第三話 土曜日は休日
みじかいです
「ああ~朝日が目に染みるんじゃあ~」
「もう夕方だよ!?とりあえず宿を探そうか」
どうもバルです、昨日が〝初夜〟でした。可愛い女の子とはあはあ言いながら必死に頑張ってみた結果なんとか彼女の目的は達成出来たみたいです。
『でんせつのぶき』を求めちゃうなんて彼女も中々やんちゃなガールでした、都会の女の子のナウでヤングなセンスだと普通なのでしょうか?ど田舎のイケメンには分かりかねるセンスデース。
俺とリリィちゃんはダンジョンで『ふたりはなかよし』になれました。
死地を男女で乗り越えると友情が芽生えるんですね、これはいつかどっかのギルドの教師に戻れたら伝えるべき内容だな。
だが残念ながら彼女は『地神の加護』を授かる子ではなかったみたいです、ねっとり事情聴取した結果彼女は『光神の恩恵』持ちだそうです。よかったらどっかの邪神を断罪して葬って欲しいなってバルはバルは頼み込んでみたり!
でも事情を話したら「今度女の子紹介するよ・・・私の頼みを聞いてくれるなら・・・・・・ね?」と意味深な発言を頂きました。まさかのお願い倍プッシュである。でもダンジョンで地神の加護持った都合のいい女の子が見つからなかった以上この藁・・・・・・掴まないわけにはいかない・・・・・・!!
将来の嫁の為なら邪神すらも張り倒せるかもしれない。
そんなこんなで今日はゆっくり休む事にしました。だって疲れたし・・・・・・。
冷静に考えると一日半以上旅にダンジョン探索にと走り回っていた訳だ、頭おかしいんじゃないかな・・・。
もし生徒が俺と同じ旅程を組んでたら張り倒すかもしれない。
本日の宿は『イノシシのひづめ亭』となっております。
女将は先日イノシシを売りつけてきたおっさんの奥さんで、その地味な服の上からでもたわわな肢体が窺えるスケベボディの持ち主でございます。土曜日のたわわ。
駄菓子菓子、正面に座るリリィちゃんに『つめたいまなざし』を食らわないように精一杯凝視しないように心掛けました。女の子は連れの視線に敏感ってそれ一番言われてるから。
夜ご飯は「一番いいのを頼む」と注文しておいたので良い奴が来るでしょう。
俺は自慢ではないですが料理の教師ではないので女の子と食べる海鮮料理ならまだしも山の幸までは知識に無いので女将に全任した。キミの任務は簡単だ・・・・・・茶髪美少女に一番響く料理を持ってくるのだ。
そして運ばれてきた料理はこんな山の麓の街に似合わない料理の数々だった。
ごろごろ鶏肉のシチューにふんわりやわらかパン、イノシシ・鶏肉・川魚と野菜の焼き串だ。
「気温も下がってきたからねー、まだちょっと早いけどシチューが美味く感じる季節になってきたよ!シチューとパンを一緒に食べると最高だよ?焼き串には酒が合うんだけど・・・・・・酒はどうする?」
ちらっちらっとこちらを見てくる女将、そんな視線を送らなくても答えはもちろん。
「もらうよ、俺は女将のお勧めで。リリィちゃんはどうする?」
「私は葡萄酒にしようかな」
「あいよー、葡萄酒ひとつにハーピー落としひとつー!」
・・・・・・今不穏な名前が聞こえたんですけど?
だが俺は女将を信じる。おっちゃんを信じて正解だったし女将が出した料理も実際美味い。
そんな女将の出す酒だ、不味いはずがねえ。
「ハーピー落としってなんだろうね?来たらちょっとだけ飲ませてよ」
リリィがにっこり笑顔を浮かべながらお願いしてきた。
本来の彼女はこうなんだろうな、迷宮の奥底で見せたあの表情の方が異常だったのだ。
リリィは人懐っこくて可愛い少女だった、話してるうちに段々分かってきた。
そんな彼女が〝聖杖〟を求めた理由はなんだったのだろう?聞いてみたいけど今は聞くべきでは無い気がしていたんだ。
それからは『水神』の話をしながら盛り上がった。
彼女は「それってホントに神なの?」とか笑いながら冗談を交し合った。
それは本当に甘く優しい時間だった、これからお互いを待ち受ける困難を忘れてはしゃいでいた。
お酒を飲むと時間が加速する、あっと言う間に深夜になり疲れが身体に押し寄せ眠気に至る。
そして疲れと眠気は判断力の低下をもたらす。
「今日は一緒に寝よ~!てーいっ!」
それ以降の事は覚えていない、でも不思議とエロい事をしていない事だけは断言できる。
俺もリリィも例え最高の酒と料理を楽しんでいたって忘れられないのだ。
彼女の仲間が全員死んだという事実を・・・・・・。