ある光景を目の当たりにした人の話
この小説は残酷な描写が含まれております。閲覧は自己責任でお願いいたします。また、後書きには本編に関する重大なネタバレが含まれています。本編読了後、お読みいただけるとより楽しめます。
実は俺さー、この前線路に落ちた人見たんだよね。
そうそう、あの、ニュースにもなったやつ。目の当たりにしちゃったからさー、もう手がめっちゃ震えてんの。
体バラバラになっててさ、マジやばかったわ。あんな風になるんだな、人間って。
……ごめん、気分悪くしたよな。なんかもう、誰かに話さないと頭おかしくなりそうでさ。夢にまで出てくるんだよ。
……ありがとう、心配してくれて。元気出たわ。
それより、もうすぐ夏休みだよな。今度泊まりに来いよ。親いないし。せっかくの夏休みだからさー楽しもうぜ。徹夜でゲームとかさ。はいはい、宿題もやりますよー。
次の日もどうせ暇だろ? なら終電ギリギリまで大丈夫だな。うちから駅近いし。
……帰り? ああ、そうだよな。今の話聞いたらそりゃ一人は嫌だよな。うん、わかった。駅まで送るよ。
あそこ暗いし、夜は人めっちゃ少ないから怖いよな。……大丈夫だって! 電車来るまで一緒に待っとくから。それより乗り遅れないようにしろよ? お前結構時間にルーズだからな。あはは、そんな怒んなよ。
帰れるといいな、終電で。
【ネタバレ注意】
恐らくほとんどの方がお気づきかと思いますが、人身事故は自殺ではなく他殺です。では、誰がやったのか。
犯人は主人公(本編でずっと喋っていた人)です。以下本文の解説です。
「線路に落ちた人」これは本人が飛び降りて自ら命を絶ったのではなく、誰かに落とされたという暗示です。「手がめっちゃ震えてんの」主人公が突き落としたことを示唆しています。「帰れるといいな、終電で」帰すつもりはないでしょう。
あとこれはかなり分かりにくい表現で申し訳ないのですが、「……」とある箇所、あれは話を聞いてくれている相手の怯えた表情や心配している様子を見て主人公が楽しんでいる様を表しています。最低ですね。
ここで皆様は疑問に思うことがあると思います。何故主人公は捕まっていないのか。実は突き落とされた人物は主人公と同じ学校でいじめられていて、関係者は自殺だと疑わなかったため捕まっていないという裏設定が存在します。あと深夜で人が少ない、かつ死角からだったため目撃者がおらず、他殺だと思われなかった……などの理由でまんまと追っ手を逃れたのです。
もう一つの裏設定として、主人公は自分に疑いの目を向けられさえしなければ殺すのは誰でもよかった、という愉快犯です。自分で書いておいてなんですが、本当に最低ですね。
本当は雰囲気だけの小説だったのでいろいろ抜けているところがありますが、その辺は目を瞑っていただくか皆様の解釈でお楽しみください。
この解説を理解したうえでもう一度本編を読んでいただくとまた違った視点で楽しめるかと思います。ここまで読んでいただきありがとうございます。よろしければ一言だけでも感想等書いてくださるととても嬉しいです。ではまた別の物語でお会いしましょう!