表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/201

コルリちゃんの歓迎会に出よう

◆ 冒険者ギルド 食堂 ◆


「今日は討伐課の期待の新人コルリの歓迎会です。楽しんでね」


 どうしてこうなってしまったのか。ハルピュイア運送討伐課の新人歓迎会が冒険者を交えて行われている。ヒヨクちゃんを病院にとどけた後、苛烈なる空長討伐完了報告をした時からだ。

 絶たれていた空路が復活して正常に運送が行われるようになったし、そこはよかった。討伐課にコルリちゃんだけを送り届けた時からだ、おかしくなったのは。


「あの二人の評価ですか? 別にそんな事で下がったりしませんよ。なんたってうち、窓際ですから」

「え、討伐課ってかっこよさげなのに?」


 討伐課の課長メジロさんは髪も翼も黄色い。はーたん達は若くて同じような年齢に見えるせいか、この人がヒヨクちゃん達の上司と言われなかったら絶対わからなかった。おっとりした雰囲気で、翼でグラスを挟んで飲み物を飲んでいる。


「要は安全に速くお届けできればいいんですよ。この辺りなら空を飛んでいれば危険な魔物になんてほとんど襲われません。今回みたいなのはレアケースなんですよ」

「だから普段は討伐課の出番はないと?」

「弱い魔物なら、運送課の連中でどうにかなりますからね。よってうちの出番なんかほとんどないんです」

「そうなんだ……ヒヨクちゃん達はあんなに張り切ってるのに」

「まぁやる気は買いますし、出来るだけかわいがりますよ。ヒヨクより先輩だった子は別の課にいっちゃいましたし」


 なんか淡々と寂しい事実を告げられた。でも今回の活躍で大躍進してくれると嬉しい。という事は討伐課には3人しかいないのか。


「課長ー、他の地域じゃワイバーンに遭遇するから討伐課は繁盛してるみたいなんですけどー」

「他は他、うちはうち。それでもたまに護衛くらいはするから、まったく役に立ってないわけじゃない」

「ヒヨクちゃん。怪我は平気なの?」

「あー平気どころか薬ぬって包帯撒いてほっといたら治りかけてるからー」

「生命力の高さがうちらの長所」


 さすが人間とは違う。この子らが本気になったら、この街くらいなら滅ぼせそう。なんて物騒な考えは失礼か。それがないからこうして仲良くしているんだもんね。


「さー、仕事の話なんて辛気臭いもんは捨ててコルリちゃんを歓迎しようか。この子がうちに入ってきた期待の新人でーす」

「コ、コルリです。私の翼は毒なので触らないでくだ……あーっ!」

「う、うぅっ」

「大丈夫ですか!?」

「フーッ、これはきついですね……。私じゃなかったら1分以内に死んでます」


 アスセーナちゃん、いたんだ。言ってるそばから不用意に触るシルバークラスって。水をがぶ飲みして一息ついたら持ち直してる。実はこの子、人間じゃないんじゃ。


「この街には素晴らしい人材がいるものだな、弟よ」

「俺達もうかうかしてられんな、兄よ」

「あんた達のおかげで冒険者全体のレベルが上がった気がするよ」

「そ、そうか? まぁ当然の事をしたまでだがな。なぁ、弟よ」

「そうだな。決してアスセーナさんの気を引きたいわけではないよな、兄よ」

「……まぁ助かってるよ」


 カンカン兄弟もすっかり馴染んてるな。アスセーナちゃんみたいな美人には優しいのか。それなら私にも優しくしてくれてもよかったんだけど、何故に。考えるのはよそう。


「さー、後輩よ! 飲め飲めぇ!」

「こ、こんなにいいんですか?」

「おうさ! 先輩の太っ腹っぷりを堪能しなさい!」

「はい! 先輩! では飲みます!」


 おいおい、拒否してもいいんだよ。グイっといった直後、顔がみるみると赤くなっていく。気のせいか、目つきもトロンとしたような。


「あー……モノネ先輩、昨日はかっこよかったです……」

「へ? あ、ありがと」

「ヒヨク先輩も素敵ですけどモノネ先輩もかわいいですぅ」

「あり、がと……」


 なんか様子が変わった。コルリちゃんが翼を私の肩にまわしてきて、密着してくる。お酒の匂いがひどい。ちょっと待って、この翼って毒なんじゃ。でもなぜか平気だ。このスウェットのおかげ?


