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婚活魔術師と不思議なダンジョン  作者: 冬空さんぽ
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第五話 日曜は血戦②

 ヒャッハー!今日は強力な魔王軍に四人で突っ込むイカれたメンバーを紹介するぜー!

 まずはこのパーティーのリーダーを務めるリリィだ、やや赤みがかった茶髪を長く伸ばし顔立ちも清楚系で服装も大人しめな常識人っぽい回復術師の女の子だ、だが英雄呼ばわりされたおかげで慢心して死に掛けちゃうこともあるちょっとした『ドジっ娘』要素もあるぞい!


 次に紹介するのは俺ことバルだ、ちょっとだけ優秀な魔術師設定だったのに剣で敵を一刀両断してるシチュエーションが多すぎて剣士キャラと勘違いされてそうだけどホントにただイケメンで腕に覚えのあるだけの魔術師である。なんだかんだでリリィに振り回されて魔王討伐なんて厄介事に巻き込まれてるけど俺は無事可愛い女の子を紹介してもらって結婚できるのだろうか?


 え~、次は『傭兵ギルド』から引っ張ってきたコレットちゃんですね、金髪碧眼でスタイル良し性格良し・・・・・・一言で言うと『お色気キャラ枠』ですね。一応大盾と槍を装備して前衛も兼任していて〝メイン盾〟ですね。皮装備のジョブに遅れを取らなそうである。


 最後に紹介するのは『魔術師ギルド』から引き摺ってきたジェシカちゃんですね。俺を差し置いて魔術師キャラぶるなんて小生意気ですねぇ?パールホワイトの綺麗な髪を肩の辺りでぶつ切りにしたこれっていわゆるセミロング?顔は童顔で可愛らしいのがむかつきます!得意魔法は氷雪と貫き。


 何かやたら女が多い気がするって?優秀な男や勇敢な男は前線で頑張ってるか死んでるらしいです。

 これでもかつては〝英雄〟と呼ばれていたリリィが居たので健闘した方です、何だかんだで帳尻は合いましたなあ。


 我が姫君わがままリリィ姫も「少し不安ですがこれなら!」と安心したようでございます。

 そして早速飛行魔法を発動していざ戦いへ・・・・・・イクゾーデッデッデデデデ!カーン!


 

 リリィもさすがに二回目の空の旅は周囲を見回す余裕があったみたいで指を指しながら「あの街前遊びに行った事あるよー」とか無邪気にはしゃいでいる。それに対して新参二人はがっくがくに震えてお互いに抱き合ってる始末だ、ここにキマシタワーを建てよう。


 さて、それで今回の任務だが以下の通りだ。

 

 ・まずは南西戦線に助力した後リリィの権力を使ったり敵兵を脅して魔王の現在地を調べる

 ・魔王を倒す


 凄くシンプルな作戦だ、南方戦線とか無視して魔王を倒そうという俺の案は三人の数の暴力の前に却下されました。完全なる横暴である。聖杖〝陽光〟の力で呆気無く南西戦線は押し上げられるだろうとリリィは性懲りも無く慢心していた、この判断が後にどの様な結末を生むか彼らはまだ知る由も無かった。


◆◆◆◆◆



「左翼もう持ち堪えられません!至急援軍をお願いします!敵軍は巨人を中心の編成ですので魔術師を回してください!」


 「中央軍劣勢、リッチの集団に盾兵部隊がどんどん焼かれています!弓兵を回してください!このままでは全滅だ!!!」


 「右翼はなんとか持ち堪えられているがとても他の部隊に回せる余力はないぞ!援軍はいつになったら到着するんだ?!」


 「斥候部隊によると左翼にガーゴイルの大群が敵援軍として向かっているとの報告があります!数百体規模の大群です!」


 「・・・・・・」


 連合軍南西支部千人長フィデリオは死を覚悟していた。

 毎日毎日撤退撤退の毎日だ、戦況が優勢になった事など無く勇敢に援軍としてやってきた兵は次の日には敵兵の腹の中だった。


 そもそも彼は本来ここの兵達を指揮出来る器ではなかったし経験も不足していた。それでも彼がこの軍の指揮をしているのは上の立場の者達が全員死んでしまったから押し出される形で今の立場に立たされている。


圧倒的な〝個〟の力を持つ魔物達が群れを成し〝軍〟として軟弱な人間の兵を八つ裂きにしているのだからそもそも最初から無理な戦だった。

 だがそれでも引く事は出来なかった、最初は策を弄し的確に敵戦力を減らそうと考えたが搦め手を使うのは敵も同じで空と地中からの奇襲、理不尽な速度で肉薄しその一振りで着実に兵を殺していく夜襲部隊に心も身体もぼっきぼきにされていた。そして策を弄する為の資材も底を尽きていた。

 後はガリガリこちらの兵力を削られ全滅し名誉の死を待つのみだった。


 かつて人間界には〝英雄〟と呼ばれる者達が居たという。魔物を少ない人数でバッタバッタと切り倒し数々の偉業を成し遂げる凄い奴である。

 それが何と現代にも存在しその8人の英雄に踏破出来ないダンジョンはないとまで言われていた。

 しかし彼らはあるダンジョンに『魔王』に対抗する為の伝説の武器を求めて冒険に出た後消息を絶った。彼らのみがこの軍の唯一の希望だったにも拘らずだ。

 〝レッドストーン大洞穴〟・・・・・・あんな人を殺す為のダンジョンなんかに貴重な戦力を差し向けたあげくに全滅させた奴らを思いっきりぶん殴ってやりたかった。いくら英雄が強いと言えど戦況をガラっと変える程の力はないだろう。だがそれでも今ほどは追い込まれなかっただろうとフィデリオは愚考した。


