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婚活魔術師と不思議なダンジョン  作者: 冬空さんぽ
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第一話 絶望の木曜日

 バルは激怒した。

 必ずやかの邪知暴虐な水神から逃げ切って平和に暮らしてやると。



 今朝は最高の朝だった、夏から秋へと移り変わり鬱陶しく暑苦しかった風が清らかで涼しい風へと変わり非常に快適な朝だった。鳥達も良い天気を喜びぴーちくぱーちく鳴いていた。最高にグッドな朝だ。


 俺は速やかにいつもどおりの朝の準備を終え今日の仕事に向かう。

 俺の仕事は冒険者ギルドの魔術教師だ、ギルドにやってくるひよっこ冒険者にクールな魔法の数々を教えるだけの簡単なお仕事だ。命の危険も無い安全で堅実な仕事だ、これから命の危険が伴なう危地へと旅立つ冒険者へ知識を授ける悪くない仕事だ。


 午前に魔法の授業を終えたら午後からは戦術の授業だ。

 魔法使いなのに何で剣や槍、索敵まで教えるかって?そりゃあここがど田舎だから剣と魔法、それぞれのスペシャリストを呼べるような規模のギルドじゃないからさ。


 そもそもギルドってなんだよって?

 まあギルドって言ったらギルドさ、職業毎に群れて組織を組んだらそれはギルドと呼ばれる。

 冒険者ギルドなら秘境やダンジョンへと冒険する技能を持った人々の集いというわけだよ。


 話が大分逸れたけどここからが本題だ。

 俺はいつも通り最高に平和な一日を過ごしていた。もちろん馬鹿な教え子が魔法を暴発させたり指導用の剣で異国の冒険者見習い君同士がチャンバラ始めたりとかありきたりなトラブルはあれどそれは些事で、正直どうでもいい出来事なので割愛する。

 問題は家に帰った後だ、母親がどこか悲しげに俺を見てきた。

 正直意味が分からなかった、俺は別に家に篭って働きもしない訳でもなく外見が悪いわけでもなく何処に出しても恥ずかしくないちょっとだけ優秀な魔術教師だ。

 強いて言うなら独り身な事か・・・・・・そうか、もしかしたらいい加減結婚しろと言われてしまうかもしれない。俺は恋人が居た事はあれど結婚はいまだしていない、18歳と言えば世間では少し大きな子供がいても不思議ではない年齢なのだ、きっとそれだろう。


 その予感は残念ながら的中した、しかも予想外の最悪の内容だった。

 水神の娘さんに婿入りしてほしい・・・・・・そう言われたのだ。

 曰くその娘さんがたまたま港を散策していた際に一目惚れしたんだとか、イケメンはこういう所が辛い!なんて考える隙も無く隙を生じぬ二段構えで母上は爆弾発言をしてきた。


 「それで急なんだけど来週の水曜日には結婚したいって言ってきてるんだけど・・・・・・」


 あまりにも唐突な話だった、ただ理解は出来る。

 水神の加護を受けてるこの町の住人は水神に意見など言えないのだ。

 だから俺は水神様に意見など言えず彼が結婚しろと言った時点でそれは確定事項でありどうせ結婚するならすぐ結婚しろって話だろう。

 ちなみに何故水曜日かと言うと水神にとって縁起のいい曜日が水曜日なのだ、すいすい水曜日だ。

 そんでもって今はもくもく木曜日だ、丸々一週間時間がある事を神に感謝(水神以外の)。


◇◇◇◇◇◇



 そういう事で今日から俺は婚活したいと思います。

 『え?』って思うかもしれないけどそれ以外俺に生き残る術は無いのだ。

 そもそも何でそこまで水神様のご家族になりたくないかと言うと今まで水神様の系譜と結婚してきた人々の話をせねばなるまい。

 ざっくり言うと水神族と結婚すると性奴隷にされたあげく一生言いなりにさせられてしまうとか。

 でもよく考えればそんなの当たり前である、水神と結婚すると言う事は水神側が興味を持った人物・・・・・・それも異性としてだ・・・・・・で先程説明した通り水神のけんぞくぅ!として強制的に契約を交わさせられているこの町の住人は水神に絶対逆らえない。

 そんな逆らえない水神達と常時一緒に生活していたら当然の権利の様にいい様に使われるのは当然である。誰だってそうするし俺だってそうする。


 なので俺はその話を聞いた晩から行動に出た。

 まずは両親と幼き妹に手紙を書き自室の机に置いて家を出る。

 内容は水神の婚約を蹴ってどっかで幸せに暮らすね?といったものである。

 当然水神は怒るだろうから遠くに逃げたほうがいいよという旨も一応書いておく。


 そして冒険者ギルドのマスターの元へ。

 きっとこれが大都市のギルドの長だったら連絡が大変だったろうけどくっそど田舎にある冒険者ギルドなウチでは出会って4秒で承諾されすぐ話し合う場が持たれた。


 「けどよぉ、実際問題そんな急に辞めたいとか言われても困るんだが?ただでさえ人がいなくて剣槍と魔法の教官を兼任してもらってたのによぉ」


 ギルドマスターは不服そうだった。当然だろう、経営者からしたら中途半端に優秀な奴がある日突然仕事辞めます、引き継げる相手はいないけどね!なんて言われたら困るのは当然である。


 「でもどうせ水神の婿になんてなったらここで働けないんですよ?いっその事教練課程を無くすとか」


 「無茶言うんじゃねえよ・・・・・・」


 結局話し合いは二時間程も続いたがギルドマスターが引き継ぐ形となった。

 冒険者ギルドを出て行く際にかなり恨みがましい目で睨まれたが仕方が無い事だ。


 「さて、これでいつでも出て行ける事になったわけだけど何処に行くかな?」


 婚活するぞ婚活するぞって言っても誰でも言い訳ではないのだ。

 別に顔はどうでもいい財力もどうでもいいむしろ性格もよほどやばい奴以外はどうでもいいのだ。

 問題は水神の呪いから守ってくれる人、地神の加護を持ってる女性だ。

 地神はどっかの野蛮な神と違って人々を暖かく見守り続ける大地の神だ。

 そしてその眷属は水神の力を打ち消す力を持つという・・・・・・これから絶対水神の恨みを買う俺にとっては必須の要素だった。


 次にどこに嫁を探しに行くか?

 これはダンジョン一択である。何故ダンジョン一択かと言うとまず神々の邪魔を受けない地がダンジョンしかない、神々の恩恵が届かない代わりに神々の呪いもダンジョンには届かない。

 次にダンジョンでなら俺は絶対魅力的に見えるからだ。

 俺は冒険者としてのスキルを人に教えられるぐらい高い能力を持っている。

 要は頼り甲斐のあるところを見せられるダンジョンに潜った方が相手を見つけやすい・・・・・・気がする。

 正直二個目の理由は何とも言えない、実はあらゆる技術を持っていながら実際のダンジョンに潜った事が無いのである。


 「まあ・・・・・・何とかなるでしょ」


 俺は前向きな男なのでとりあえず地神の加護を持っていそうな女の子がいるダンジョンを目指す事にした。その名はラハール火山にある〝レッドストーン大洞穴〟だ。

今更な補足


・この世界では基本的に正当な理由の無い婚約破棄は出来ない


・契約神の加護は〝絆〟のある家族にまで及ぶ


・異なる契約神の加護を重複して受ける事は出来ない、重複する可能性がある場合本人が深く信仰している神の加護が適用される


・意味深に登場した妹には今後出番が有る様で無い

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