シャルマエ in アクアポリス最深部~水の聖女大仰天!
エルトリア様原作『リトルパラディン ~田舎娘だけど、聖剣に選ばれたので巨大ロボットに乗って騎士団長をやります!~』にて、サカキショーゴ様企画【シャルマエシリーズをエルトリア嬢に贈っちまおう企画!!】に便乗し、自作ファンタジー群像劇シリーズ『レインボーボンズ』とコラボしました。
雫の騎士団団長としての公務を終えたマキュリーナはアクアポリス最深部で自分の相棒のカムイである水の女王グウレイアに水温を人の体温よりやや高めの温度にして貰い、水色の長い髪を後ろでシニヨン状にまとめ、一人沐浴をしていた。グウレイアも自分のクライアントであるマキュリーナのリラックスする姿に恍惚としていた。
「ふう…、今日も色々忙しかったわ。公務の後はここで沐浴に限るわね。」
「ふふっ…、お疲れ様…。!!…ああっ…、わたしの…、腹が…」
巨大なウンディーネな姿のグウレイアの腹が七色に光り出した。
「どうしたの!?グウレイア!」
マキュリーナはグウレイアの異変に動揺した。
「お…、お腹が突然…、膨れ上がってきます…。!!…潜って!!」
グウレイアの腹部が七色に光りながら大きくなっていき、マキュリーナが水中に潜った次の瞬間…。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
腹部から破裂したグウレイアが悲鳴を上げると同時に七色の閃光とが水しぶきが部屋全体を覆った。閃光が消え、水面に上がったマキュリーナが周囲を見回した。破裂によってグウレイアの化身が解け、青い球状のコアだけが浮かんでいたと同時に、見た事のない女性が二人いた。一人は高貴な雰囲気の金髪のオーバーティーンと、もう一人は髪色、立ち振る舞い共に彼女と対を為すティーンで、いずれもマキュリーナ同様入浴中だった。
「あ…、あなた達は…?」
そんな二人にマキュリーナは大仰天だった。
「アタシはシャルロット!みんなから『シャル』って呼ばれてんだ!よろしくな!」
「私はクーリィといいます。お見知り置きを。」
ティーンはシャルロット、オーバーティーンはクーリィとそれぞれ名乗った。
「わたしはマキュリーナ。雫の騎士団団長で、『水の聖女』と呼ばれているの。」
マキュリーナも二人に自己紹介をした。
「えっ!?あんたも団長かい?」
シャルロットはマキュリーナが自分と同じ団長である事に驚いた。
「じゃあ、あなたも…?」
マキュリーナも団長である事に驚いた。
「ああ…、と言っても成り行きでなったようなもんで自慢にもならないがな。」
シャルロットは団長になったのは成り行きで自慢する程ではないと述べた。
「私はその副長を務めております。そちらの副長はどんな感じですか?」
クーリィはマキュリーナに副長について尋ねた。
「わたしには副長はいないわ。…と言っても弓を得物とする者が自分の片腕にいたの。」
「その方は今…?」
「旅に出たわ…。若いAU達と共に…。」
「どうしてですか…?」
「わたしは雫の騎士団団長としてこのブラーガルドを護る使命がある為ここを離れる事が出来ないの。だから、わたしが果たせなかった目的を果たす為にここを離れたの。」
「その目的とは一体…?」
「悪いけど…、それについては話せないわ。何故なら、『ブルドラシルの始末はブルドラシルの者でつける』…、わたし達のいるこの世界塔ブルドラシルのAU間に伝わる掟の一つなの。」
「わかりました…。ではブラーガルドとブルドラシルは一体どんな関係ですか?」
「ブラーガルドは世界塔ブルドラシルに多く存在する『ガルド』の一つなの。各ガルドには守護神として『クイーンガーディアン』と呼ばれるカムイが…」
マキュリーナがクーリィにブルドラシルの事を説明しようとしている最中…
「ん?何だこの青い玉は?それからこの雫のマークは?」
シャルロットがグウレイアのコアを触り回していた。
「ちょ…、ちょっとこれは誰でも扱える代物じゃ…!」
マキュリーナがシャルロットを制止しようとすると、コアが突然青い光を放ち、グウレイアが水で化身した。
「…機装兵か?」
「…確かに水で出来た機装兵な感じですね…。」
巨大なグウレイアにシャルロットとクーリィは思わず自分達の世界に存在する巨大人型兵器を重ねた。
「『機装兵』…?あなた達の世界にもこの『グウレイア』のような巨大なカムイがいるの?」
マキュリーナは二人に自分達の世界にもカムイがいるのか尋ねた。
「『カムイ』…、よくわかりませんが私達の世界には機装兵という巨大人型兵器が存在するんです…。」
クーリィがマキュリーナの質問に答えた。
「巨大人型兵器…、つまりゴーレムね。このブルドラシルでは『人工カムイ』の一つよ。」
「ところで『カムイ』とは一体…、どんな存在でしょうか?」
