呪われた青年
どうも、少し小説の情報をいじったりしました
「その顔の紋様は何の呪いなんだい?」
俺の表情は和やかなものから険しくなっていく。
「ずいぶんと物知りなんだなカルロス、どこでそれを?」
この男は商人だけで生きているような人間ではないと予想はしていたがいったい何者なんだろうか。
カルロスは疑いの目を向け続けている俺を見ている。何を考えているのかほんとにわからない、質問に答えるべきなんだろうが彼はどこまでこのことを知ってるんだ?
悩み続けているとカルロスはその様子を見かねたのか真剣な表情を崩してくれた。
「別に君に不利益になるようなことはしないさ、でも教えてくれると嬉しいな友好的に関わっていきたいからね、そうだ彼女を連れていくための取引として教えてくれないか?」
カルロスがこちらに敵意がないことを告げてくれているしここまでいってくれているならそれを受け入れることにしよう。
俺は檻の中でつまらなさそうにしている彼女を見ながら。
「わかったよこの呪いや旅に出る目的についてちゃんと教える、まあここじゃなんだし彼女も連れて部屋で話さないか?」
俺がカルロスの要求に答える意思を伝えるとカルロスは笑顔で礼を言ってくれた。
「ありがとう、気になっているだろうし彼女がここにいる理由も教えよう。」
彼はほんとになんでも見通しているようで驚いた。
地下から移動して部屋に戻り3人でテーブルを囲みながら話を始める。
「それでどんな所から話を聞きたいんだい?」
カルロスは顎に手を添えて少し考えている。
考えがまとまったのか手を元に戻して聞いてきた。
「まずは君のことを教えて欲しい、呪いを身に受けて生きる前のことを」
「そんなことでいいのか?」
「ああ、君がどんな風に育ったのかが知りたくてね」
カルロスの質問が呪いではなく自分に向かってきて少し驚き聞き返してしまったがカルロスは笑顔で頷いていた。
「わかったよ」
俺はカルロスに自分の生まれと呪いを受けるより前の暮らしや出来事を話した。
「俺の生まれた場所は王国の南にある辺境の農村だよ。なんてことのない静かな田舎で母親と暮らしていたんだが父親はいなかった。母に聞いてみても詳しくは教えてくれなかったな、でもいずれ分かるとも言ってたな。口うるさくされたりした時もあったけど手伝いや気遣った時に見せてくれる優しい笑顔がほんとに綺麗だった。毎日畑仕事なりいろんな手伝いをして忙しくはしてたけど母の優しさを感じながら日々を過ごすのが本当に幸せだったよ」
「シド、君の優しい雰囲気は母親からの賜物だね愛されていたのが伝わってくるよ」
「そうかな?でも母によくあなたは優しい子だって言ってくれてたしその通りなのかな。まあ呪いを受ける10歳になるまではその生活だった、母と静かに暮らせるならそれでいいと頑張ってただけだよ」
自分のこれまでのなんてことの無い部分の話を伝えたがカルロスの表情は満足気だった。こんな話だけで良かったのだろうか。
「ありがとうシド、君の人物像がよく知れて良かったよ」
「こんな話だけで本当に満足なのかカルロス?」
「ああ満足さ、実は呪いより君のことを知りたかったんだ」
表情と同じく満足してくれたようで良かった。
そして約束していた彼女の話をしてくれた。
「それじゃあ彼女について話してあげよう。」
「実は彼女は奴隷として連れてこられたわけではなくてね、君もよく関係しているだろう前の騒乱でここに引き取られたんだ。この付近の森にいた部族から声をかけられてね彼らから直接お願いをされるとは思わなかったよ。」
カルロスから聞いた彼女のことについてはとても興味が出てきた。ダークエルフは人との交流があまり無いし彼らのほうからそんなことを頼まれるのは珍しい、だが騒乱が関係しているとは。
「当時の王国の混乱は酷かったしダークエルフの子供は森から出るには危険が多いからね、うちで面倒見るのと同時に安全を確保したいって街に彼らが来てね軽い騒ぎが起こってたよ」
当時のことを笑いながらカルロスが教えてくれた。本当に彼の正体がますますわからないがまあいいか。
「まあこんなところかな、彼女は腕もいいから旅に連れてくにはちょうどいいだろう連れて行ってあげてくれ」
なぜか彼女を連れていくのをお願いされてしまったがまあこっちも願ったり叶ったりなので快く引き受ける。
「わかったよカルロス、ありがとう」
部屋から出ていき玄関で見送りをしてもらうことになったがそこで旅の目的を話すのを忘れていたのに気づいたのでカルロスに旅の目的地を伝える。
「カルロスごめん、旅の話をするのを忘れてたよ。とりあえずこの街を出たら街道沿いの村を経由して山を越えるルートで王都に向かうことにするよ。王から招待状もあるしな」
「王から招待なんてうけてたのかい?それが1番驚いてるんだがまあいいか山越えはいい経験になるだろう旅の無事を祈るよ」
カルロスは俺が伝えたことに苦笑しながらも見送りをしてくれた。
「ありがとう、また会うのを楽しみにしてるよ」
俺は軽くカルロスに礼を言って彼女を連れて建物を出ていった。
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シド達が出ていった建物で見送りを終えたカルロスが静かに息を吐く。
「ふぅ…やっとこの場所から出れるね僕はこのまま王都に向かうとしようかな、やっと向こうに戻れるし家で待ってる彼女に会えるなあ」
王都に向かうことを考えると王都に構えている家に待たせている人物を思う。
「彼女に会えるのもそうだけど、それより王と話をするべきかな彼のこともあるし」
それからカルロスはシドから聞いた故郷での少年時代の話を思い出しながらすこし考えた。
「呪いを持つ者シド、あの騒乱以来久しぶりに聞いた名前、あの時に見かけてから8年くらいは経ったけど立派に成長してて驚いたなあ」
カルロスはシドのことを話に出ていた騒乱の時に知っていたがシドは覚えていなかったようだ。
(呪いを受ける以前のことを初めて知ったけどそれからは過酷な生活を耐えてきたんだろうなあ、いずれ王都で会うのが楽しみだなあ)
これからまだ先になるであろう再開を楽しみにしながらカルロスは1人静かな玄関で呟く。
「シド、君はいい冒険者になるよ」
忙しくなってきたので続きはもっと遅くなると思います




