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婚活魔術師と不思議なダンジョン  作者: 冬空さんぽ
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第二話 激動の金曜日

長いです

 むかしむかしあるところにとてもまじめでゆうしゅうなまじゅつしさんがいました。

 かれはひどうなすいじんさまにいっぽうてきにこんやくをむすばれそうになりたいへんこまっていました。

 なんといったってかれはゆうしゅうなまじゅつしでありながらけんしでさらにいけめんだったのです。

 くっそいなかのさびれたまちにたたずんでてもすいじんさまのむすめがほれてしまうのもむりはないことなのかもしれません。

 でもかれはそのむすめとけっこんしたくないのでにげたそうです、だってどれいとかいやだし。

 なのでかのじょとけっこんするよていの〝すいようび〟までにきれいでおかねもちでやしなってくれるびしょうじょをさがしてけっこんするんだって!


 そんなこんなで我々は野を越え山を越え時には観光をしつつラハール火山の〝レッドストーン大洞穴〟にやってきたのだ。


 ここに来たのには理由がある、そう、この大洞穴は麓の街に住む人々『地神の加護』を受けてる人々の中でも魔法や武術に秀でた人々が鍛錬を積んだり近場だからとりあえず金策しに行くかーぐらいの冒険者がよく訪れるダンジョンである。


 麓の街モグリーでも一応女の子に声をかけてみたけどほとんど既婚でした・・・・・・そもそもこの世界の結婚って大抵両家の親同士が決めて許婚となり十五歳には結婚するのが基本なので家を飛び出て冒険者になったり親に捨てられて旅人もしくは盗賊になってる人ぐらいしか独身のままってのがなかなか居ないんだよね。

 そんな世界で何故俺が独身を十八歳まで貫いていたかと言うとうちの母親があらゆる縁談を止めてたからです、大体母上が悪い。


 ラハール山はかつては破局噴火、スーパーボルケーノが起きたとされるすごい火山だ。

有史以前に大噴火を起こしたとされるこの山はなるほど確かに他の山とは一味違う巨大さだ。大規模な噴火を過去に何度も引き起こしているにも拘らず綺麗な山体を残し時には信仰の対象にもされるこの山は遙か彼方の大陸中央からでも見る事が出来るこのエトナ大陸南部の観光名所の一つである。

 その圧倒的な存在感を誇る山の中腹にある〝レッドストーン大洞穴〟もある意味有名なダンジョンだ。

 有史以前から存在するといわれている〝神々の恩恵の残る迷宮〟のひとつでその最深部へ到達した者は一人も居ない。踏破不可領域の一つである。


 そんな恐ろしいダンジョンのひとつであるこのダンジョンの五層あたりまでが大体件の『地神の加護』を持ってる人たちの修練場と言われている。だが今回は一応二十層あたりまで探索する予定だ。

 理由としては五層まででは割と誰でも余裕だろうし俺が助けて恩を売って婚約を申し込むと言う古より伝わりしダンジョン恋愛ゴールデンコンボをキメられるようなシチュエーションが発生しないと踏んでいるからだ━━恋愛には修羅場とドラマが必要だからね。