 ・・・・・・本当は分かっているのだ、ありもしない戦力に思いを馳せぐちぐち言うぐらいなら今のこの絶望的な状況を〝ほんの少しでもマシ〟にする為の妙案を考えるべきなのだ。与えられた戦力を適切に割り振るのが俺の仕事なのだから。


 「・・・・・・左翼の弓兵を中央軍に移動させ中央軍の魔術師部隊を左翼に回せ。左翼はガーゴイルの群れが頭上より奇襲を仕掛けてきた場合に対処できるよう空の監視を密にしろ。右翼はそのまま決死の防御戦を継続せよ。私はサンセットの街へ徴兵を促す文を書く為しばし離席する」


 正直ここで伝令を置いて自室へ引っ込んだのは愚かとしか言い様がない選択だった。実際伝令の兵達も唖然としている。だがフィデリオももう限界だった、少しでも頭を切り替える為に時間が必要だったのだ。



◆◆◆◆◆



「つっこむぞ、つかまれッ」


 バル達は無事前線に着くとすぐに連合軍の仮拠点へ向かい参戦する旨を伝えようとしたが生憎責任者は体調を崩しており会う事は適わなかった。

 仕方ないので詰めてる兵にどうすればいいか聞くと「左翼が劣勢だから出来れば援軍に行ってやってくれ」との話だったので我々は早速向かったのだった。


 ━━そこには蹂躙されつつある左翼軍の姿があった。

 微弱な魔力でブルージャイアントに必死に魔法を放つ魔術師。

 何とかゴブリンの軍勢を抑えようと大盾を並べ槍を突き出す重層歩兵。

 弓兵はブルージャイアントの目や顔を狙い矢を放つ・・・・・・もはや弾幕を張れるほどの数が居ないのだ。


 もはや『連合軍』なんて響きの似合わない無様な戦いぶりであった、辺境の小国の方がもう少しマシな戦いをするだろう。しかしそれもある意味必然、彼らは本来戦力と呼ぶには未熟過ぎる初心者冒険者や今までは斧や鍬を握って日々戦いとは無縁の生活を営んでいた農民や町民なのだ。


 すぐにリリィが聖杖を構え祈りを捧げる。

 一刻も早く彼らを救わなければいけない、しかし焦りは無い。彼女は一種の没入感を感じていた・・・・・・聖なる杖の力に触れ焦りと恐れは虚空へ消えた。


 ━━勇敢なる兵士達に力を

 聖杖から赤い光が溢れ出し周囲を飲み込んでいく。その姿を見届けた後バルはコレットとジェシカにリリィの護衛を任せ単身敵陣に乗り込んでいった。


 光が連合軍左翼を飲み込んだ瞬間不思議な事が起こった。

 左翼軍の全兵士の傷付いた身体と折れそうな心が癒えていった、しかしそこに安らぎは無くむしろ身を焦がすような怒りと憎しみが身体の隅々に溢れ、その瞬間兵士達は『人間』を辞めた・・・・・・彼らはただ魔物を虐殺する為の剣となった。今まで押し込まれていた重層歩兵が一歩一歩着実に歩を進めながら敵を轢き殺していく、その槍は敵の回避を先読みした必中の槍と化しゴブリンをまるで羽虫を払うかのように着実に殲滅していった。

 魔術師達は長文の魔法を詠唱し手数は減っても巨人を一体一体着実に焼き払う様になった。

 弓兵の矢は針を通すような精度で遠距離から巨人に致命的な一撃を繰り返していく。


 フィデリオの指示で魔術師を増員した左翼軍は敵主力の巨人達を着実に無力化し左翼はあっと言う間に息を吹き返しつつあった。しかしそれでも残った兵、ゴブリン、コボルト、オーガ、リッチに援軍のガーゴイルは最後の抵抗を試みようとしたが横から突っ込んできたイケメンがそれを許さなかった。


 「万軍を滅するは軍神の理不尽な一撃」


 呪文を唱え『百合姫』の鞘から燐光がほとばしりバルは力強く敵軍に向けて斬撃を放つ。

 放たれた斬撃は此方から彼方まで敵軍を一直線に両断する。逃げ惑っていたゴブリンも整列し突入しようと身構えていたコボルト達もその一太刀を持って一瞬の内に絶命した。

 難を逃れた運の良い雑兵達も怯え逃げ出す前に返す刀で切り伏せられ気付けば魔王軍右軍は壊滅していた。それを見ていたガーゴイル部隊はこの結末を伝えようと踵を返そうとするも間に合わずバルの魔法によってクズ石へと成り果てた。

 

 魔法により丁寧に索敵をしたが敵影は無い、確かに敵兵を殺し尽くしたはずだ。

 俺はそれを確信すると背後から回り込み敵中央軍を壊滅させようと歩を進める友軍へ追いつく為に走り出す。飛行魔法を使えば速いが的になってしまう、攻撃魔法の一つや二つは余裕で弾く強力な魔法ではあるがわざわざ的になって移動するのも愚かだからだ。


 


 

聖杖〝陽光〟は聖なる杖とか光をもたらすとか言われてますが実際は武器と言うより兵器なので勝利をもたらす為には手段を選ばず様々なエグい奇跡を起こせる代物となっております。

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