5W 入国管理ギルドに管理された俺
入国管理ギルド魔法使いハートの取り調べも終わり、拘束も解かれた翌日。腕に刻印された就労ビザを所有していた俺は、部屋の外に出ることが許された。入国管理ギルドのルール下では俺は自由の身だが、ここが異世界というらしいのと、街の人々から見たら俺は襲雷人という異人なので、全身を隠すためのマントと、顔を覆うマスクを支給された。半裸状態から一転、全身を覆い隠す服で着替え終わる。容姿を鏡で見ると、こういう占い師いるよね~っていう、格好になっていた。
もはや、街のでんきやさんの爽やかな作業着姿ではない。ただ、ささやかな反抗で俺は、電気工事の腰道具の一部を忍ばせている。道具はお守りみたいなものだ。外出条件でハートが言うには、外出の半径は5キロ以内と、俺の身は入国管理ギルドの管理下に置かている。俺は取り調べ部屋から、扉を開け外に出る。
占い師のような格好で外に出た俺は、目立たないように街を歩く。この街並みは俺が住んでいた世界とは違い、石畳の道と青空市場のように左右に商店が並んでいる。
人も街並みも長閑だ。俺の実家である、街のでんきやさんの景色を忘れてしまうほどの、ゆったりとした時間が流れていると思う。なぜか落ち着く景色に心を奪われそうだった。
ん?! 俺は歩きながら景色を見ていると、後方に人の気配を感じた。商店の売り物の間から視線を感じ、気にせずに歩くとまた視線が……歩くたびに緊張が一気に高まる。俺は、誰かに狙われているのか?! 歩きながら道の角に入り建物の死角に入る。いったん身を隠し、人の気配をよく観察してじっと見る……。
何……だと……、なぜ……ハートが俺の跡をつけてきているんだ!!
こういう場合はどう解釈すればいいんだ? たしかに、入国管理ギルドの管理下だと言っていたが、ハートが直接監視をするのか?! この国の管理体制はどうなっているのだ? 俺は訳が分からなくなって思わずハートに向かって声を出す。そこにいるんだろ? ハート!
「なぜ……わか……、った。私の完璧な、隠れ身の術を見破るとはっ!」
ハートの隠れ身の術とは、ただ青空市場のお店にある商品棚の間にすっぽり収まって、商品の果物を手に持って顔を隠しているだけだった。さらに魔法使い特有の頭のフードが隠しきれていないし、シルエットに見覚えがありすぎる。俺は、わざと見つかるように隠れているのかと思ったが、本人は至って真剣に隠れていたようだ。
俺はハートに問いただす。ハートが言うには入国管理ギルドの命に従って、街のパトロールと襲雷人の監視と言い放った。そう、俺はやっぱり監視をされているみたいだ。そうなら、俺は人畜無害でただこの美しい街を歩きたいだけだとハートに言った。ハートは理解をしてくれたのか、俺の前を歩き出し街を案内してくれるらしい。ハートは色々な商店や、街並みの意味を説明してくれた。
「泥棒!! 誰かーーーっ! 助けてください!!」
青空市場の喉かな景色を感じていた俺とは裏腹に、いきなり助けを求める声が街に響いた。すぐに男が俺たちの反対方向に逃走している。その瞬間、俺とハートに緊張が走る。