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エクストラクリーチャーズ  作者: Crow.Online
2/14

1話 病室にて

 誰か来た。多分佐倉先生という人だろう。時間はあまりかからなかった。いや、時間の感覚が無かった。あっという間だった。

「高見くん、高見くん。目が覚めたんだね。」

「あ・・・う・・・。」

力の無い返事をする。瞼も半開きといったところだろうか。

「いや、いい。無理に返事しなくても。上手く喋れないでしょう。あぁ、良かった。心配していたんだよ。」

俺は頷く。動作が小さくて何もしてないかのように見えると思う。

「恐らく初めましてだと思うけど、あなたの担当医を任されています。佐倉です。」

担当医。佐倉先生。聞き間違いか。担当医と言ったか。

「うぅ、あぅ。」

「ああ。無理に話さなくていいよ。喉を痛めてしまう。」

どうやらここは病院らしい。そうだよな、事故ったんだもんな。

「高見くんはこの、今の状況を知りたいよね。でももうちょっと体力を回復させないと。もうちょっとゆっくりしていなさい。」

その言葉に安心したのか。力尽き、目の前が真っ暗になった。

 

 夢を見た。大学で、二号館の教室で友人達とたわいもない話をしている。友人の一人が食堂に行こうと言いだす。そうか、もうお昼か。今日は何を食べよう。一番無難なAランチかな。献立を見て決めよう。そう考えながら二号館の階段を降りていると、地震が発生した。咄嗟にしゃがむ。周辺を見るといつの間にか友人達がいなかった。俺はひとりぼっちになっていた。気がつくと、車の中にいた。

「!!」

息が荒い。どうやら魘されていたようだ。なんの、どんな夢を見ていたか、忘れてしまった。

「おはようございます。」

自分の目が開いていることに気づいた。まだぼやけているが、女性の声がするからナースさんだろう。すごく久しぶりに日本語を聞いた気がした。それとともに安心した。

「おあ・・よお・・・おざぃますぅ・・・。」

「わぁ!喋れるまでに回復したんですね!ちょっと待っててね。今先生を呼んできますから。」

今まで見ていたぼやけが緩和し、だんだんと晴れて見えるようになってきた。ナースさんが去る間際、ナースさんの後ろ姿が強烈なピンク色に包まれているのが見えた。最近のナース服ってのはあんなにピンク色が強いのか。まるでマッサージ師みたいな。

「おはよう!気分はどう?」

佐倉先生だ。あれ。佐倉先生って女性だったのか。結構渋い声してたから気がつかなかった。

「おはよう・・ござぃます。」

「おお!回復が早いね!もう十分喋れてるじゃない!」

佐倉先生が優しいそうな人で良かった。というか女性で良かった。ありがとう神様。

「まだ立てるかどうかは無理かもだけど。ちゃんと食事が取れるかちゃんとトレーニングしないとね。」

食事。ふと左腕の肘あたりに違和感が。そうか点滴だよな。そういえばちょっとお腹空いたかも。でもその前に。

 佐倉先生に聞いてみた。

「佐倉先生。今は・・何日ですか。」

そう。今は日付が知りたい。あまり休んでいたら大学の、それも日本国憲法の単位が危ういんだ。

「・・・。」

佐倉先生はちょっと躊躇っている。ちょっと言い出しにくいみたいだ。

「11月の6日だよ。」

11月6日。11月の6日!?俺が車で事故ったのいつだっけ!10月だ!

「そうですか・・。ちょっと大学の単位が。」

「・・・。」

佐倉先生は、無言だった。なんか反応してよ。

「あ、でも流石に救済ありますよね。たはは。」

空の笑い。なんの心配をしてるんだ。ただ一ヶ月も休んでただけじゃないか。なんも心配いらない。

「高見くん。」

先生が切り出す。

「落ち着いて聞いてね。」

佐倉先生、どうしたんだろう。改まっちゃって。

「今は平成30年、2018年です。」


 2018年。その年が意外に感じたのは恐らく俺だけであろう。なぜなら俺は1995年生まれでまだ18歳の大学一年生だ。明らかに数字が合わない。何を言ってるんだ、佐倉先生は。

「混乱するとは思ったけども、思ったよりは冷静ね。」

「そりゃぁ、言っている意味がわからないんですもの。」

そうは言ったが意味はわかっている。俺は2013年10月に車で事故を起こし、2018年の11月まで病院のベッドで寝ていたってことだろう?いや、意味わからんな。

「ちょっと血圧が上がってる。鎮静剤持ってきて!」

心臓がバクバクしているが、先生の言う通り思ったよりは落ち着いている。自分でも驚きだ。なぜだろう、多分その手の映画を見すぎて慣れでもしたんだろう。そしてあっという間に鎮静剤を打たれ、俺はまた再び眠ってしまった。まだ寝るのか、俺は。



 時間が経ち、今は治療食を食べている。思ったよりも不味くはない。自分の作る飯よりか、だが。以前の佐倉先生のお話は真摯に受け止めることにした。これから、この先どうすればいいかは、親と相談しないと。っていうか誰からも連絡がないのはどういうことだ?俺は枕元を見ると、そういえば携帯電話がないことに気がついた。

「はぁ〜・・・。」

大きい溜息が出る。どうしたらいいかわからない。体力が回復したら、時期にこの病院から出なくてはならない。帰る場所、自宅のアパート。それと大学も。俺は不安に駆られた。俺はどうなってしまったんだ。

「どうですか、お味の方は。」

佐倉先生がニコニコしながら近づいてきた。

「昨日は驚かせてしまって申し訳ない。」

「いえいえ、別に大したことは。」

いやいや、大したことあるんだけどね。何となく無理してしまった。違うな、佐倉先生を気遣ってしまったんだ。俺は白菜のお浸し、の様な物を口に入れる。チラッと佐倉先生の胸元を見るとネームプレートがぶら下がっていて、『佐倉紀子 都立立河病院』と書かれている。

「高見くんがここを退院する日も近いでしょうね。」

「何日くらいになりますか。」

「ん〜、ごめん。立ち上がって、歩けるようにならないとだから、まだもう少しかかるかな。」

なんだよ。

「それと、高見くんが眠っていた5年間の間に何があったかを説明しないといけないの。」

確かに、それは知っておきたい。親と大学のこととかかな。

「5年前に大規模な戦争があったの。」

!!

「え!!日本がですか!?」

先生は一体何の話をしようというのか。先生は切り出した。


「日本というか、全国、世界が。高見くんにわかりやすく説明すると宇宙人が攻撃してきて、立ち向かったの。」

本当にどうしたんだ佐倉先生。たぶん俺を楽しませようとしているんだ、最近観た映画の話をして。とりあえず、今は話を聞こう。

「そして・・・詳しくは知らないけど、その宇宙人達と平和条約を結んだ。勝ち負けは無しって話で。共に共存しよう、っていう話で。」

なんかすごく現実的な終わり方だなぁ。宇宙から来た侵略者ってのは大抵強力なビームとかであたり一面焼け野原にして圧勝!地球軍は全滅!、というイメージだが。

「ちょっと、難しいなぁ。説明が。」

そうだね、急にそんな話されても誰も付いていけないってもんよ。

「ちょっと・・・紹介したい人がいるの・・。」

ん?

「スローネさん!」

佐倉先生は仕切りカーテンを広く開け、俺の視界は広がった。ここで初めて知るのだが、仕切りの感じを見て自分のベッド除いて横に一つ。向かいに二つ。計四つある病室で、俺は窓側に位置するところにいた。他に病人は、いない。病室のドアが開く。


!!!!!


バ・・・バ・・・バケモノ!!!!!


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