―序 造花のヒマワリ―
序 ―造花のヒマワリ―
――――ごめんなさい。
――――――ごめんなさい。
ある真夏の薄い夜の中、ただ懺悔する私の声と手の中にあるソレを咀嚼する音だけが静寂の闇に響く。
――――ゴリッ、ごき。
――――――ズズッ、ズズッ、ぐちゅ。
私の身体はあの日から何も感じなくなってしまった。
冷たさも熱さも、そして痛みすらも。
それでも、その手の中にあるソレはとても冷たく、頬を伝う私の涙はとても熱く、胸は張り裂けそうなほどに痛かった。
――――ごめんなさい。
――――――ごめんなさい。
ああ、それでも私はこの激しく渇く飢えを抑えられない。
罪悪感に苛まれながらも、私はソレを喰べることを止められない。
涙を流しながらも小さな小さな肉の塊に喰らいついた。
おかしくなってしまった私の身体。
なのに私の胸の中にはまだまともな心が確かに存在してしまっている。
日々日々弱り朽ちていく私の身体。
徐々に摩耗しすり減っていく私の心。
本当は分かっているのだ。
これはあの日、無様にも生きていたい、生き長らえたいと願ってしまった私への罰だと。
本当は分かっているのだ。
もう、こんなことは止めて惨めに朽ちてしまえばいいと。
――――ごめんなさい。
――――――ごめんなさい。
――――ごめんなさい。
――――――――――ごめんなさい。
ああ、それでも愚かな私は願ってしまう。
今がどんなに暗く冷たく苦しくても。
このまま私という存在ががこの世界から消えてしまう運命でも…。
ただただせめてもう一度。
もう一度あなたに会いたくて…。