 そんなこんなでさっそくダンジョンへ突入していく、ダンジョンに入るとあたりは暗闇に包まれていた・・・・・・なんてことはなく松明で丁寧に照明がついていた。

 ここは村娘が冒険者のお父さんに弁当を届けに来たり伝説のダンジョンを雰囲気だけ楽しもうとやってくる観光客も遊びに来るレベルなので仕方が無い事だった。

 モンスターもこのあたりは丁寧に除去されているのでずんずん進む、正直最初から最後までがっつり冒険尽くしだと勘違いしていた田舎者のバルは若干拍子抜けしていた。


 しばらく進むと「この先危険」と書いてあるよく見る立て札の横にぽっかり縦穴が空いていた。

ここでダンジョンの昇降をするのだろう、ものの本を読むと大抵階段で繋がってるっていうパターンしか見かけないけどここはそうではないらしい。


 縦穴をずるりずるりんとロープで降りていく、何かやっと冒険してる気分になって来たぞ。

 穴を抜けるとそこには仄暗い闇の中に光る鉱石が光源となっているおしゃれな空間が広がってました。

 あれです、間接照明に照らされたようなおしゃれな雰囲気です。ちょっとした穴場になってる酒場みたいだー。

 そしてようやくモンスターくんがお出ましです、俗に言うアンデッドと呼ばれる系統の上位種リッチさんですね。魔法使う骸骨くんです。

 

 「神速となりて仇敵を滅せよ」


 呪文を唱えると我が愛剣『百合姫』の鞘から燐光がほとばしり神速の居合い抜きが放たれる。

 俗に言う『魔法剣術』である、冒険者ギルドに勉強に来る冒険者くんが最初の授業で小生意気に教えてくれとせがんで来るアレである。

 百合姫がこちらに気付き呪文を唱えようとゆっくりうごめくリッチくんの身体と魂を消し炭にしてくれたのでダンジョン探索を続ける事にする。まだまだ第二層と言う事で出てくる敵は可愛いもの、リッチの群れにレッドドラゴン、たまにデビルオクトパスやポイズンパープル(紫毒竜)等が出てくるぐらいである。


 そんなこんなで気付けば五層、十層、十五層とゆっくり探索をしているけど全然可愛い女の子なんて居ない・・・・・・。それどころかムキムキマッチョなおじさんやイケメンライバル冒険者すらいないのだ。


 「うーん、何でこんなに人が居ないんだろう?」


 これは緊急事態である、ダンジョンに危険はつき物。

 今の俺にとって一番致命的なミスは「こんな危険なダンジョンに可弱い女の子なんて居るわけ無いじゃん?」って事なのだが自分がちょっとだけ冒険の心得を持ち合わせているだけに気付かなかったのだ。


 しかしここでまさかのバルくんそのままダンジョン探索続行である、だって奥の方に行けば行くほど可愛い女の子がピンチになって「助けてそこのイケメンさん!なんでもしますから!」が発動すると考えている為である。


 そして区切りの第二十層、ここへ来ても自分以外の冒険者は見当たらない。

 辺りには先程切り刻んだスノーテイルと呼ばれる尾の先だけ白い巨大蛇が血みどろになって横たわっている。バルは気付いていないがこの第二十層を縄張りとする長だったりする。


 「多分今いるのが第二十層であちらの縦穴を下れば二十一層かあ・・・・・・ここまで階層を丁寧にマッピングしても冒険者が居ないなんて奇妙だな」


 ちなみにバルは知りえない事だが秋のレッドストーン大洞穴は〝入れ替わりの季節〟と呼ばれる危険な時期で下の階層と上の階層のモンスターが縄張り争いや支配する階層を奪い合う危険な時期で知識のある地元の冒険者は決して近付かない季節なのだ。


 「何か余裕そうだしもうちょっと潜ってみるか」


 バルはそう判断した、実際ここまでの道中は余裕で「この際女の子の代わりに神代の秘宝の一つでも持ち帰ってそれを餌に女の子釣れば良くない?」とか邪悪な事を考えていた。



◆◆◆◆◆


 

