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恋はアルデンテがお好き  作者: ルイ シノダ
7/21

第二章 戸惑い (4)

三咲は、優一とのデートで心が温まります。美佐子はそんな三咲にディズニーランドでのデートの事を聞きだします。三咲はキスまでする仲の優一が今一つ自分を本当に好きなのか不安を美佐子に打ち明けますが。

第二章 戸惑い


(4)

「三咲、どうだったの。土曜日のデート。きちんと“報告”しなさい」

先週の土曜日のディズニーランドのデートをしっかりと聞きたい美佐子は、三咲を昼食に誘うとテーブルに座ったとたん切り出した。

 話題をそちらに行かないように勉強のこととか話しながら、なんとなくごまかそうとしていた三咲は、いきなり切り出されて少し恥ずかしい様にほほ笑んだ。

「ふふふっ」

「なによ、その笑い。うまくいったのね」

「えっ、“うまくいったって”ってどういう意味」

“何を聞くつもりなんだろう。美佐子は”と思いながら黙っていると

「少しは、教えてよ」

と言ってねだるように言う美佐子に

「仕方ないな。少しだけね」

と言って、待ち合わせのことやディズニーランドで何に乗ったかなどを話した。

「ふーん、でっ、その後は」

「えっ」

急に赤くなった三咲に

「聞きたいのは、乗り物じゃなくて、彼との進展よ。一番大事なところ」

確かに聞く側にとっての関心は、そこにある。

「家のそばの駅まで送ってもらって別れた」

「えーっ」

と声を出して、滑りそうになった美佐子は

「それじゃ、小学生の遠足じゃない。なにか、“こうっ”濃い場面とかなかったの」

“何をのぞんでいるの”と思うと

「そういう仲ではありません」

と言って少し真顔になっていうと

「信じられない。一八も過ぎた男女がディズニーランド行って、そのままサヨナラだなんて。キスぐらいしなかったの」

“キス”という言葉に反応してしまった三咲の赤くなった顔を見て

「ほうら、やっぱりしっかりあったじゃない。そこが聞きたいの。どういう状況でしたの」

赤くなった顔を隠すように下を向いたまま、答えない目の前に座る友達に

「まあ、いいか。あまり突っ込むのも“はしたない”しね」

相手があきらめムードになったのがわかると顔をあげて“そうそう”という顔をして笑顔になった。

「でもね、美佐子。いまひとつ、彼が私をどう思っているのか、分からない。今回のディズニーランドもなんとなく“無理、無理“という雰囲気もあったし」

三咲の言葉に“まさか、こんな可愛い子が誘って一緒にデートまでして、嫌いとか興味ない”は、ないでしょう。それにいつの間に“彼になったよ”そう思うと

「それは、三咲の考え過ぎじゃない」

そう言いながらも確かに“ことを荒立てないようにするには、ある程度合わせた方がよいという場合もある”と思うと

「わかった、三咲。一度彼に会わせて」

“えっ”て、顔をすると

「大丈夫。取ろうとかじゃなくて。私が、“きちんと三咲と付き合う気があるのか”聞いてあげる」

“別にそんなことしてくれなくても”と思いながら“でもいいか”と思うと

「彼に聞いてみる」

そう言って、テーブルに運ばれてきたスパゲティを口にした。


三号館から出てくる優一を待っていた三咲は、優一の姿を見つけると、足早に駆け寄りながら

