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世界を救おう

◆ ○×□△の街 ◆


 さっきまでゾンビか何かだと思ってた街の人達にタッチして、洗いざらい喋ってもらった。この街の人達は、それぞれ家人が大切にしていた物や家の物霊だ。物霊が人間の真似事なんてやってるから、うまくいかない。生前の住人の性格や仕草を見よう見まねでやってみてるだけだから、たまにおかしくなる。


「生体反応についてはまだよくわからないな。どうも核心に迫ると口を閉ざすんだよね」

「列車の様子からして、上位の物霊か何かがいるのでしょうね。今のところ、モノネさんよりもその存在のほうが彼らにとって上のようです」

「つまり、その上位君を何とかしないとダメか」


「お、お前ら……まさか街の外から来たのか?」


 見ると冒険者が3人、一目で疲弊しきってるとわかった。頬もこけていて、覇気がない。


「そうだよ。今、なんとかするところだから待っててね」

「どうにもできんよ……この街の奴らを斬り殺しても復活するし、街の外へ出てもいつの間にか戻ってきてしまう。ここは亡霊の街なんだよ……」

「いや、斬り殺すんじゃない」


 物霊になんてことをするのさ。事態が事態だから、責めないけどさ。3人は怯えた表情で周囲を警戒している。大丈夫、何も――


「うわぁぁぁ!」

「た、助けてくれぇ!」

「クソ、クソッ!」


 3人を捕らえたのは、地面から突き出た大きな白い半透明の手だ。その手が3人を握り締めて、また地面に潜っていく。アスセーナちゃんも呆気にとられる仕事の速さだ。


「恐らく彼らは敵とみなされてしまったようですね……」

「この街からも失踪したらシャレにならないよ。早くなんとかしよう。ねぇ、そこの物霊君」


 私が触れたのは昼間に出会った牛を連れたおじいさんだ。この物霊君はおじいさんの生前の人柄まで真似ているんだな。不愛想で人を寄せ付けない偏屈そうな年寄りを演じている。


「あー……?」

「この街で一番偉い奴のところに案内しなさい」

「あ、あー、あ、あ……」


 ガクガクと揺れて、なかなか私の質問に答えない。私とその偉い奴、どっちが上か勝負ってところかな。競い合いは疲れるし好きじゃないけど、やらなきゃいけない時ってのはあるもんだね。


「言えッ! さっさと答えろッ!」


「ちょ、町長の、家……」


 そこまで言い終えると、おじいさんは糸が切れたように倒れて消えた。ようやく喋ってくれたな。これはつまり、偉い奴に私が勝ったんだ。勝つと気持ちいいもんだね。


「町長の家ね。でも今の様子だと、物霊君に案内までさせるのは無理そう」

「そこまでわかれば、後は簡単ですよ。それっぽい大きな家の表札を見ればいいんです」

「あ、そうか」


 町長が大きな家に住んでいるとは限らないし、出来るだけ聞いておこう。なんだかこれは私の物霊使いとしての試練のようにも思えてきた。確信はないけど、これを乗り越えれば私は大きく成長できるような気がする。


◆ ○×□△の街 町長の家 ◆


 普通の家とさほど変わらなかった。この町長、あまり贅沢はしてなかったみたいで室内も平凡そのものだ。自分から宿の案内をするくらい精力的な人だし、生前はいい人だったんだな。


「町長の日記がありますね。マメな方のようで、毎日欠かさずつけていたようです」


"街の門出を祝おうと、今日はなんと国王自らが出向いて下さった。これは期待に応えねばなるまい。なんとしてでも、この街を大きくすると我々は国王の前で誓った"


"レストランの主人は大張りきりだ。宿屋の女主人も同様だ、たくさんの客に楽しんでもらいたいとの勇み足。旬の食材を使った料理をいくつも考案しているようだ"


 最初の数年分は楽しいことしか書かれてない。だけど途中から、雲行きが怪しくなってきてた。 


"街の活気が日を追うごとになくなってきている。宿もレストランも開業当初の元気はどこにもない。ほとんど客が来ない中、一日いっぱい本を読んで過ごしたそうだ"


"魔術鉄道開発廃止の決定がなされた。我々の抗議など、連中は耳を貸さない。それどころか我々の資材提供が不十分だとなじられた。魔術協会、高慢ちきで嫌な連中だと思っていたがここまでとは"


"若者が一人、二人と街から出ていく。仕事もなければ、致し方ない。人口はすでに全盛期の半分以下だ。このまま過疎化が進んでしまうのだろうか。私は町長としての責務を放棄するわけにはいかない。最後の最後まで残り、発展に尽力するつもりだ"