 ━━自らの実力を見誤り慎重さを忘れ慢心した冒険者には必ず死が訪れる。


 今まで何度もバルが教えてきた事だ。バルは技術以外にもこういった心構えも当然教えていた。

 しかし言葉として知っているのと身をもって経験し実際の行動に移せるのとはまた別なのである。


 〝レッドストーン大洞穴第二十七層〟そこにもこの言葉を忘れ今まさに死神の鎌に首をかかれそうになっている少女が居た、名をリリィと言う。

 赤みがかった茶髪を長く伸ばし黒いローブを身にまとった小柄な少女、その手には神木から削り出された小さな杖が手に握られている。


 「はぁはぁ、うそ・・・・・・こんなの嘘です・・・・・・確かに神託を頂いたのに・・・・・・」


 彼女は偉大なる光の神から神託を受けある者を滅ぼす為に力を蓄えていた冒険者達の一員である。

 このダンジョンへはある『武器』の伝説を追って探索する事になった。

 その輝きは夜空を照らし暗雲立ち込める時代に光をもたらす伝説の聖杖『陽光』、彼女達の目的の為にはとにかく強力な武器が必要だったのだ。


 仲間は死に魔力は尽き彼女の仲間を捕食した化物達は今も私を追っている。

 この迷宮の地図を描いていたリーダーのアルも今は化物の腹の中だ。


 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない


 危険な迷宮だって知ってた、何て言ったってあの〝レッドストーン〟である。

 長い歴史上幾百の熟練冒険者が未知を求め道半ばで力尽きた魔の迷宮。第二層から既に死闘で十層を越えた辺りからは正確な地図を記せた者はいない。

 それでも私達は何度も死に掛けながらも前に進めた、だって私達は〝英雄〟と呼ばれ幾つもの迷宮を踏破してきた歴戦の冒険者だ。この迷宮だってきっと時間を掛ければやがて踏破出来る。


 ・・・・・・そう言って元気付けてくれたみんなはもういない。

 アルもギザもアリアもホークもルーデルもボリスもコニーも全員!!!全員死んだ!!!!!

 こんな地の底で仲間を失ってしかも回復術師の私だけ生き残って私にどうしろって言うのよ!!!

 何が神託よ!!神なんて信じなければ良かった!!

 普通に医療院で静かに癒者として生きて居ればよかった!!!

 もう終わり・・・・・・終わりだよ・・・・・・私もそっちに行くよコニー・・・・・・

 私ももうすぐ星になるよ、そうしたらお母さんもお父さんもきっと私を見つけてくれる。

 少女は傷だらけの足を抱え込み息を潜め最期の時を待った、信じる神に裏切られ遠く離れた家族への思いを募らせながら静かに死を待っていた・・・・・・。


◆◆◆◆◆


 「むむっ、なかなかイケるな」


 小腹が空いたのでラハール山の麓の街で買っておいた『ドスいのししの肉』を魔法で熾した火でじっくりこんがりウルトラ上手に焼いたものである。

 イノシシは臭いってよく聞いていたけど俺が今食べてるイノシシからはそんな気になる匂いはしなかった。


 「うちはね、わざわざイノシシを養殖しているしすごくいい餌と適切な処理を施してるから絶対気に入るはずだよ!」


 とおっさんが自慢げに話してただけはある。実はちょっと憧れてたんだよねーこういう豪快な丸焼き。

 アクアはくっそど田舎の港町だから基本的に魚とか食べるには悪くないんだけど山の幸には縁遠かったのだ。そしてダンジョンで豪快にかぶりつく肉がうんまい!下品にだらだら脂を垂れ下げてる肉をパリパリバリバリ喰らいつく。ジューシーな歯応えとイノシシ特有の濃厚な〝肉〟の味が口の中にじゅんわぁ~っと広がって「こんなデカイ肉運んでダンジョン行けるわけねーだろジジイ」と文句をつけた巨大肉はあっと言う間に完食してしまった。


「ぁあ~なんかお腹いっぱいになったら眠くなってきちゃったゾォ」


 昨日は夜通し空を飛んでたし朝からは街で女を漁ってたし昼前からダンジョンに潜ってたしでさすがに疲れが見えてきた。普段バルは夜の十時には寝て朝の五時には起きる、田舎者の朝は早い。


