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一週間の恋  作者: 津田幸子
1/1

夜逃げまで一週間、それまでに恋を実らせられるか

プロローグ

「あ、寝ちゃってた」

新堂美宇しんどうみうは深夜に目をさました。スマホを見る。

「日曜日、2時かあ。。。LINEはやめておこう。ちょっとトイレ行こうかな」

美宇は二階の部屋を出て一階のトイレへ降りて行った。

が、トイレへ行く廊下の途中のリビングから話し声が聞こえた。

母の声が言った。

「あなた、倒産って、どういうことですか。」

父の声が答えた。

「不渡りが出そうだ。この家も抵当に入っている。逃げるしかない。」

母が思わず言った。

「逃げるって。。。どうするんですか?」

父の声が答えた。

「一週間後の来週の日曜日の深夜にこの家から出る」

たまらず美宇はリビングに入った。

「お父さん、この家出るって本当?」

美宇が叫ぶ

母が叫んで言った。

「美宇、だめよ、寝ていなさい。」

父は美宇を見てあきらめたように言った。

「美宇、起きていたのか。。。。まあ、お前にも言わなくてはならないことだからな。」

母は止めた。

「あなた、そんな。」

だが、父は続けた。

「美宇も高校生だし、美宇にも言わなくてはならない。美羽、お父さんの会社が倒産する。この家も抵当に入っている。来週の日曜日にはこの家から出る。それまでは、だれにも言わず、普通に過ごしてくれ。このことは誰にも言わないように。いいね。」

美宇は衝撃を受けた。

「そんな。。。もう、学校にいけないの?」

父は美宇を見て言った。

「そうだ。申し訳ないが、一週間後の来週の土曜日深夜、この家から出る。荷物は最小限だ。この一週間は普通に過ごすんだぞ。いいな。」

美宇は言葉も出なかった。

「。。。。。」

そして泣きながらリビングを出た。

自分の部屋に戻ってベッドで泣いた。

「どうしよう、どうしよう。。。」


Sunday

そして眠れないまま、朝が来た。

美宇は思った。

『今日は思い出の場所を巡っておこう。女子高のみんなと遊んだ場所を巡ろう。よく行くSCショッピングセンターでみんなで食べたアイスを食べよう。アイスを食べたら、みんなで花火をした海岸に行こう。』

