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王様と話そう

◆ 王の間 ◆


 帰る気満々で踵を返したら、なんか首筋に鋭いのがある。刃です。毎日、心を込めて研いでそう。二刀流が刃を抜いて、客人を脅してきてる。さっきまで王様の近くにいたのに、瞬間移動としか思えない。


「陛下の話は終わっていない。目に余る態度だぞ」

「そうなんですか。じゃあ、聞きます」

「……これはどういうつもりだ?」

「脅かしてくるからですよ」


 イヤーギロチンの刃が二刀流の首を貫かんばかりに迫っている。私に危険が迫った場合は守ってほしいと願っているからね。首の皮と肉が繋がっていられるのは、二刀流が寸止めしてくれたおかげだ。


「よせ、ライナス」

「はい……」


 振り向くと、二刀流が刃を引っ込めてくれた。同時に私のイヤーギロチンも大人しくなる。王様、止めるの遅いよ。


「その少女は私の客人だ。二度はないぞ」

「申し訳ありませんでした。以後は謹んで独房に籠り一ヶ月ほど正座のまま、口にするのは水のみとして猛省します」

「いや別にそこまでせんでも」

「いえ、私の未熟な精神性が招いた不始末です。これではロイヤルガードの名を汚したも同じ……」

「おぬしのそういうところが面倒だから、それこそ猛省せよ」

「申し訳ありません。以後は」

「本当もういいから」


 王様が根負けした。なんだ、あの二刀流ことライナス。面倒すぎる。すごい沈痛な顔をしているし、生きていて疲れないのかな。


「……コホン。では話を戻そう。専属とはいうが、活動は今まで通りで結構なのだ」

「何が違うのですか」

「大雑把にいえば、こちらからの依頼を引き受けてもらえればそれでよい」

「それはつまり、戦争をする場合に傭兵として駆り出される可能性もあるってことですか?」

「……時と場合だな」

「正直ですね。改めてお断りします」

「戦争はともかく、ギルドの依頼とは比較にならんほどの報酬と待遇を用意するつもりだ」

「戦争の可能性は否定しないんですね」


 絶対に戦争はない、なんて言い切られなくて安心した。綺麗事とおためごかしで話を通すつもりなら、無言で帰ってたところだ。

 それはそうとライナスの瞼がピクピクしているし、相当我慢している。こっちは腹を割って話しているんだから、キレないでほしい。


「仮に報酬が一生遊んで暮せる額だとしても、お断りします」

「まだ信用に足らぬと?」

「信用じゃなくて、少しでも縛られたくないからです」

「縛る気はないのだがな」

「私がそう感じるかどうかです」


 ここまで言えばさすがに諦めてくれると思う。顎を撫でながら、王様は少しだけ考えている様子。


「そうか、わかった。だが気が変わったら、いつでも迎える準備はあるとだけ覚えていてほしい」

「わかりました」


 諦めてくれた。話がわかる王様で本当によかったな。所属するのは冒険者ギルドだけで十分だ。さてと、せっかく来たんだから少し話しておきたいことがある。


「王様、今度は私からのお話を聞いてほしいです」

「申してみよ」

「この王都には温泉施設もありますし、人々の暮らしを見れば王様がすごく立派にお仕事をしているのはわかります。だけど、私としてはもっと小さいところに目を向けてほしいんです」

「小さいところだと?」

「この王都、貧困者も割といますよね。あの人達を救済しないんですか?」

「難しい課題だ。私も神ではないので、今すぐすべての民は救えんよ」


 ジェシリカちゃん一家が住んでいる集合住宅には、他にも貧しそうな人がたくさんいた。でもこれこそ綺麗事だし大した返答は期待していなかったから、現実的な返答で何より。あれに対してどう捉えているのか、ちょっと気になっただけだ。


「それとゴーレムの件ですね。あれって隠蔽ですよね?」

「そうだ。だがそれが最善と判断した。国にとってのな」

「そうですか。それなら私から言うことはないですね。お誘いの件、ありがとうございました」

「いいな、実にいい」

「はい?」

「一国の王からの勧誘を物怖じせずに断り、計るとも取れる発言。更にはライナスを退けるほどの実力。にわかにだが、手元に置いておくには危険とすら思える。何をしでかすかわからん怖さがな」


 いきなりウサギの耳が伸びて刃になるような奴だもの。そういう意味じゃないのかな。こんなついこの前まで引きこもってた小娘に、そんな危険性があるとは思えない。でもこれで王様が私から遠ざかるなら、ラッキーこの上ない。


「では私はこれで失礼します」

「待て、最後にもう一つだけ聞いてほしい」

「聞きます」


 ちゃんとウサギ耳を動かして、聞いているという覚悟を見せる。意味があったのかはわからないけど、ライナスの目が血走っている。我慢しすぎて大変なことになってた。


「失踪事件のあらましは聞いた。モノネよ、そのツクモという街だがな……恐らく先代が携わっていたはずだ。結果として滅びゆく運命となった件について、当代ではあるが私から謝罪させてほしい」