「優一」

と声をかけた。声のほうを振り向きながら “なに”というような顔をすると

「今日、講義終わったら何か予定入っている」

三咲の言葉に頭の中で“何もないけど、今日は帰りたいな”と思っていると

「できれば、少し時間ない」

「うーん」

と煮え切らない返事をしながら考えていると

「ねっ」

と言って少し甘えた顔をした。仕方なく

「うん、いいよ」

と言うと時計を見た三咲は、

「じゃあ、四時にこの前お昼食べたファーストフードのところでいい」

「わかった」

美佐子との約束時間にとりあえず了解が取れた三咲は、この後の事が気になっていた。

「優一は、この後どういう予定なの」

「学生課にちょっと用事がある。その後は図書館でちょっと調べ物」

「図書館」

学内にある図書館に行くなんて三咲には、想像外の世界だった。“優一、図書館利用するんだ。何するんだろう”ちょっと興味を持った。

「図書館で何をするの。調べ物」

興味いっぱいで聞く三咲に

「うん、ちょっと調べ物」

「何を調べるの」

“もう、なんでそんなに聞くのかな。僕が何をしていいじゃないか”ちょっと面倒になった優一は、一瞬強く言おうと思いきつい目をしたが、その時、三咲が引くのがわかった。

「ごめん、そうだよね。優一の勝手だよね」

急に寂しそうな顔をする相手につい

「いいよ、ヘブライ語の調べ物。ちょっと分からないところがあって」

「ヘ、ヘブラゴ」

三咲は、頭の中に地球外生命体でも入ってきたようなショックを受けると目を丸くして

「ヘブライ語勉強しているの」

「うん」

「なんで、第二外国語でギリシャ語取っているでしょ。まだ他にも勉強しているの」

「うん、ちょっと仕方なくて」

「仕方ない」

“意味が分からない”という顔をすると

「将来必要になるから」

「えーっ、将来ヘブライ語が必要になる」

ますます、頭の中に疑問符がいっぱいなった三咲は、言葉を止めて優一の顔を見た。優一も三咲の顔を見ると何となく歩くように促しながら

「もう少し待って、“きちん”と話す時が来たら説明するから」

“なんでこんなこと言うんだろう。この子には関係ないことじゃないか”そう思いながら頭の片隅ある言葉を思い出した。


“一度家に連れてきなさい。お母さん会ってみたいな”。

“えーっ、そんなことない、そんなことない”自分で万が一の将来のことを想像すると必死に頭の中で打ち消した。

「優一、私もこの後、講義ない。一緒に図書館に行ってもいい。もちろん邪魔しないから」

“邪魔しないといっても気が散るし。でも仕方ないか。この雰囲気じゃ”と思うと

「いいよ。でも学生課にちょっと寄るよ」

「うん、待ってる」

三咲は顔いっぱいに笑顔を出しながら“うん”と頷くと優一と一緒に歩き始めた。


三咲は優一を連れて学校のそばにあるファーストフードの入り口を入ると、すぐに美佐子の座っている場所が分かった。三咲は、美佐子と視線があうと“さささっ“と歩いて行った。

“ちょっと、どういうことなんだ。また、話でもあるのかと思っていたのに。相手がいるのか。”そう思うと心に抵抗を感じながら、入り口のそばで立っていた。

よく見ると“あれっ、あの子は”と思った。同じギリシャ語の講義を聴いている女の子だった。受けている人数が少ないせいか、よく教授と会話している姿を思い出すと心の中の抵抗が少しだけ薄らいだ。

