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第4章(4)またお魚さんがとれました

 特務輸送艦『エピメテウス』は、連合海軍に視認されないぎりぎりの距離まで進出し、飛行甲板を開放していた。

 真っ先に着艦したシャンタニ・ラージ・メルワ准尉の『ガルーダ』二番機に、甲板員達が駆け寄って梯子をたてかける。


「要らぬ、妾は一人で降りられるぞ!」


 梯子を使うのももどかしく甲板に飛び降りようとしたシャンタニを、同じ色の肌をした華奢な手がそっと止める。


「姫様なりません。貴人たる者、下々の気遣いをそのように無下にしては」


 シャンタニにバーラト語でそう囁いたのは、身につけた整備士の作業服がどこか似合わない、たおやかな妙齢の婦人だった。


「むう……」


 シャンタニは渋々梯子を降りる。


「ご無事で何よりです。姫様の御身にもしものことがあればこのカルパナ、陛下とラクシュミー様に生きてお目にかかれません」


 カルパナと名乗った婦人は、梯子を降りてきたシャンタニの背中に優しく上着をかける。


「そなたには礼を申さねばな。そなたの手際の良い修理の甲斐あって、助太刀に戻ることがかなった。カルパナはバーラト一、いや大陸一の技術者じゃの。女官にしておくには惜しい」

「勿体無きお言葉……ですが、姫様のおそばにお仕えできることが、何よりの誉れかと存じます。シュタール博士にはどうかご内密に」

「わかっておる。そうじゃ、のどかはどうなった? 無事なのだろうな?」


 その時、艦首から大きな歓声が上がる。

 シャンタニが目を向けると、起重機に吊り上げられて、海から『ガルーダ』四番機が揚収されていた。

 機体のあちこちから水が滴り落ち、風防が半開きになった水浸しの操縦席で、涼宮のどかがこちらに手を振っている。

 操縦席の中には、ぴちぴち跳ねる銀色の何かが大量に見える。


「えへへ、お魚さんがいっぱいとれました~!」


 そのいつもと変わらぬ能天気な声に、シャンタニは拍子抜けして溜息をつく。


「……やれやれ、しぶとい奴じゃ」

「聞けば、『ガルーダ』で海に潜ったとか?」

「ああ、奇跡のような信じられん話じゃ。しかし、よくやりおった」


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