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第4章(6)未来への希望

 格納庫の影に控えていたカルパナが顔を覗かせた時は、シャンタニが、のどかを引き摺って甲板を後にしてくるところだった。


「痛いです、引っ張らないで下さいシャンタニさん」

「やかましい、そなた魚臭いぞ!」


 カルパナは上品に微笑む。


「どうなさったのですか、姫様?」


 シャンタニはカルパナに気付くと、引き摺っていたのどかを途中で無情にも放り捨てて戻ってきた。


「空気を読んで戦線離脱してきたのじゃ」


 どうもああいうのを見るとむず痒くなる、と付け加えシャンタニは甲板の二人を振り返り、ふと厳しい顔つきになった。


「ときにカルパナ、本国の情勢はどうじゃ?」

「は……あまり芳しくありません。北部高原の『ムア』は依然拡大を続けており、領域格差による南北部族間の衝突は激しさを増しているとのことです。陛下御自ら仲裁にあたっておられるとのことですが、宮廷でも北部の分離を容認する者が出始めております」


 自分の話で空気が沈んでしまったのを察したカルパナは言い添える。


「悪い知らせばかりではございません。バーラト王家が多大な支援を行った『フォレスタ』が活動を開始し、そこに王族であらせられる姫様が加わっておられることは、本国の多くの民の間に広まっております。これからも姫様の活躍が報じられれば、王家の威光は高まり、民の心は一つになりましょう」

「民の心を一つにするためには、民に未来への希望を与えねばならぬ。今日はそれを、あの者達から教わった」


 シャンタニは小さな拳をぎゅっと握る。


「妾は、もっと強くならねばならんのじゃ」

「頼もしいお言葉。それでこそ、私がお慕い申し上げる姫様です」


 カルパナは嬉しそうに目を細めた。


「あれー、シャンタニさん、どなたかいらっしゃるんですか?」


 のどかの声。


「ああのどか、この者はな……ん?」


 シャンタニが紹介しようと振り向いた時には、カルパナの姿はどこにもなかった。





「雨降って地固まる、か」


 司令塔から飛行甲板の一部始終を見下ろしていたディータ・イル・マヌーク中佐は、そう呟いて肩をすくめた。


「部下達を叱らなくていいのかね?」


 横に立つ艦長のリジーレ大佐が苦笑しながら訊ねる。


「お灸は来週にでもきっちりすえてやりますよ。命令違反以前にあんな無茶苦茶しやがって、待ってるこっちの身にもなれってんだ。でも……」


 甲板では、泣き止んだレーネとナターシャが寄り添っている。

 ディータは顔をほころばせた。


「まあ危険を犯しただけの戦果もあったみたいだし、今日のところは大目に見てやりますか」


 これから『フォレスタ』、そしてあの四人には、より困難な試練が待ち受けているはずだ。

 しかし、今日の戦いで得た隊の結束があれば、どんな試練であれきっと克服できる。


「……ふむ。しかし『ガルーダ』に、あれほど大胆な戦法が可能だったとはな。もっと繊細な機械だと聞いていたが」


 涼宮のどかの奇想天外な作戦には、艦長もディータも驚くほかなかった。


「鳥が魚を食いにちょいと海へ潜るのとはわけが違いますからね。奇跡なんて胡散臭い言葉は使いたくないですが……」

「仮に奇跡なら、強く願い信じる者達の前でしかその力を示さない。君の部下達の力だよ、中佐」


 その時、連合海軍の砲撃で炎上している海賊船団の中から、ひと際大きな炎が上がり、遅れて爆発音が響きわたった。


「海賊大型船、轟沈!」


 見張り員が叫ぶ。


「ちっ……連合海軍、弔い合戦で頭に血がのぼったな。沈めちまったら魔力兵器の出所もわからねえってのに」


 あの爆発の規模では、大型船に積まれていた光線砲は勿論、乗っていた海賊達は誰も助からないだろう。

 当初セシリアから拿捕するよう指示されていたディータは、思わず舌打ちする。

 先ほどから話しながらしっかり観察していた艦長は、首を振って否定した。


「……いいや、あれは恐らく自爆だ」


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