三咲がこちらを振り向いて手招きしている。ちょっと抵抗を感じながら立っていると近寄ってきて

「来て、友達を紹介する」

意味が分からないまま、仕方なく付いていくと

「優一、こちら、植村美佐子、私の高校時代からの友達。美佐子、こちら葉月優一さん」

優一は、頭を“ぺこん”と下げてお辞儀をすると相手の女性も笑顔で

「はじめまして、葉月優一さん」

と言って頭を下げた。

何を話していいか、全く分からない優一は、そのまま黙っていると

「ギリシャ語の講義で会いますね」

と言って美佐子が切りだした。

「えっ、美佐子もギリシャ語受けているの」

“意外だ”という顔をして、驚く三咲に

「うん、仕方ないの。お父さんから大学の間に“語学はよく勉強しておきなさい”と言われている」

“へーっ、この子誰なんだろう、将来の為に語学の勉強が必要だと父親から言われているなんて”自分と同じ感覚を感じた優一は、

「そうなんですか。僕も同じです。父から将来必要になるからと、語学は優先的に勉強しています」

“やはりそうか、葉月優の息子。葉月コンツェルンの次期跡取り”そう確信した美佐子は、

「三咲、素敵な人ね」

と言って三咲に笑顔を見せた。

「失礼ですが、どちらにお住まいですか」

“じっ”と顔を見て“どういうつもりで聞くの”という目をすると

「三咲の家のそばです。駅は、隣の南大沢ですが」

一息おいて

「葉月さんは」

と返した。優一は一瞬詰まると

「田園ライン沿いだって」

と三咲がフォローしたので“ほっ”とすると

「自分では言えないのですか。私と三咲には、聞いていますよね」

“まずい。この子結構強いな”と思いながら黙っていると

「美佐子、いいの。優一は、“時間が来たらきちんと説明してくれるって”言ってくれているから」

そう言って、隣に座る彼の顔を見ると“にこっ”とした。

「そう」

そう言って笑顔を作ると話を変えた。


翌日、優一は、ギリシャ語の講義を受けるため、渋谷から一緒に歩いてきた三咲と別れると三号館に向かった。

教室自体は大きいが、受ける人数が少ないので、みんな前のほうに座っている。よく見ると昨日会った植村美佐子がいた。

「隣に座ってもいいですか」

声の聞こえた方を向くと葉月優一が立っていた。

「どうぞ」

と言って興味無さそうに、また広げている本を見ていると小声で

「お父様は、どのような仕事を」

「プライベートなことを聞きますね」

と言ってちょっときつい視線を投げると

「実は、僕も父に言われて大学は、専攻以外も勉強をしています」

「知っています。三咲から聞いているわ。ヘブライ語やヒンズー語もでしょ」

“三咲口軽いな”と思っていると

「三咲は、あなたのことを話すとき、本当にうれしそうな顔をしているわ。大事にしてあげて下さい。葉月優一さん」

まるで何かを分かっているような口ぶりで言う美佐子にいきなり

「今日、講義終わったら少し話せますか」

“えっ”という顔をして“じーっ”と見ると

「いいですよ」

と言って相手の顔をしっかりと見た。やがて教授が入ってくると、二人ともそれまでの会話がなかったかのように前を見た。


“あいつ”に指定された大学から少し離れた表参道との交差点に近いお店に行くと“ちょっと・・ここ学生が入るお店なの”という雰囲気が入り口にあった。少し重めのドアを開けるとボーイが入り口で待っていた。まるで分かっているかのように

「こちらへ」

と言われた美佐子は

「あの」

と声をかけると

「お連れの方が待っておられます。どうぞこちらへ」

と言って先に歩き始めた。“どういうことだろう”と思って付いていくと、少し奥まったテーブルに“あいつ”がいた。

ボーイは、深々とお辞儀をして

「お連れの方が参りました」

と言うと優一の反対側の椅子を引いた。美佐子が座るのを待って

「すみません。わざわざ来て頂いて。ここなら同じ大学の人は来ないかなと思って」

と言うと“じーっ”と優一の目を見つめると

「確かに私たちの様な一般人には入れないところですから」

と言った。

“この人どういうつもりなんだろう。この前も突っ込んでくるし。僕はこの人に何もしていないのに”そう思いながら

「何を飲まれます」

「紅茶を」

と言うと優一はそばにいたボーイに目配せした。お辞儀をしてボーイがテーブルを離れるとそれを見ていた美佐子が

「慣れているんですね。こういうところ」

“うっ”と思うと

「ええ、いや父にたまに連れてこられるので」

「そうなんですか。こういうところにお父様と来られるのですか」

“あっまずい”と思うとちょっと困ったような顔をしながら

「すみません。植村さんともう少し話をしたくて」

“何を言い出すんだ。この男は”と思いながら見つめていると

「僕も父から“語学は重要だ。大学の間にしっかりと身につけるように”と言われています。植村さんも父上からそのように言われていると言っていたので少し気になって」

優一は、美佐子に明らかに心が惹かれるものがあるのを感じながら言うと

「父上は、葉月優さんですか」

直球をいきなり投げつけられた優は、少し黙った後、

「知っていたのですか」

と一言言った。

「三咲にはどこまで」

「何も教えていません」

「なぜ。三咲はあなたのこと一生懸命思っている。自分でも分からないと言っているけど、はっきりあなたのこと好きです。あなたは彼女に対してどうなのですか」

あらぬ方向に話が走ってしまっている。“まずいな”と思いながら黙っているとボーイが紅茶を持ってきた。ポットからとても心地よいにおいが漂っている。美佐子はボーイが持ってきた紅茶のセットを見ると