「……もうやめよう」


 さすがの私も、これ以上は読んでいられない。というかこれだけで情報は十分だ。街の人々の想いが残っているから、いつまでも彷徨い続けているのかもしれない。はてさて、私に何が出来ようか。


「で、ここまで来たけど大元はどこにいるんだろうね? ねぇ、出てくる気ない?」


――貴様、何者だ


 あっさり反応があった。この声は私にしか聴こえてないらしく、他の3人はまだ家の中を見て回ってる。


「あんたがこの家の……いや、この街の物霊?」


――そこまで看過するとは。だが物霊などという呼称は好かんな。


「じゃあ、なんて呼べばいいの?」


――わらわは街の意思にして絶対、名などない


 わらわとか言い出したぞ。意外とかわいいかもしれない。やばい相手だってのに、私は本当に真面目になれないな。


「モノネさん、誰と話してるの?」

「この街の意思さん」

「なるほど、つまりあの町長や住人もすべては街の意思さんが作り上げたものなんですね」

「理解が早すぎるでしょ」


 もうアスセーナちゃんがいれば何でも出来る気がしてきた。


――わらわは100年以上の時をかけて、生物を作り出そうとした。だが出来たのは……貴様の言葉でいえば、物霊のような半端な存在でしかなかった。


「それで生体反応があったりなかったりしたのかー。それで街の意思さんは何がしたいの?」


――捨てられ、忘れられた恨みを晴らす。人間をこの街に取り込み、ここをすべてとする


「人間をこの街に取り込んで、ここをすべてにするとか言ってる」

「それが本当なら、世界の危機ですね。この得体の知れないパワーに対抗できるのはモノネさんしかいません」

「どうしてそういうこというの」


 アスセーナちゃんが私一人に押し付けようとしてくる。私なんかが世界を救う勇者になれるか。そんな大役はアスセーナちゃんにこそ相応しいはずだ。私としては戦いなんて避けたい。というか、こんな意思とかいってる奴なんて倒しようがない。せめて可視化できればな。


「わらわさんはどんな姿をしているの?」


――姿などない。この街そのものがわらわだ


「へぇ、なんかブサイクだから引っ込んでるのかなと」


――貴様


「ごめん。出来る、出来ないなんて人それぞれだよね。あ、人ですらなかった」


――いいだろう。わらわの真の姿を今ここで見せてくれようぞ!


 ちょろすぎた。居間のソファーに光の粒子が集まり、それが少しずつ人の形に近づく。集まり終えた後は光る人型がソファーに座っていた。それが今度は肌色に変化していく。綺麗な素肌が出来上がり、平らな胸に小さな背丈。銀色と茶色が縦に入り混じった髪。


「……これがわらわの姿だ。恐れよ、人間ども」

「ちっさ」

「何だと?」

「レリィちゃんより小さい」


 そんな裸の女の子が重厚なセリフを吐きつつ、ソファーでくつろいでいるんだから突っ込むしかない。まんまる吊り目がまた愛敬を感じさせる。


「馬鹿な事を。わらわが小さいだと……」

「ね?」


 立ち上がってようやく自分の立ち位置を知ったみたいだ。私にすら見下ろされる身長だもの。完全に沈黙してる。


「わらわに勝とうなどと思い上がるな! 人間ども、この力をとくと見よッ!」


 強引に話を進めやがった。だけど、ふざけていられるのもここまでだ。家の物が宙を舞い、物霊使い顔負けのコントロールを見せつけてくる。


「街の意思、戦闘Lv……測定不能」

「だろうね。イルシャちゃんとレリィちゃんは……」


「あぶなっ!」


 絵画や棚が二人にも襲いかかるけど、余裕でひらりとかわしている。よしよし、これも狙い通りだ。二人にはアスセーナちゃんのお下がりの服を着せている。レリィちゃん用にサイズを小さくして、後は私が触れてこういえば完了だ。二人を守れ、と。


「こ、この服やっぱりすごい! なんか達人になった気分!」

「でしょ。私の気持ちがわかったか」


「お、おーのーれぇぇ! こうなれば、わらわも本気を出すしかないぞよ!」


 今、ぞよっつった?


◆ ティカ 記録 ◆


ついに 姿を現した 大元

姿形は 幼女そのものですが その力は 未知数

最低でも マスターと 同じような力を 持っているのカ

しかも あの幼女を 叩いたところで 決着できるのカ

奴が 物霊ならば マスター次第で 完封できる可能性があル

だが それは マスター次第

僕も 力の限り 戦おウ


引き続き 記録を 継続

「レリィちゃん、風邪ひいちゃったみたいだから薬をお願い」

「人体の底力は病に勝る」

「え?」

「アスセーナおねーちゃんが教えてくれたの。薬に頼らないで治せるよ」

「ああいう超人の格言を真に受けなくていいから」

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