「プハーッ! モノネちゃんは頼もしい後輩よ! 先が楽しみすぎる!」

「あの、私がいつから後輩に」

「冒険者登録したのは私が先だからねー」

「そういうもんですか」

「そういうもん」


 はーたん達が二人してくっついてきた。そして背中がなんか温かいと思ったら、アスセーナちゃんがお腹に手を回して抱き着いてきてる。なんなのこの状況。


「4人だけで盛り上がってないで俺達もまぜてくれよー!」

「これ以上抱き着いてきたらウサギパンチするから。正確にはせざるを得なくなるから」

「い、いやそうじゃなくてハーピィ達って歌がうまいんだよな? それならそれで盛り上がりたいなってさ」

「あぁ、じゃあ私は不参加なやつですね」

「やりましょう!」

「ぐぇっ!」


 シルバーちゃんの腕力で締め付けられた。そして瞬く間に始まった歌合戦。はーたん達の歌声がギルド内に染みこむように響き渡る。


「はーぴぃにゅーいやぁー♪ おどってさそって いちやあければ とりこ♪ とりのこできあがり♪」


「うっわ、うますぎる……歌詞はひどいけど」

「大昔は歌で旅人を惑わし、人を拉致したといわれるほどデス」

「詳しいね」

「データとして知っているだけで真実かどうかはわかりませン」

「そう考えるとこの歌詞怖い」

「次はオレ達兄弟だぁぁぁ! ガンガンいくぜ! オレたちゃ最強! 撃速前進ぶっとばせぇ!」

「ぎゃー!」


 はーたん達の綺麗な歌声の余韻が一瞬で変な兄弟のダミ声で消えた。歌声どころか歌詞もひどい。どうやったら自分達をここまで賛美できるのか。


「次はオレだ!」

「その次は……」


 いやはや、皆さん盛り上がってらっしゃる。私はちまちまと料理をつついて見守ろう。はーたん達と混ざり合って、歌合戦が起こってる。いがみ合うよりも、皆で仲良くしたほうが楽しいよね。この冒険者ギルドは今、優しさに包まれてる。なんだか一派だとか、そんな下らない派閥なんか一切ない。


「盛り上がっているな」

「船長、もしかして歌う気ですか」

「いや、昔から歌うのは苦手でな。君に大事な用件を伝えにきた」

「なんですか。苛烈なる何ですか」

「君へのブロンズの称号授与が決定した」

「へー、そりゃすご……ぶーーーーっ!」

「それ本当ですかやったー!」


「マジか! すげぇ!」

「この街のギルドからフレッドに次ぐ二人目のブロンズか!」

「やったじゃないか、この野郎!」


 アスセーナちゃんがまた抱きついてきたところで、オレンジジュースを吹いてしまった。ふらっとやってきて簡単に伝えていい案件なのかな。落ち着きましょう。この私に称号ですと。どこでどのようにしてそれは決定されたのか。


「ギルド本部から直々のお達しだ。詳しい日程は後日知らせる。それまでに王都行きの準備を済ませておきなさい」

「あの、私ごときウサギファイターが本当に?」

「依頼達成数としてはいささか足りない気もするが、密度が評価されたのだろうな。特に苛烈なる空長討伐は大きい」

「うーん、そうなのかなぁ」


 ギルド本部さんがそう決定したんなら、しょうがない。こんなアビリティ頼りのウサギが称号だなんて、真面目に鍛えてがんばってる人に少し申し訳ない。


「はーっ、まさかここまで来てしまうとは……」

「嫌か?」

「いや、実感なさすぎて本当に申し訳ないというかそんな感じです」

「やっかむ者はいるだろうが、誰もが通る道だ。実力と誇りをもって堂々とすればいい」

「そうです! 腹が立ったら決闘でやっつけちゃって下さい!」

「僕も全力でお供しまス」


「よし! モノネ! 景気がいい時は歌うに限る! そうだろう、弟よ!」


 余計なことを言うな、兄よ。歌って気が晴れるのは歌がうまい人だけ。はーたん達や冒険者達がすでに期待の眼差しを向けてきてきつい。


「モノネさん。歌は気持ちが大切なんですよ。下手でもいいんです」

「本当に? 笑わない?」

「何なら俺達も一緒に歌ってやろう! なぁ、弟よ!」

「合唱するぞ、兄よ!」


 ではあの有名なネームドモンスターを倒すきっかけになった勝利の歌を聴かせてあげよう。


「おっはっなー♪ おっはっなー♪」

「……ッ?!」

「おっはっなー♪」

「お、おはな?」

「おっはっなー♪」


「歌いましょう! おっはっなぁー♪」

「おっはっなー……?」


 疑問符がついてそうだけど、歌ってくれてる。こんなのでもアスセーナちゃんとはーたん達の歌声が加わると、なんとか聴ける気がしてきた。


「おっはっな~」

「おはなぁー!」

「おっはっなーーー♪」


 歌わないはずの船長まで巻き込んで、もはやわけがわからない様相になってきた。ひとまず今日はこれにてお開きにしましょう、皆さん。


◆ ティカ 記録 ◆


歓迎会という イベントは 楽しそうでしたが

コルリさんを 歓迎するというよりは 各々で騒ぎたいだけのようにも見えまス

それでも こうして楽しく過ごせる時というのは やはり尊イ

マスターが ついに ブロンズの称号を 獲得

これは めでたイ

これこそ イベントを やるに値するはズ

ついに マスターが ギルドから 正式に 認められたのデス

マスターは 何一つ 後ろめたいことなど していなイ

他人を やっかんで 足を引っ張る輩は 僕が 直々に対処しよウ


引き続き 記録を 継続


「いよいよ王都ですカ。ここからだと距離がありますネ」

「どうせ布団君でかっとばすから問題ないかな」

「しかし長距離での移動となれば、天候も気がかりですネ。雨など降れば布団も濡れてしまいまス」

「汚れないなら濡れないと思うんだけどな」

「後はマスターが風邪をひかぬよう、いろいろと用意するものが……」

「わかったわかった、過保護だなぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