美宇はざわざわするSCに行き、アイス屋の前に立った。

美宇は店員に言った。

「ストロベリーアイスください。」

店員は

「はい。」

と言うと、アイスを渡してくれた。

美宇はストロベリーアイスを受け取るとざわざわするSCを出て海岸に行った。波音がする。

美宇は海岸で一人で泣いていた。。

すると男の声がした。

「なんだよ、お前泣いてんのか?」

「きゃ。」美宇はびっくりして悲鳴をあげた。

すると学生服を着た男がびっくりしていた。

「そ、そんなに悲鳴上げることないだろ、泣いてるからどうしたのかと思っただけだよ。」

それを聞いたが、美宇の涙は止まらなかった。

男は気の毒そうに言った。

「そ、そんなに泣くなよ。頭なでてやるよ。ほら、いいこ、いいこ。」

美宇は、びっくりして泣き止んだ。

男はうなずいた。

「良かった、泣き止んだ。俺、女が泣いてると、見てらんねえんだよ。じゃあ、もう、泣くなよ。」

男は美宇のそばを離れた。

美宇は、

「あ、待って。」

と言ったが男はそのまま去っていった。


Monday

学校の放課後、チャイムがなった。

美宇の親友の真弥まやが美宇に話しかけた。

「美宇、今日はどうしたの?なんかへんだよ?」

美宇は真弥に聞いてみることにした。

「う、うん。。。真弥は親友だし、演劇部で有名人で顔が広いから相談にのってもらえる?」

真弥は力強く言った。

「もちろん!なんでも言ってよ。」

美宇は思い切って言った。

「あ、あの、お世話になった男の人がいてお礼を言いたいんだけどどこのだれかわからないの。」

真弥はちょっとびっくりして聞き返した。

「え?それって、その男の人が好きってこと?」

美宇はもじもじした。

「そ、そんなんじゃないけど。。。お世話になったから。。。」

真弥が詳しくきいてきた。

「お世話になったって?落とし物届けてくれたとか?」

美宇はごまかした。

「う、うん、まあそう。。。」

真弥はちょっと首をかしげたが、つづけた。

「ふーん?で、特徴は?」

美宇は特徴を言った。

「青いブレザーの制服で、袖に緑の線が3本入ってた。あと髪が赤かった。」

真弥はびっくりした。

「え¨それってバカ校の制服じゃん、しかも髪が赤いって。。。やめときなよ。」

美宇は真剣に言い返した。

「でも、お礼が言いたいの!真弥お願い!」

真弥はためいきをついて

「まあ、一応調べるけど。知らないよ?」

と一応引き受けてくれた。


Tuesday

次の日の放課後、チャイムが鳴った。

真弥が美宇に言った。

「一応調べたけど。。。」

美宇は飛び上がって喜んだ。

「本当?ありがとう、さすが真弥、頼りになる!」

「でも教えたくないなあ。。。」

真弥は言いしぶった。

美宇は必死に言った。

「そんなこと言わずに教えて!お願い!」

真弥はため息をついた。

「わかったよ。やっぱりバカ校の赤鬼ってあだなでけんかっぱやくて有名らしいよ。本名は真田寅吉だって。」

美宇は真弥にだきついた。

「真弥、ありがとう、学校まで行ってみるよ!」

真弥は美宇をひきはがして止めに入った。。

「や、止めなよ、どんな目にあわされるかわかんないよ!」

「でも行きたい!行く!」

美宇は叫んだ

真弥はまたため息をついたが仕方ないというように言った。。

「でも、今日は止めなよ。赤鬼、今日はなんか学校に行かずに喧嘩してるらしいよ。私も今日は演劇部活休めないから。明日一緒に行こう。」

美宇は真弥の両手を握った。

「わかった、真弥、ありがとう。」


Wednesday

バカ校では、ざわざわ男達が騒いでいた。

男たちがざわざわ言っている。

「校門の前に女、女がいるぞ。しかもけっこうかわいい娘2人も。」

「あの制服、超お嬢様女子高の制服じゃん?一体なんでこんなバカ校に用があるんだ?」

「さあ?声かけてみる?」

一人の男が話しかけてきた。

「あんたら、こんなとこで何してんの?」

美宇が叫んだ。

「真田寅吉さん、赤鬼さんに会いたいんです!」

話しかけてきた男が飛びのいた。

「え¨赤鬼の関係者?手だせねえ。」

隣にいた男が言った。

「赤鬼よんでくるか?」

美宇が「お願いします!」と叫んだ

その男が去ってしばらくした後。

赤鬼がガンをとばしながらやってきた。

「呼び出されたから来たぞ!今度はどこ校だ?・・・って泣き虫女じゃん。。。」

美宇は真っ赤になりながら言った。

「あの時はありがとうございました。私、新堂美宇って言います、お礼がしたくて。」

赤鬼は困惑しながら言った。

「いーよ、さっさと帰れよ。」

真弥が言い返した。

「ちょっとその言い方ないんじゃない?せっかく来たのに。」

「真弥、止めて。」

美宇が言った

すると赤鬼が言った。

「こんなとこに女二人でいたら男の餌食だぞ。さっさと帰れ。」

「ふーん、そういうことか。案外いいやつかも?」

真弥が納得したように言った。

美宇は必死で言った。

「で、でも、お礼したくて。。。アイスおごらせてください。お願いします。。。」

言いながら美宇は泣きだした。

赤鬼は頭を抱えた。

「あーまた泣くー。。。ショーがねー、アイス食ってやるから泣くな。」

「は、はい。。。」