「私たち学生の身分では、とてもオーダー出来ません。そもそもこのようなお店には入れないですから」

そう思いながら鼻に薫る紅茶の匂いには感心していた。

ポットから入れる紅茶の匂いが優一のところにも届くと“お母さんの入れる紅茶は最高だけど、ここのもなかなかだな”と思っていると

「葉月さん、私の質問に答えて頂いていません」

そう言って、少しきつめの目をした。

“きれいだな”そう思いながら自分の心が揺れているが分からない優一は、

「安西さんは、友達と思っています」

「キスをしている相手でも」

“えーっ、なんで知っているの。展開がまずい”と思いながら黙っていると

「葉月さん、私の父は三井の傘下にある会社の社長です。あなたのお母様の友達、三井の総帥、かおる様の会社の傘下にあります。これでよろしいですか」

あまりのストレートな言い方に圧倒されながら頭の中で“植村”という言葉を検索した。“三井の叔母様、あおいのお母さんの傘下にある会社”そう思いながら思い出せない優一は、ただ会話の中で自分の立場が押されているのが分かった。

「葉月さん、もうよろしいですか」

そう言うと

「三咲のこと大切にしてあげて下さい。あの子は、あんなに可愛いのに、まだ一度も恋をしたことがありません。高校時代からとても、もてましたが全く相手にしませんでした。初めて好きになった相手があなたです。キスもあなたが初めてだと思います」

それだけ言うと席を立って

「紅茶とてもおいしかったです」

そう言って、お辞儀をするとテーブルを離れた。

優一は美佐子の後ろ姿見ながら明らかに自分の心にある何かを感じた。


「カリン、ただいま」

「あなた、おかえりなさい」

若い頃から秘書として自分に付いている北川が、かばんを手渡すと靴を脱いで玄関を上がった。

優は、妻のカリンのさわやかな顔で言われると目元がほころんだ。もう四〇を超えていても妻の笑顔は惹かれるものがある。

“自分にとってかけがえのない宝物。命に代えても守らなければならない人”その気持ちが、妻の笑顔見るといつも感じた。自分たちの部屋に行こうとすると二階から

「お父さん、お母さん」

そう言って、二階から息子が下りてきた。

“なんだ”という顔をすると

「聞きたいことがあるのでが」

と言うと

「今でないとだめなのか」

“これから妻と楽しい時間を過ごす。邪魔をするな”という目をすると

「いえ」

と言って下を向いた。その様子を見ていたカリンは、

「あなた、優一が、お話があると言っているのです。食事の後にでもお聞きになったら」

妻の言葉には、“No”と言う単語を持ち合わせていない優は、

「仕方ない。呼ぶから待っていなさい」

そう言って自分たちの部屋に行った。


「なんだ優一、お前から声をかけるとは。それもお母さんも一緒とはどういうことだ。結婚したい女性でも出来たのか」

「あなた」

と言って夫の優をたしなめると

「お母様の友達、かおる叔母様の傘下に“植村”という社長がいる会社がありますか」

いきなり何を言い出すかと思った優は、

「それがどうかしたか」

「あなた、優一が聞いているのです。何か理由があるのでしょう」

「だから理由を聞いている」

両親の会話に“まずいな”と思いながら“実は”と言って理由を話した。

「なるほど、分かった」

そう言って優は頭の中で検索すると

「三井の傘下に“植村建設”という会社がある。多分そこだろう。しっかりした中堅の会社だ」

「かおるに聞いてみましょうか」

「いえ、ここまでわかれば十分です」

「そう、ところでどちらのお嬢様が心にあるの」

いきなり直球を投げられた優一が返事に困っていると

「両方連れてきなさい。お父さんが見てあげよう」

一瞬にして左の頬に久々の妻の指が触った。

「いたーっ。分かった」

「分かっていません」

夫の“女癖の悪さ”に気を使いながらも息子にその血が継がれなかったことを安心しながら少し笑い顔で夫の優の頬を軽くつねる姿を見ると

「あっ、もう部屋に帰ります。ありがとうございました」

と言って、リビングを出た。

“うちの両親はなんであんなに中がいいんだろう”そう思いながら自分の部屋に戻った。


三咲に連れられて入ったファーストフードで美佐子を紹介され、優一は心が動きます。優一は美佐子の事を両親から聞き出すと直接会いたくなりますが。

次回もお楽しみに。

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