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エクストラクリーチャーズ  作者: Crow.Online
13/14

12話 三人の研究者と一つの機械。ECDにて

 奥へと案内されるとデスクの並ぶ事務室を通り、「第一会議室」とプレートが掲げられた部屋へと押し込まれた。通路には様々なポスターが貼られ、平日ということもあり職員が多く行き来している。

「ちょっとここで待っててねん。」

メガネ男さんはそのまま会議室の扉を閉め、俺は広い空間にひとりぼっちにされた。広い空間といっても、10人くらいが座れる椅子と二つの長机が隣り合わせにされているものが置いてあるくらいで、入り口から一番奥の席は狭くて座りずらそうだ。俺は扉に一番近い、手前に着席した。

「はいはいお待たせ〜。」

大体30代くらいのブラウンジャケットを羽織ったメガネのお兄さんが350mlのお茶入りペットボトルを3つ抱えて入ってきた。もう一人と。

「大樹さん、ちゃんと面接し・・あ。」

もう一人、なかなかべっぴんな方が入場してきた。

「したしたぁ〜。ね!高見さん!」

大樹さんと思われるメガネさんは俺に口を合わせてもらいたそうだ。仕方ない。

「はい。」

「そうですか・・。失礼しました。私は伊東詩織です。この環境保護センター生物保護係を担当しています。」

「あ、僕もね!」

ピクッと伊東さんが反応する。おいおい、バレたいのか。ってかもうバレてんねこれ。

「僕も生物保護係の担当でね。伊藤大樹って言います〜。お見知り置きを〜。」

胸に付けた名札指差しながら伊藤さんは自己紹介をした。ややこしいな。どっちも苗字は「いとう」なのか。男の方の「いとう」さんは奥の窓側の席に座るないなや、ペットボトルを横にコロコロこちらへ転がし、渡してきた。ありがとうございます。

「生物保護係はもう一人いるんだけど、休憩行ってるから外してます。」

生物保護係は三人しかいないの!?

「そのとぉ〜り!なぜならこの係は今年から創設されたからな!出来立てホヤホヤ〜!」

「私達は今年から特定エクスチャー生物の捕獲と駆除のためだけの仕事を一任されているの。」

「それに研究もね〜。」

女の方の「いとう」さんは俺と対面の席へ着いた。伊藤さんと大きな距離を空けて。そしてこれから、業務内容の説明が始まる。


 一時間が経過した。質問をする時とってもややこしいので、俺も伊藤さんのことを「大樹(たいき)さん」、伊東さんを「詩織さん」と呼ぶことにした。

「それでぇ、僕はEC研究でぇ!」

大樹さんは雑談をしている。というか、この一時間全くもって業務内容を聞いてねぇ!

「大樹さん、そろそろ本題に入らないと・・。会議室も14時から空けなくちゃいけないし。」

「あ〜らら、そう?じゃあ場所を移そうか!」

そんなこんなで、この生物保護係の拠点、『エクストラクリーチャーズ・ドーム』へと場所を移動することになった。今日は面接して、それで終わりだと期待していた俺は馬鹿だった。『エクストラクリーチャーズ・ドーム』、略して『ECD』は、この環境保護センターを訪れた際に見えた茶色いドームのことであった。近くで見ると真新しい。きっと最近できた施設なのだろう。

 第一会議室での一時間は、この係の役割を詩織さんが五分語り、合いの手で大樹さんが相槌を打っていたが、次第に大樹さんが話を脱線していくものだから、詳しくは知ることができなかった。だが、この人たちを知る良い機会になった。はじめに、大樹さんは、国公立の四年制大学理学部生物学科を卒業後、10年間をフリーターとして過ごし、食扶持(くいぶち)が無くなったため、目に付いた求人に応募、それが地方公務員試験だったようで、この生物保護係に飛ばされたようだ。次に詩織さんは、私立の有名四年制大学理学部数学科を首席卒業後、市役所試験に合格。昨年辞令を言い渡され、こちらへ異動となったようだ。

「僕としてはいいけどねぇ。不思議な生物を見て回るだけでお金もらえるし。」

「大樹さん。都庁に提出する報告書、締め切り来週ですからね。

「変なこと思い出させないでよぉ。」

何より、良い人たちでよかった。俺は一体ここで何をすればいいんだろうか。

「着きました。出勤するときはここから入ってね。」

「わかりました!」

「ちなみにここ、24時間空いてるから。好きな時に来ていいんだよぉ。」

大樹さんはニコニコしている。不気味なほどにニッコリだ。

「あぁ、お帰りなさい。」

と、ドーム内から声がした。そこにいたのは昼休憩後であろうエクスチャー職員だ。

「あ、こちらディン!」

「よろしくお願いします!」

ディンさんはちょっと驚いた様子でこちらを見ている。ちょっとして口を開いた。

「あ、どうもです・・。もしかして、アルバイトの高見さんですか?」

「そよ〜。仲良くしてねぇ〜。」

ドームに入るとまず目の前には事務室があり、隣には窓越しからでも分かる体育館のような、広い空間が見られた。大樹さんはジャケットを自身のと思われるデスクの椅子に掛け、

「唯一の現場班同士でぇ。」


 いきなり備品を支給された。まず、デスク。マイデスク。俺の机。引き出しが4つ付いていて、一つ開けてみると小さな消しゴムが現れ、遅れて短い鉛筆が奥からコロコロと顔を出した。

「これ、作業着です。」

幼稚園、小学校の時に遊んだ青緑色のねんどの様な色の作業着。サイズはM。ちょうど良いサイズだ。

「高見君、腕時計は持ってるぅ?」

そういえば、持ってないな。

「必須だから・・、じゃあこれ!」

ちょこんとした可愛らしい腕時計をもらった。なんだかよくわからないヘンテコなキャラクターが描かれている安価そうな時計だ。

「靴は別に自由だし〜、あ、軍手はここから取ってね!後はぁ・・、作業着!着替えはそっちのねぇ!」

そう言いながら大樹さんは消えていった。詩織さんは別に追わなくて大丈夫だよってジェスチャーしてる。そうしよう。俺はデスクに座ると、ディンさんが手を差し出した。どこかで見たことのあるものを持って。

「この仕事で、現場で、最も重要なものです。絶対に失くさないで。肌身離さず。」

「これは・・。」

保護ネットボックス全サイズ。

「いやいや、それほどそれは重要じゃないよぉ。」

大樹さんが帰ってきた。おかえりなさい。

「いえ、係長。これが無ければ生態を調べられないのですよ?」

「まぁまぁ、それよりも自分の命の方が大事だって〜。『いとう』さん。あれを。」

「あなたも『いとう』ですよね?はい、高見さん!」

「・・・。」

なんだこれは。ズッシリと重い、キューブ型の機械のようなもの。

「名前を付けてあげないとねぇ!」

「名前は必要ないです!それに品番で呼べばいいじゃないですか!」

「高見さん。中央のボタンを押してみて。」

大樹さんとディンさんがわちゃわちゃしている中、詩織さんに言われ、ボタンを押す。ボタンといっても四方八方共タッチパネルのようになっているので、薄く映し出されている円を触れた感覚だ。というか大樹さんがここの係長なのね。年長だからかな?そう心の中で語っていると、キューブは段々と形を変えていく。

「・・対EC用捕獲ロボット。」

「AECR-7ってのが・・・。」

「かっこいいよぉ!かっこいいよねぇ!!」




 キューブは姿を変え、四足歩行のトカゲのようなフォルムになった。

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