 「でもどうせならベッドで寝たいな、野宿は仲間が居ないと危険だって教科書にも載ってたし」


 そんなこんなでバルは眠気を覚ます為に魔法でコーヒーを召喚し夜の探索に備える。

 二十層を越えた辺りからダンジョンの雰囲気が少し変わった気がする、何というか小型の魔物を見なくなったのだ。きっと小さく弱い魔物はこれ以降の階層では生活圏を広げていけないのだろう。


 「いよいよ本番に近付いてるって所かな~」


 バルにはまだまだ余裕がある、一太刀で倒せない程の強敵はまだ出てこない。全て一撃で両断している。正直バルはちょっと調子に乗り始めていた。「案外冒険者としての才能あるかも?」ってつい呟いちゃうぐらいには慢心していた。


 そして地上から数えて二十七層目に辿り着いた。

その階層は今までの階層に比べて『何かある』と思わせる雰囲気のような物があった。それはきっと人の死の匂い血の匂い絶望の匂い・・・・・・そういった物が迷宮の奥深くから漂っていたのかもしれない。


 「魔物の死骸・・・・・・お仲間さんとついに出会えるかも?」


 迷宮に立ち入って初めての人の気配だった。バルは安心した、あまりにも人の気配がしなかったのでちょっとだけ心細かったのだ。一人ぼっちは寂しいもんな。

 死骸は火山狼の群れだ、体長三Mほどのちょっと大きい狼で本来はダンジョンの深層に群れを成す。

 見た目は普通の狼と大差のない茶色い奴である。

 死体の周りを見る限り結構な死闘を繰り広げたようで二人ほど人間の死体もあった。

 狼に奇襲でもされたのだろうか・・・・・・どちらにせよ腕の良い冒険者では無さそうだった。


 ガリガリ魔法のチョークで地図を描きながらダンジョンを探索する。

 ダンジョンを探索しながら地図を描くのは冒険者の基本でこれを怠っただけで簡単に帰り道が分からなくなって死ぬらしい。でもそれは必然と思える、魔物との戦いは一瞬一瞬が命のやり取り。

 撤退戦で逃げる際に道に迷ってる暇など無いのだ、みんなそれを知ってるからこそ手間を惜しんでガリガリ地図を書く。


 地図を描きながら朝食について考え、ぼーっとしてる時そいつはやってきた。

 『魔王の怨霊』と呼ばれる魔物だ、古来の魔王にこいつに似た奴が居たからそう呼ばれるようになったらしい。頭は獅子胴体と翼は龍、数多の伝説を持つその魔物は迷宮と言う狭い世界に君臨する『魔物達の王』だ。その爪は大盾を貫きその牙は英雄の全身鎧を噛み砕くと言われる魔物だが━━


 ごとりっ


 首を切り伏せれば死ぬのだ、生き物だから当然なんだけど。

 こいつの素材は高値で売れるとものの本に載っていたので魔法で凍らせ魔法の袋に丁寧に収納していく。剥ぎ取り用のナイフでは歯が立たなかったので仕方ない。

 大昔では魔法の技術も未熟でこんな魔物に大騒ぎしていたみたいだけど現代の魔法ならこんなものだろう。伝説とは誇張されて伝えられるものだしね。


 そんなこんなで魔物を切り伏せ先に進む、と言ってもこの層には魔王の怨霊以上の魔物は見つからなかった、火山狼の群れや氷雪龍と雷電龍のつがいにエンシェントリッチぐらい。罠も無く平和なフロアだった。


 そしてそんな平和なフロアの片隅で遂に俺は宝を見つけた。

 赤みがかった茶髪も黒いローブも血だらけ。もしかしたら死体か幻惑魔法による疑似餌かもと警戒したがそうでない事はしばらくして分かった。


 「何か震えてるけど大丈夫?」


 しばらく話す相手も無くダンジョンを探索していたので声は若干ガラガラであった。

こんな事なら発声練習でもしながら探索して居れば良かった。

 声は返ってこなかった、少女はこちらに気付いたようだが目を見張り震えていた。

 冷静に考えればこんなダンジョンの奥深くで可憐な女の子が怪しい男に声をかけられたらどっかの邪神<水神>のようにあんな事やこんな事をされるとでも思ったのかもしれない。