クーリィはマキュリーナにカムイについて尋ねた。
「カムイは自然界の物質を魄とする特殊生命体よ。わたしの相棒であるこのグウレイアは見ての通り水を魄とするの。それから、巨大なのや人型は勿論、動物型や小型の個体もいるわ。AU達はカムイと絆を深めて奥義や魔法等を開眼していくの。」
「では…、貴方方の世界ではカムイが重要な存在という事ですか?」
「そういう事になるわね…!…」
マキュリーナがカムイについて説明している最中に…
「なあ、これ機装兵みたいに中に乗れんのかい?」
シャルロットはグウレイアの中に乗れるのか気になった。
「勿論乗れるわよ。グウレイア、『エレメントアーマー』モードに切り替えて。勿論複座式で三席ね。」
「ふふっ…、わかりました…。」
グウレイアは身体を一瞬七色に光らせてEA化し、胸のハッチを開くと複座式コックピットが出現した。コックピットは前に二席、後ろに一席の構成だ。
「さあ、乗りましょう。」
「よし!」
「はい。」
マキュリーナは二人に一緒に乗るよう促した。前には右側にシャルロット、左側にクーリィ、後ろにはマキュリーナが乗ると、胸のハッチが閉じた。
「さあ、行きましょう。」
「一体どこに行くんだよ?」
シャルロットは行き先について気になった。
「あなた達に見せたい物があるの。」
マキュリーナはグウレイア型EAを操縦すると、彼女の両手に雫の形をした青い光が発生した。グウレイア型EAが潜ると海底にワープした。
「初めてだな…。水に潜れる機装兵ってのは…。」
シャルロットは巨大人型兵器が水中を進む様を不思議に感じた。
「機装兵でカムイ…、という事はエレメントアーマーは『神装兵』な感じでしょうか。」
クーリィは自分達の世界の機装兵とブルドラシルのカムイの一部の共通している点からEAを『神装兵』と称した。
「『神装兵』ね…。とっても素敵な名前だわ。!…ここよ。わたしがあなた達に見せたい物がある場所は。」
マキュリーナはクーリィのネーミングを褒めている中、そこには沈没した巨大筏が海底で朽ちていた。
「なあ、あんたがアタシ達に見せたい物ってこんな殺風景な奴かい?」
シャルロットは殺伐とした雰囲気に違和感を覚えた。
「シャルロット様、マキュリーナさんが私達にこれを見せるのには何か訳があると思います。」
クーリィは何か事情があるのではとフォローした。
「この沈没した巨大筏…、さる戦争の原因となったの。陸地で増えすぎた人口を何とかしようと人々は新天地を求め、巨大筏で海に進出したの。新天地での生活は陸地より過酷だった。何より過酷だったのは伝染病が蔓延してしまった事よ。隔離の為、一つの巨大筏に感染者を集めたの。本土に薬等の救援物資の要請中に軍部によるクーデターが起きて、政権を握った軍部が隔離用の巨大筏を感染者ごと沈めたの。その沈めた巨大筏がこれよ。そして戦争が起きたの。結果は本土側の勝利に終わり、軍部は解体され、その生き残りがゲリラ組織を結成して現在に至るの。」
マキュリーナは沈没した巨大筏が戦争の原因である事と戦争の顛末について伝えた。
「生きたまま沈めるとはひでえことしやがるな…。」
シャルロットは人がいた筏を沈めた事を赦せなく感じた。
「どの世界でも戦争は起こりうる…。だからこそ平和への想いはどの世界も同じなのですね。」
クーリィは戦争という人の業を感じると同時に平和への感情はどこも変わらないと感じた。
「ええ、その通りよ。わたしがあなた達に伝えたかったのは…。!!…あれは…!」
マキュリーナは二人に沈められた巨大筏を通じて戦争が起きた事実並びに平和への想いを伝えたいと述べて間もなく、近くから黒い巨大な影が出現した。巨大な影は骸骨の姿をしていた。三人は戦慄した。
「なあ、こいつは何だ?禍々しい感じなのはアタシでもわかるが…」
「…これは…、ドクロイド!…死者の怨念が具現化した骸骨型アヤカシよ!生きたまま沈められた人々の怨念がドクロイドとなって具現化したのね。」
「『アヤカシ』とは一体何ですか?カムイと対の存在…?」
クーリィはアヤカシについて気になった。
「そういうとこね。皆、これから戦う事になるけど大丈夫?」
「ああ。早速で悪い!アタシに操縦代わってくれよ!剣に代わる物があればこの骸骨何とかしてやれる筈だぜ!」
シャルロットはマキュリーナに自分が操縦する事を申し出た。
「わかったわ。わたしは管制に回るわ。」
「ありがとよ!」
マキュリーナが管制に回る代わりにシャルロットに操縦を交代して間もなく、グウレイア型EAは巨大筏の残骸の丸太を携え、剣のように構えた。
「…何故…、沈めた…。人が…、いるのに…。」
ドクロイドは死者の生前の嘆きをひたすら口にし続けた。
「化物め、覚悟しな!!」
