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盗賊団を討伐しよう

◆ 盗賊団アジトへ移動中 ◆


 翌日、ギンビラ盗賊団の討伐隊が盗賊の住処に向かう。総勢30人、警備隊や冒険者で構成されていてどの人もしっかりとした武装で挑もうとしていた。間違ってもバニーフードスウェットを着用して布団で移動してる奴なんかいない。ましてや本棚なんか同伴していない。

 そんな奴がいたら昨日の会議でも全員の視線を集める事になって、間違いなく突っ込むはずだ。突っ込まれまくった。


「妙なスキルを使えるみたいだが、役に立つのか?」

「足を引っ張られるのだけは勘弁だな」

「辺境伯の推薦らしいが、どうかしちまったとしか思えん」


 さすがにこの緊迫した作戦の中だ、変に絡んでくる人なんかいない。この前の警備兵みたいなのばっかりじゃないんだね。


「おい、お前。寝るつもりなら家に帰っていいんだぞ」

「寝ない寝ない」

「布団が浮いているのは何らかのスキルか魔力か? とにかく、昨日の会議で言った通りだ。お前の役割は黙って後方支援、いいな」


 黒髪の優男が私に向けて、そう吐き捨てる。つまり何もするなという事かね。私がさぼってる間に皆が解決してくれたらそりゃ大助かりだけど、後で辺境伯に報告されたらまずい。作戦に従ったと言ったところで、納得してくれなかったら終わりだ。

 完全にお荷物扱いだし、ここはなんとかして活躍しなくては。ちなみに昨日、生まれて初めて冒険者ギルドに足を運んで魔力チェックなるものをやってみた。簡単な適正テストや魔石での魔力抽出、いろいろやって出た結果。


「魔力値8……え? 一般の方でも平均50程度はあるんですが、え? いや、落ち込む事はないですよ、モノネさんはモノネさん。魔力だけが個性じゃありませんし、むしろ他の道に進もうと決意できると考えましょう」


 なんか軽く人生相談を交えてコケにされて終わった。別に期待してたわけじゃないし? もし高かったら引く手も数多、いろんなところからスカウトされそうだし? 全然気にしてないし?


◆ 盗賊団アジトがある森の入口 ◆


「着いたぞ! 起きろ!」

「はっ?! ごめん!」


 布団が気持ち良すぎてついうたた寝してた。やばい、視線が痛すぎる。お前もう帰れといわんばかりの空気だ。ごめんなさい。

 でも皆についていってと心の中で念じれば、こうして移動しながら寝られるとわかったのはよかった。


「もうお前はそこにいろ。この森の中にギンビラ盗賊団のアジトがあるからな。ここから先は――」

「危ないデス! 引いて下さイ!」

「?!」


 隣で大声を出されて耳が厳しい。だけどそれがなかったら黒髪の優男には確実に矢が刺さっていた。地面に刺さった矢が振動の余韻で揺れている。


「申し訳ありませン。生体感知の起動が遅れましタ。人間と思われる生体反応がこの先に5つ確認できまス。そのうち一つがここから100歩ほど先。恐らくこれが矢を放った者でしょウ」

「あんた、そんな事まで出来るの?!」

「むしろ今の僕ではこの程度しかお役に立てまセン」


 それなら、あの魔導砲とかいうのは何なのと聞きたい。でも今は盗賊に先制攻撃された状況のほうを気にしないと。


「大丈夫か、フレッド! よくかわしたな」

「間一髪だった、あの小さな人形が教えてくれなかったら射られていたよ」

「ギンビラ盗賊団が矢を所持している情報なんてなかった。新しく奪ったのか温存していたのか……」

「あの森の木の上かどこかにいるんだろう。障害物だらけの中、ここまで狙いをつけてくるとはな。かなりの使い手だぞ」


 さっそく出鼻をくじかれて、皆が右往左往している。これはなかなか手強い。シュワルトさんが頭を抱えるほどの相手だとわかった今、不用意に団体様で近づくのは自殺行為だ。


「あのさ、やり返す?」

「バカを言うな。相手はすでに別の木に移動しただろうし、狙いなんかつけられるか」

「問題ないよ。この刺さってる矢一つで十分」

「おい、何をする気だ?」


 矢に触れて、ひと呼吸置いてから命令を口にする。これ、成功しなかったら大恥だ。


「持ち主のところに飛んでいって刺されッ!」

「な、何を?!」


「ぎゃあぁッ!」


 矢は放たれた時と同じ速度で、しかも器用に曲線の軌道を描いて敵に命中。悲鳴の後、木の上から草だらけの地面に落ちた音まで聴こえた。


「まず一人」

「君……今のは?」

「説明してる時間ないんでサクサクいきましょう。フレッドさんとクラス"レンジャー"の人、先行して下さい。今の感じだとこの中で一番強いのは多分フレッドさんだし、また先制攻撃されてもかわせる可能性があるから。レンジャーは昨日の説明だと罠解除が出来るんだっけ? だから必要、盗賊のアジトがあるなら罠もありそうだし」