 「血だらけだけど大丈夫?君も独りで潜ってるの?」


 「っ・・・・・・あっ・・・・・・人間?」


 ・・・・・・強姦魔どころか人間とすら思われていなかったらしく軽く凹む。

 だが遂に迷宮で女の子と知り合う事が出来たのだ!途中からすっかりダンジョン探索に夢中になってたけどそういえばこれが目的だったのだ!駄菓子菓子、ここで焦って結婚云々と言い出すほど俺は初心者じゃない。まずは事情聴取だ。


 「人間ですよ、今日初めてダンジョンに潜ったんですがようやく人に会えて安心しました!俺の名前はバル、昨日冒険者になりたてほやほやの十八歳です!」


 「・・・・・・私はリリィです、回復術師のリリィ。ここへは『伝説の聖杖』を求めてやってきたんだけど・・・・・・仲間は全員死んだわ、七人とも全員ね。」


 「えっ・・・・・・」


 暗い女だと思っていたがどうやら仲間が全滅したらしい、死んだような顔をしているのも当然だ。実際死に掛け今も絶望的な状況なのだろう。


 ・・・・・・正直恩を売るなら今しかないっていうタイミングだろう。それは分かっていた。

 でも実際死に掛け絶望し震えている彼女を見た時俺はそんなゲスい思考には至れなかった。


 救いたい、この子を。


 純粋にそう考えてしまったのだ。


 「・・・・・・それじゃあ手助けが要るだろう、俺が手を貸そう」


 「えっ・・・・・・でも私は・・・・・・」


 「魔力が尽きているんだろ?それならマジックヒールポーションがまだいくつも残っているし・・・・・・ここで迷宮から背を向け街に帰れば君の仲間達の死は本当に無駄になってしまうよ」


 「・・・・・・」


 彼女はそれからしばらく悩んでいた、当然だろう。だって見ず知らずのイケメンにはただでさえ女の子は警戒するものだし自分にとってあまりにも都合が良すぎる展開なのだ。誰だって疑って掛かるだろう。


 「コーヒーでも淹れようか。頭が冴えて少しでも考えがまとまる手助けをしてくれるかもしれない」


 「もらう・・・・・・」


 それからはコーヒーを淹れ彼女の返答をじっと待った・・・・・・。

 待って待って待ちまくったがやがて気まずくなって来た。

 だって本当に何にも話してくれないし、でもそれも当然なのか?仲間はみんな死んだんだもんな。

 冒険者なんてみんな死を覚悟して挑むものだと思うけど・・・・・・実際してたんだろうけど。

 凄絶な死闘を実際目の辺りにしたらこうなるものなのかもしれない、ボウケンシャーになったばかりのバルには実感は沸かないので想像するしかないが。


 それからしばらくして・・・・・・彼女は静かに・・・・・・ゆっくりと俺に頭を下げ同行を求めてきた。

 その真剣な眼差しは英雄譚に描かれる聖女のようで神聖な何かを感じた。

 俺は首肯で持って了承し身支度を整え次の階層への道を先導した。


 そこから先は大きな出来事も無く静かな探索が始まった。

 俺と彼女は本当に必要最低限のやり取りしかしない、それでも確かな連帯感を感じた。

 巨龍の波を越え石の巨人を砕き強大な魔力を持つ山羊人達を切り伏せていった・・・・・・。

 永久にも感じた冒険は唐突に終わりを告げる、〝それ〟は壁に飾られるようにそこにあった。


 〝聖杖『陽光』〟人々が魔族に蹂躙され世界に救いが無かった時代を終わらせた杖。


 リリィはその杖を震える手で手繰り寄せうずくまり、静かに泣いていた。

 バルはそんな彼女を見つめ静かに佇んでいた。



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