「当たり前ではないですか。あなたを産んだゴミくずと同じ様にならないように監視が付けられるのは」
「万が一、一分でも監視の目を逃れた場合、私達は死刑。そして、佐倉家と山岸家は即お家取り潰しとなります」
「そんな……」
こんな事ってないよ。
私は泣き崩れた。
「それよりもあなた方ゴミ三人の処分についてです」
「まず、あなたの弟は死刑、いえ、廃棄処分です」
「両親ともども遺体はゴミ処理場に捨てる事が決まってます。まぁ、当然ですが」
「そんな!弟はまだ子供です。いくらなんでも」
私達の生みの父が殺されているであろう事は見当がついていた。
だけど、まだ幼い弟まで殺そうとするなんて……
「何をいっているのですか?あなた方は存在そのものが高天ヶ原家に泥を塗っているのですよ。当然の処分です」
「……」
何も……言い返せない……。
私達三人は高天ヶ原家の汚点なのだ。
「さて、あなたと妹の二人ですが、好きな方を選んでいいそうです」
「え……?」
「一つは、弟と同じ処分を受ける事」
「もう一つは……」
もう一つの条件は、信じられないものだった。
でも、私はその条件を選んだ。
ただ、死にたくない。
そのためだけに。
そして、妹も同じ選択をしたと聞いた。
最後に、二人はこう言った。
「本当、あなた達のおかげですよ。私達が高天ヶ原の頭首夫人になれたのは」
「ええ、本当に感謝しています。おかげで私達の一生は素晴らしい物になるでしょう」
恐ろしい、憎しみに満ちた笑顔で、そう言われた。
あれから十年以上の時が過ぎた。
私は、陽の光が少ししか入らない地下に作られた屋敷で、子供達と暮らしている。
当然使用人などいないから、家事全般全て私がやっている。
「ねぇ、お母様。あの扉の向こうには何があるのですか?」
「いい子にしていれば、いずれわかりますよ」
私の六番目の子供、娘の六の質問に、私はこう答えた。
この外と通じる扉は、常に施錠されている。
この扉が開くのは、必要物資が送られてくる時と、私達がお勤め……頭首のお相手をしに行く時のみだ。
だから、まだ初潮が来ていない子供達は全員この屋敷から出た事はない。
あれから、私は十人の子供を産んだ。
全員、私と育ての父の子だ。
だけど、生きているのは最初の子供の一と、六、そして今抱いている赤ん坊の十だけだ。
死んだ七人のうち二人は生まれた時から病弱で、すぐに死んだ。
きちんと病院に連れて行けば助かったと思うけど、病弱な子は存在する価値無し、と言われて、助ける事が出来なかった。
他の五人は男の子だったため、生まれてすぐ殺された。
必要なのは女の子だけだから、と。
牢屋から出た私は、こうして女の子を産むためだけに生きている。
逃走防止の為に、足の腱を切られ、私は歩くことすらできない。
生まれた子供達は、高天ヶ原家頭首の夜の遊び相手として、出荷される。
既に一は遊び相手としてのお勤めを果たしており、しかもつい最近妊娠が発覚した。
相手はもちろん私の育ての父親だ。
そして、一の血の繋がりのない祖父であり、一の血の繋がった父親でもある。
きっと、いや、間違いなくこの子もまた、同じ運命を辿るのだ。
さらにその子供も……
あれから会っていない妹も、きっと同じ事をしているのだろう。
ああ、私はあと何人子供を産むのだろうか?
………………
ごめんなさい。
私は、心の中で娘達、そして死んでいった私の子供達、そして、まだ生まれていない、いずれ生まれる子供達、そしてその子孫に謝罪した。
私の母が、不倫なんてしなければ。
あの時、私が死ぬ覚悟さえ出来ていれば。
あなた達をこんな運命にはさせなかったのに。
涙がこぼれた。
子供達の前では決して流さないと決めた涙。
早く止めないと。
でも、止まらない。
「お母様、どこか痛いの?」
「大丈夫よ。ただ、涙が止まらないだけ……」
「お母様、泣かないで。六がずーっと一緒だからね」
六が、ギュッと抱き着いてきた。
十が、私に笑いかけた。
そんな二人を見て、私はもう涙を止める事が出来なくなってしまった。
私は、十を抱きしめながら、六も一緒に抱きしめた。
「お母様、あったかい」
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん……なさい。
私は、六と十を抱きしめ、ただただ泣く事しか出来なかった。
最近読んだ有名作家の小説で、妻と托卵の娘(しかも殺人者)を愛するあまり、最終的に娘のために人を殺して警察に捕まる、という話を読みました。
しかもその娘、育ての親をいい親と回想しているのに、大切にしているのは会った事のない、自身の身代わりで捕まった血の繋がった父親の方なんですよね。
それを見て、あまりにひどい、と思い、そのイライラをぶつける形で書きました。
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