「え、王様が頭を下げるんですか。それはちょっと」

「よいのだ。先ほどの貧困層も含め、私には成さねばならん事が山ほどある。だが、成せていない。神ではないが、王としていつかは救わねばならんのだ。そして救えなかった責任がある。たとえ先代の時代だろうとな……」


 ひときしり言い終わった後、それが王族として生まれた者の使命だと小さく付け加えた。私には国だとか王だとか、ましてや政治のことなんてわからない。

 だけど、この王様は自分で落ち度と感じた部分について反省して謝罪した。あの狂った魔術師二人という前例があるせいで、そんな当たり前のことで感動できてしまう。これがもし私を篭絡させるための方便だとしたら、お手上げかな。そうとは信じたくないけど。


「誘いは断られてしまったがこれからも我が国に貢献してもらえるならば、それはありがたい事だ。モノネよ、時間を取らせてしまったな」

「いえ、こちらも貴重な体験をさせていただきました。では」


 ライナスの視線が突き刺さりまくるけど、私は気にしないで王の間から出ていく。ロイヤルガードって休日はどうなってるのかな。うっかり非番の日に会ったら、襲いかかってくるかもしれない。まぁアスセーナちゃんならきっと「モノネさんなら勝てますよ」とか言ってくれるでしょう。友情とはそういうもの。


◆ 王都 冒険者ギルド ◆


「ライナスさんですか? 彼は遠方の国で開かれた闘技大会でベスト4に入ったほどの実力者ですよ」

「そ、そうなんだ」

「戦闘Lv60を超える魔物から王様を守り、瞬く間に討伐したのは割と有名ですね。私でもあの人にはちょっと気を使いますよ」

「ほ、ほう」

「モノネさん、まさかケンカを売ったんですか? 大胆ですね……」


 なんでさ。なんで驚かれてるのさ。あの人がそんなに強いなら言ってほしかった。アスセーナちゃんでも気を使うってことは、少なくとも60以上か。同時にアスセーナちゃんもそれ以上。いや、そんな情報はどうでもいい。


「大会では、あの"無敵の英雄"と結構いい勝負をしたそうですよ。冒険者の皆さんでも、知ってる方は多いでしょうね」

「あぁ。それにロフォール家といえば、"剣聖"の血を引くとも言われているな」

「生まれながらにして剣に愛された名家だなんて、羨ましいよな」

「知ってるか? 男前だし、女のファンが結構いるんだぜ?」

「マジかよ! いいところしかないな! 少しくらい、分けてくれないかな……」


 さってと、早速ツクモポリスに新しい住人を呼ぼう。すでに住人第一号は決まってる。快諾してくれるかわからないけど、少なくともあそこよりはマシなはずだ。まずは外部からの住人を確保すれば、物霊達も喜ぶはず。それからはお店だとか、地盤も固めないといけない。


「モノネの姉御ォ! 戻りやしたぁ!」

「イルシャちゃん、レリィちゃん。ツクモポリスの街を経由すれば、ランフィルドに帰れるよ」

「そうさせてもらうわ。さすがに長居しすぎちゃったもの」


 なんとか一家が帰還されたようで。すっかり忘れてた。


「水臭ぇや、姉御ォ! ツクモポリスの住人がほしいなら言って下せぇ! ここに大勢いますぜ!」

「なんでそこまでバレてんの」


 こんなのを呼び込んだら、街の治安が心配すぎる。ていうかなんでバレてるのさ。


「ツクモポリスをよろしくぞよ!」

「おう! 絶対遊びにいってやるよ!」

「なんだこれ、かわいい」


 あ、はい。街そのものが勧誘してたんだね。街の意思ならしょうがない。すでに冒険者達が取り囲んでちやほやしてる。異質極まりないんだけど、案外適応するんだね。


「ライナスさんはすごく真面目で王様への忠誠心が強いんですよ。悪い人ではないんですが、王様への無礼を働いた相手を半殺しにした逸話もありますね」

「もうその話はいいから」


 私はもう流したんだ。流せば新しい今日がある。悪い人じゃなかったら、そうそう相手を半殺しにしない。そんな突っ込みすら我慢して、流したんだ。


◆ ティカ 記録 ◆


ライナス それほどの実力者といえど マスターに害するならば

こちらも 歓迎しなくては ならなイ


かんげいするなら つくもぽりすに よぶぞよ


やめろ 介入するんじゃなイ

これは 僕の中での 記録


ぶつれいとしては わらわのほうが まさっているぞよ

たわむれとしては おもしろい

これからは わらわも きろくを きざませて もらうぞよ


おのれ 絶対に 叩き出してやル


引き続き 記録を 継続

「ツクモちゃんってさ、なんで子どもなの?」

「子どもではないぞよ。わらわは街の意思……ツクモなり」

「でも子どもだよね。あ、そうか。物霊としてはまだ子どもってことかな」

「わらわは街の意思にして万物の」

「尊大な振りして、わけわかんないこと言っても子どもだよね」

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