タイムマシン
この小説は投稿済みの『物質転送装置』の続編です。『物質転送装置』を先に読むと楽しさが倍増します。今回もあの虫が登場します。さらにあの虫も・・・。食事中はお勧めできません。また、心の狭い方にもお薦めしません。
「博士、あなたは天才です。『物質転送装置』に続いて『タイムマシン』まで作ってしまうとは!」
「当然だ。私は人類の夢を現実のものとするために、日々過酷な研究を続けているのだ」
「寝てばかりいるように見えますが」
「いや、違うぞ。ただ寝ているわけではない。睡眠学習を進化させた睡眠研究だ」
「そ、そうなんですか。失礼しました」
「この『タイムマシン』の原理を聞かんのかね」
「・・・。前回の『物質転送装置』と同じような気がして」
「鋭いな。私はあの虫が時間を飛び越えることを発見したのだ」
「・・・。前回より箱の大きさが一回り大きくなったような」
「良くわかったな。この中に例の虫が二十万匹きいる」
「説明はもういいです。はやく過去か未来に行きましょう」
「キミはなにが見てみたい」
「そりゃあまあ恐竜とか」
「わかった。過去だな。では出発だ」
ブイーイーン。
「ついだぞ」
「真っ暗です。なんかこの『タイムマシン』空気が漏れてません。息苦しいです。それにとても寒い・・・」
「まずい!真空の宇宙空間に出てしまった。宇宙が膨張しているのを忘れていた。戻るぞ」
ブイーイーン。
「ふう。なんとか助かった。過去に行くと同時に、膨張前の地球の位置を割り出して空間移動をしないといかんな」
「私の大好きなSF小説ではそんなこと言ってませんでしたが」
「現実は小説のように都合よくいかんのだよ。だが、大丈夫だ。あの虫の空間移動能力をつかさどる中枢神経と、時間を行き来する中枢神経は基本的に同じだ」
「その方がご都合主義のように聞こえますが」
「うるさい。準備できたぞ。では再出発だ」
ブイーイーン。
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ブイーイーン。
「素晴らしい世界だった。生きた恐竜を見たのは、われわれが初めてだ。興奮したな」
「はい。博士。ゴホ、ゴホ」
「どうした。顔色が悪いぞ。カゼでもひいたか」
「そうみたいです。医者に行ってきます」
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『こちらNNNネットワーク放送です。新宿区より突如発生した未知のウイルスによって街は壊滅状態です。ゴホ、ゴホ。既に全世界の主要都市で感染者が確認されており。ゴホ、ゴホ。空港を経由した拡大が懸念されています。ゴホ、ゴホ』
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「無事に退院できて良かった。あやうく人類を滅亡させるところだった。過去は危険だ。不衛生で困る。未知のウイルスがうようよいるようだ」
「やっぱりSF小説のようにはいきませんね」
「未来へいくぞ。未来は衛生的だ」
ブイーイーン。
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ブイーイーン。
「素晴らしい未来だった」
「本当ですね。最高の未来旅行でした。あれ。博士、その靴は」
「気づいたか。未来人に交換してもらった」
「博士!水虫は治ったのですか?」
「いかん。水虫薬を大量に買ってきてくれ。未来に戻るぞ。未来人が滅亡するかもしれん」
おしまい。