「あ、あぁ」

「先行組で安全を確保してから、後方を支援職含めた方々で歩きます。敵の配置はあんたがわかるよね?」

「は、ハイ」

「生体感知とかいうやつのおかげで挟撃なんかは防げるだろうし、万が一の為に先行組と後攻組で間隔を開けて進めば被害は最小限で……あれ? 皆さん、ボーッとしてもしかして眠い?」


 そりゃ呆気にとられるわ。なんで私が指揮してるの。私なんかが出しゃばるより、現場のプロの方々に任せた方がいいのに。

 だけど思いのほか、素直に従ってくれる。どうしたどうした、さっきまで私をゴミでも見るような目で見てたくせに。

 妙な雰囲気の中、歩くとすぐそこに矢が刺さっている人がいた。さっき矢を撃ってきた盗賊だ。木を背にして息を荒げている。念のため、他の人に頼んで弓と残りの矢も没収。殺すのかなと思ったけど、情報を引き出したいからこのまま放置らしい。

 何人かがそれを担当する事になって、残りのメンバーが奥へ進んだ。情報ってなんだろう。他の仲間の事ならすでに知っているし、意味がわからない。


◆ 盗賊のアジト前 ◆


「見張りが一人。あの洞窟の奥に残り3つの反応がありまス。盗賊と見て間違いないでショウ」


 森の奥にある崖をくり抜いたような洞窟の入口に、腰に剣を差した男が一人。弓矢男がやられたというのに、呑気にあくびをしていた。


「情報にあった剣の奴だ。あいつも腕が立つらしい」

「遠距離攻撃の手段があればなぁ」

「下手な遠距離攻撃なら回避されるぞ。ああ見えて油断なんかしてない、むしろ誘ってる」

「そう。じゃあ、下手じゃない遠距離攻撃を試しますか……本棚君、あいつに本棚ブゥゥゥメランッ!」


「ん? な、なんッ……」


 何気に連れて来た本棚君が私の言う事を聞いて、回転しながら半月状の軌道で剣を持った男にヒット。さすがに大きい本棚は想定外だったのか、驚いてやっと反応したところで成す術もなく本棚の下敷きになった。


「あ、頭に思いっきり角が当たったね……痛そう。恐るべし、本棚ブーメラン」

「君がやったんだろうが……」


 フレッドさん達が引きまくってる。もしかわされたら収納されている本達で第二の攻撃をしてもらおうと思ったけど、気絶してくれてよかった。


「次は洞窟の中かー。本棚君はここにいてもらうとして、引き続きフレッドさんとレンジャーの人に先行してもらっていい?」

「構わないが、恐らく頭目のゴボウがいるだろう。情報が正しければ、かなり手強いぞ」


「んだがぁ、騒ぎおごしてんだべかぁ?」


 出た。向こうから出てきてくれた。のっそりと現れたのはヒゲ面でバイキングヘルムを被ったずんぐりむっくりの巨漢。どうやってそのサイズで洞窟に入ってたんだと突っ込みたい。どうして悪人はいかにも悪人面なのか。悪人だから悪人面になるのか。

 残りの二人も、ネズミと豚の変態型みたいな顔をしていてインパクト十分。あのヒゲ面がゴボウかな。正直怖すぎて、来た事を後悔した。手下の二人なんか、かすんで見えるほどゴボウがやばすぎ。見た目もそうだけど、何人も殺してますってのが体全体から見えない空気として出てる。人間は、こういうのを本能で感じ取れるように出来ているんだなと思った。


「お前がゴボウだな。今日までの蛮行はここで終わらせてやる」


 かっこよく剣先をゴボウ達に突きつけるフレッドさん。やったれー。


◆ ??? 記録 ◆


マスター あれだけの人間に 軽蔑されても 平気などころか

寝れるところが 大物デス

引きこもっていた割には いざという時の 胆力や気転 評価シマス

もしや これは 未完の大器?

あとは やる気さえ あれば

そうだ うんと 働いた後なら 引きこもってもいいと まずは モチベーションを

あげてしまえば いいのデス

名案 名案


引き続き 記録を継続

「魔法とスキルの違いってなーに?」

「魔法は魔力を使うものでスキルは魔力の影響もなく、鍛錬によって身に着けたものデス。

修練なしで生まれながらにして備わっているものはアビリティに分類されますネ」

「へー、私の力はスキルじゃなさそうだね」

「マスターの力は恐らくアビリティに分類されるかと思われマス。あの魔力値では魔法の可能性もないでしょうし、修練の様子も見られませン」

「結構グッサリくるね、あんた」

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