シャルロットはドクロイドに言い放つと、グウレイア型EAは丸太でドクロイドに殴りかかった。しかし…
「何だ!?何がどうなってんだ!?水の中だからか!?」
シャルロットは水の中で上手に動かせず戸惑ってしまった。
「水の中は地上と違って姿勢制御の方法が異なるの。姿勢制御はわたしがするわ。」
マキュリーナが姿勢制御を担当すると、グウレイア型EAの動きが人機一体の如く向上した。
「よーし!これなら戦えるぜ!喰らえ、骸骨の化物め!!」
シャルロットがドクロイドに言い放つと、グウレイア型EAが丸太でドクロイドに一撃を叩き込んだ。しかし、丸太は折れてしまいドクロイドへのダメージには至らなかった…。
「げっ…、効かないのかよ…!」
丸太が折れた挙句ダメージを与えられなかった事にシャルロットが動揺した。次の瞬間…
「何故…、沈めたァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
ドクロイドの雄叫びと同時に両目から呪詛光線が一斉に放たれ、グウレイア型EAに直撃し、爆発が起こった。そして…
「あれ…!?光線が直撃したのに何ともない…!?それどころか骸骨の方が…。」
シャルロットは無傷のグウレイア型EA並びにドクロイドがダメージを受けてコアだけになっていた事に驚いていた。
「言ったでしょ。グウレイアの身体は水で出来ているの。だから、光線を鏡のように跳ね返したの。」
マキュリーナはグウレイアの身体が水で出来ている為、鏡のように光線を跳ね返せたと述べた。
「ドクロイドがコアだけの状態…、という事は…、仕上げにかかるわ!」
「マキュリーナさん…、操縦を私に代わって頂けませんか。私、光属性の扱いなら誰にも負けません。」
今度はクーリィが操縦を申し出た。
「わかったわ。アヤカシには光属性が有効だしね。」
「ああ…、アタシもまだまだ光属性の扱いが半人前だからな…。」
マキュリーナは快諾した。クーリィが操縦を代わった途端、グウレイア型EAの挙動が優雅になった。グウレイア型EAは光の剣を具現化した。
「どうか安らかに…。」
クーリィの祈りの言葉と共にグウレイア型EAは光の剣でドクロイドのコアを破壊した。破壊されたコアは海と同化するように消える形で浄化された。
「…皆さんお疲れ様…。それでは戻りましょう。」
マキュリーナは二人を労い、一行は元いたアクアポリス最深部に戻った。
「グウレイア、二人に例の物を授けてあげて。」
「ふふっ…、わかりました。」
マキュリーナはグウレイアに先程の戦いで活躍した二人に例の物を授けるよう促した。グウレイアが両手を左胸に当てると左胸が青い光を放ち、そこから二つの雫の形をした青い紋章が現れた。
「あなた達にこの『雫の紋章』を授けます。これでいつでも水属性の加護を受けられます。あなた達が元の世界で水の力をどう扱うのか拝めないのは残念ですが、あなた達ならきっと活かせると信じています。」
グウレイアは雫の紋章をシャルロットとクーリィに授けた。
「エンブレムありがとよ!大事にするぜ!」
「とっても綺麗な紋章ですね。生涯の宝と致します。」
二人は感謝した。すると、グウレイアの胸から七色の光が発生した。
「どうやら別れの時が来たわね。それでは、あなた達に水の加護を。」
「…アタシ達に水の加護をって何だ?」
マキュリーナの変わった挨拶にシャルロットは戸惑った。
「この世界の挨拶だと思います。なら…、マキュリーナさん、グウレイアさん。貴方方にも光の加護を。」
クーリィはフォローすると同時に、ブルドラシルの別れの挨拶をした。
「ふふっ…、ありがとう…。」
マキュリーナも適応力のあるクーリィに笑顔がこぼれた。間もなくグウレイアがシャルロットとクーリィを胸に抱くと二人は七色の光に吸い込まれて元の世界に戻っていった。
「…機装兵…、このブルドラシル全体で量産されたらブラックエレメントで溢れかえりそうね。でも、そうならないようにするのがわたし達国境なき騎士団の務め。グウレイア、あなたをはじめ全てのクイーンガーディアンがEA化して戦う必要のない時代であって欲しいとわたしは思うわ。」
マキュリーナは別れた二人から聞いた機装兵について思い起こし、自分達の務めを再認識し、強大な力を使う必要のない時代である事を望むとグウレイアに語った。
「ええ…、マスター…。ふふっ…。」
グウレイアも笑みを浮かべて答えた。
元の世界に戻ったシャルロットとクーリィが雫の紋章でどんな活躍を見せるのか…、それは別の物語。
現在執筆中の『レインボーボンズ』シリーズ第1作「将軍王のココロザシ」もご愛顧頂けたら嬉しい限りです。
ちなみに、「将軍王のココロザシ」にもマキュリーナとグウレイアにドクロイドも登場しますので、本作との違いを確かめるのも一興だと思います。