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聖水紀ーウオーター・ナイツー第16回■人類は聖水と同化することを求められた。しかし宇宙要塞ウェガの一室で聖水へ刺客、生物Aが作成される。

聖水紀ーウオーター・ナイツー第16回■1976年作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/


第9章

『地球人諸君、我々人類は新しい時代に入った………』で始まる言葉が地球じゅうを巡った。


一般人類を聖水に同化させることが人類の生存方法であるといわれた。


このコメンテーターは聖水騎士団の騎士フガンであった。


 人類は好きな所に移動できた。


地球上でも、地球外の宇宙でも。しかし、そのためには生命形態を変えなければならない。つまり、聖水への同化を意味していた。


聖水、流動生命体への変貌である。人類に対するこの処置にたいしては反対することは許されなかった。



■Aは他の種族と共に海水プールの中でたゆとうていた。


この場所は水迷宮と呼ばれた。このプールの内容物は、人類の羊水と一緒だった。


過去の人間工学が生み出した人工養殖の人間たち。それがAの種族だった。


Aの両親や、Aの仲間たちが、同じ着床でゆらゆら揺れていた。半覚醒状態の彼らには知識が知識端子によって送り込まれている。


また、時折、彼らを観察にくる人間たちがいた。Aたちは不思議な感じで彼らを見ていた。彼らは小型の潜水挺でここへ来て、彼らの成育状態をチェックしているらしい。


が、今日は少し違った。潜水挺からロボット・ハンドがのびてきて、ベースの着床を切り放した。Aの体はこの潜水挺の収納庫に格納された。Aは意味不明の出来事にとまどっていたが、何か新しいページが開かれた気がした。


 Aは創造者の前に連れてこられた。創造者の姿は、光りが後ろから照らしているのではっきりとは見えない。Aはちじこまっている自分を感じている。


「Aよ、お前の生きている意味はわかるか」 創造者が急にAに、唐突に質問を行った。よけいにドキドキする。質問の意味は何だろう。何か正しい答えはあるのだろうか。


 実際の所、実験ベースの着床から眠りを奪われ、息つくひまなく、創造者の前に連れて来られたAは迷惑顔だった。自分の氏素性など覚えてはいなかった。


「わからないようだな、A。では私がその質問の答えをいう。お前はこの地球の防御のために作られた生体だ。恐らく地球を救った勇者として名前がこの地球史に残るだろう。栄光に思え。お前の体の構造には有毒物質が含まれている。おっと気にする必要はない。その有毒物質はお前の体を滅ぼしはしない。ある一定の物質と出会うことにより、有毒物質となるのだ」


「一体、私が出会う物質とは何なのですか」


「わからんかね。聖水だよ」


Aは二の句が告げなかった。聖なる水、その水を滅ぼすための物質がおのが体に含まれているだと。Aは創造者にたいして、いきばのない激しい怒りを感じた。


 創造者はAの気持ちをわかったかどうか、彼は言葉をついでいた。


「我々は聖水を入手し、分析し、それに対する対抗策を長い時間をかけて作り上げてきた。君は水迷宮でできた完璧な作品、いや完全なる芸術品なのだ」


「その作品を投げ与えるわけですね」


「その作品の意味は彼ら聖水にしかわからないのだ。君は、儀式を受ける人の中に入り込み、聖水と同化するのだ。聖水と交流し、分解されれば、お前の体の毒素が秘そかに、聖水の中に流れ込む。聖水が汚染される」


「つまり、私は聖水に対する刺客というわけですね」


「理解がはやいね。A、そういうことだ」


 創造者は、Aの内なる怒りを知ってかしらずか、そう言ってのけた。

 ここは宇宙要塞ウェガの一室だった。


聖水紀ーウオーター・ナイツー第16回■1976年作品

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

http://www.yamada-kikaku.com/


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