第七話 休息の月曜日
閑話に近い何か
(・・・・・・きこえますか・・・・・・きこえますか・・・・・・?今・・・・・・あなたの・・・・・・心に直接・・・・・・話しかけています・・・・・・今日は・・・・・・ゆっくり休む・・・・・・のです・・・・・・バルの都合に・・・・・・無理に合わせて旅立っては・・・・・・いけません・・・・・・。・・・・・・無理を押して・・・・・・今日旅立てば・・・・・・きっとあなたは・・・・・・後悔する事に・・・・・・なるでしょう・・・・・・。今日はぐっ・・・・・・すり寝て・・・・・・英気を養い・・・・・・道具を・・・・・・掻き集め・・・・・・明日の早朝に・・・・・・備えるのです・・・・・備えるのです・・・・・・)
「寝てる時に天啓でたたき起こすの辞めてくれないかな・・・・・・」
(・・・・・・反抗的・・・・・・ですね・・・・・・先日の件・・・・・・を・・・・・・気にしているのですか・・・・・・?アレは事故・・・・・・なのです・・・・・・。様々な・・・・・・神々の・・・・・・思惑や・・・・・・先導によって・・・・・・未来が不安定・・・・・・になって・・・・・・いるのです・・・・・・。それに・・・・・・英雄も不死・・・・・・ではないので・・・・・・ああいった事態・・・・・・は稀に・・・・・・あるのです・・・・・・あるのです・・・・・・)
「・・・・・・もういいです、過ぎた事ですから。明日の朝旅立てば良いのですね?」
(はい・・・・・・その通り・・・・・・です・・・・・・。それでは・・・・・・健闘を・・・・・・遙か遠方より・・・・・・お祈りしています・・・・・・います・・・・・・)
最悪の目覚めだ、リリィはそう感じた。
身体もだるく頭もいまいち冴えない。昨日の強行軍が原因だろう。
確かにこの状態で魔王との一戦と言う大勝負に挑むのは些か不安ではある。
だけれど先日の件といいこのまま女神の言う事を聞いていいものか・・・・・・そう悩みながら周囲を見回すとジェシカとコレットは既にそこにおらずもぬけの殻となった寝床のみがそこにあった。
朝食でも食べに行ったのかな?と考えたが、よく考えればもう既に日が昇って久しいお昼時だ。
起きてない者の方が少ない時間帯だろう。
リリィも適当に身支度を済ませバル達に合流する為に天幕を出た。
天幕を出ると周囲には話し合う兵士や魔法使いで溢れていた。
昨日の戦い以降壊滅した南西と中央はもちろん北西からも敵が撤退しこれで戦いが本当に終わったのか議論する者や負傷者や死傷者の報告、仮拠点の防衛や見張りの割り振りを話し合う声が溢れている。
そんな一角で身内の三人は固まって昼食を食べていた、配給されたものだろう、固そうなパンと味の薄そうなスープを飲んでいる。
「まったく、ちょっと声をかけて私も起こしてくれればよかったのに」
開幕口をついた言葉はそれだった、だってこれではまるで私が除け者のようではないか。
「いえ、あまりにもぐっすり寝ておられたので起こしては悪いかと思いまして」
「そもそも英雄様起こすとかちょっと恐れ多いというか」
金髪巨乳のコレットに童顔ジェシカがおそるおそる続けてつぶやく。
・・・・・・今更英雄も何も無いと思うのだけど、同じパーティーとして行動しているのだし。
「おはよう、リリィ。お腹空いたでしょ?配給貰ってきなよ、なかなかイケるぞ」
バルがニヤリと笑いながらそう促す。思えば昨日の昼食以降ろくに食事を取らずに戦い続けていた事を意識してしまいお腹がぐうと鳴る。少し居心地が悪そうに口を尖らせながら昼食を取りに配給の列に向かう、バルは今日休息を取り明日魔王討伐に行くと言う女神のプランをちゃんと受け入れてくれるだろうか・・・・・・そんな事をぼんやり考えながら。
◇◇◇◇◇
「今日の事なんだけど」
そうリリィが食事を手に戻ってきてすぐに切り出す。
今日の予定といえばいよいよ七人の魔王とやらの討伐だろう、何処にいるかは知らないが・・・・・・少なくても戦線には一人もいなかったらしいという話だ。
「今日は昨日の戦いの疲れもあるだろうし魔王討伐へは向かわず情報収集と戦いの準備、それと休息に留めて明日の朝発つのがいいと思うんだけど・・・・・・みんなはどう思う?」
決戦は明日、そう我らがパーティーリーダー様は考えているようだ。
俺以外の二人はと言うと。
「そうですね、さすがに疲れも残ってますしね。槍頭も研いでおきたいですし」
「いいんじゃないでしょうか?私も魔力が回復しきってないので」
コレットとジェシカが続く、個人的には水曜日にはどっかの邪神と結婚させられるので火曜日に魔王討伐と言うのはかなりスケジュール的に厳しいのだが、自分のわがままで他の三人に迷惑をかけてはいけないし・・・・・・リーダーがそう決断したのなら首を縦に振らざるを得ない。
「そうだな・・・・・・最近『百合姫』も酷使していたし、きちんと手入れする時間が必要かもな」
話し合いはその後も滞りなく進みリリィとジェシカが情報収集と消耗品の購入、コレットとバルが武器の整備と夕食担当、あとは各自自由行動となった。
「はあ~随分念入りに研ぐんですね」
「名前に姫ってつけるぐらいだからね、昔からずーっと大切に使ってたんだ。最近はあまりにもばたばたしてたからサボりがちだったんだけどね」
コレットがじ~っと作業を見つめながら話しかけてくる。
俺が昼からずっと剣を研いでいるのが気になるようだ。
「バルさんって英雄・・・・・・って訳でもないんですよね?なんでそんなに強いんですか?正直昨日リリィ様の活躍よりバルさんの獅子奮迅の活躍の方が気になったぐらいですよ」
「う~ん、そう言われてもね。教え子に負けない程度には鍛えていたつもりだけど特別何かしてたって訳でもないよ?昨日戦った魔物達もそんな強くなかったしね」
「確かに一対一で戦ったらそうでもないでしょうけど・・・・・・あの数ですよ・・・・・・?」
コレットはバルが大量の魔物を一人で屠ってる場面を何度も目にしていた。
その腕前は並みの冒険者や兵士では到達出来ない領域にあるとコレットは感じていた。
「魔術師は一対多が剣士とかより得意だからね」
「・・・・・・そもそも魔術師なんですか?どう見ても剣士が魔法も使える・・・・・・みたいな感じに見えるんですけど」
コレットから見ればどう見てもバルは魔術師より剣士寄りだった。
剣を片手に魔物の群れに自ら突っ込んでいく魔術師など見た事も聞いた事もない。
「・・・・・・俺は魔術師だよ、剣を振るっている時も魔法を使っているし。ただ本格的な魔法を使わざるを得ない敵があんまいないから使ってないだけだ」
「はあ・・・・・・」
剣であれなら本分である魔法などはどの程度の実力なのか、少し気になったが口ぶり的にそんな機会は訪れない予感がした。結局バルの力の源泉は知れずその後はつまらない話を適当にした後夕食の準備を開始した。
今日もう一話あげれたらいいな(あげれるとは言ってない)