美宇は泣き止んだ。

赤鬼は仕方なさそうに言った。

「でも、今日は仕事の大事な打ち合わせあるから、明日な。ここは危ないからSCのアイス売り場で放課後待ち合わせな。」

「は、はい!ありがとうございます。」

美宇は赤くなりながらも懸命に言った。


Thursday

ざわざわと騒がしいショッピングセンターのアイス売り場に二人はいた。

美宇が店員に言った。

「ストロベリーアイスください、2個。。。あ、赤鬼さんは何が良いですか?ストロベリーはおきらいですか?」

赤鬼はちょっとたじろいだように言った。

「赤鬼さんか。。。まあ、いっか。俺はラムレーズンかな。」

美宇はうなずいた。

「あ、わかりました。すみません、ストロベリーアイスとラムレーズンください。」

店員は「はい、わかりました。」と言い、アイスを差し出した。

店員「はい、どうぞ。」

美宇が受け取った。

「あ、ありがとうございます。赤鬼さんこれ。」

赤鬼はちょっと美宇の勢いに押されながら

「お、おう。」

と言ってアイスを受け取った。

美宇が赤鬼に話しかけた。

「ラムレーズンおいしいですか?私ストロベリーばっかりで。一口だけ食べさせてもらってもいいですか?」

赤鬼はたじたじして言った。

「え、や、やめろよ。。。」

そんな二人を柱の陰から見つめる怪しい人影がいた。その男はつぶやいた。

「あれが赤鬼のおんなか。」


Friday

次の日の放課後。バカ校校門前に美宇は立っていた。。

美宇に話しかけた男が言った。

「また、あの女いるよ。」

するともう一人の男が言った。

「青鬼に知らせないと。」

最初の男がびびった。

「え、そんなことしたら赤鬼がどんなに怒るか。。。」

もう一人の男が言った。

「でも、知らせないと俺が青鬼に目をつけられるから。。」

最初の男は完全に引いていた。

「お、おれはしらねーよ?」

すぐに青い髪の怪しい男がやってきて、美宇に話しかけた。

「おまえが赤鬼のおんなだな。」

美宇は真っ赤になった。

「え、ま、まだそんな。。。髪青いですね。赤鬼さんのお友達ですか?」

青い髪の男はちょっと毒気を抜かれたように言った。

「は?お、お友達?ま、まあ?な?って調子狂うな」

「てめ、なにやってんだ!」

そこに赤鬼がやってきた。

美宇がうれしそうに話しかけた。

「あ、赤鬼さん、今、おともだち、、、きゃ?」

が、途中で青い髪の男に羽交い絞めにされた。

青い髪の男が美宇をつかみながら、赤鬼に言った。

「このおんな、お前のおんなか。どうしてやろうか?」

美宇は苦しくて言った。

「あ、あの、はなしてください。い、痛いです。」

それを見て赤鬼がバカにしたように言った。

「なんだ、青鬼、人質がないと俺に勝てないか?」

青鬼は目をむいた。

「なんだとー。」

美宇を突き放す。

「きゃ。つ、つきとばさなくても。。。」

美宇は勢いでころんでしまった。

それを見た赤鬼が叫んだ。

「てめー、なにすんだ。」

赤鬼のパンチが青鬼の腹にはいった。そして、二人は殴りあいを始めた。

美宇は驚いて半泣きになって。

「きゃー。けんかは止めてくださいー。」

と二人の間に入り込もうとして泣きながらむかっていった。

「お、おい。。。」

「な、なんだ?」。

と、赤鬼と青鬼は戦意喪失していった。

「ち、このおんな、ちょうしくるう。次こそは決着つけるからな。」

青鬼が捨て台詞をはいて去っていった。。

赤鬼もその背中に言い返す。

「へ、上等だ!」

美宇が赤鬼にかけよった。

「赤鬼さん、大丈夫ですか。」

赤鬼は怖い顔で

「来るな!」とどなった。

「え?」

美宇はかたまった。

赤鬼は硬い声で言った。

「だから、住んでる世界が違うんだって。もう、来るな。わかったな。」

美宇はその言葉を聞いて本格的に泣きだしたが、赤鬼は去っていった。足音が遠ざかる。


Saturday

美宇は海岸にいた。波の音がする。浜辺は浜辺で号泣していた。だが赤鬼は来なかった。


エピローグ Sunday深夜

父が小さい声で言った。

「そろそろ引っ越し屋が来る。」

母がうんざりしたように言った。

「美宇、いい加減に泣き止みなさい。お母さんまで泣けてくるわ。。。」

「は、はい。。。」

美宇は必死で泣き止もうとした。

その時。

男の声がした。

「お待たせしました。引っ越し屋です。。。ってお前、美宇じゃん!夜逃げするのか?」

美宇の顔がパッと明るくなった。

「赤鬼さん!お世話になります!」

その男は、ツナギ姿だったが、赤い髪の確かに赤鬼だった。

それを見た父が騒ぎ出した。

「美宇の知り合いか?どういう知り合いだ?」

赤鬼は軽く流した。

「ちょっと顔見知りです。それでは作業開始します。」

と言ったが、赤鬼は心の中で思っていた。

『こんな、夜逃げするほど困ってるのかよ、そんなんじゃ、これからも目をはなせねえ。。。しょーがねーな。』

美宇はそんな赤鬼の想いは知らなかったが、

『これは、やっぱり運命のよ!』

とほほを赤らめながら赤鬼をじっと見つめていた。胸の高鳴りを感じながら。


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