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恋はアルデンテがお好き  作者: ルイ シノダ
6/21

第二章 戸惑い (3)

三咲は楽しみだった”ディズニーランド”に優一と二人で行き、そしてとても楽しく素敵な時間を過ごした。その翌日も二人はデートをしますが、三咲の意外な行動に優一は驚きます。

第二章 戸惑い


(3)

「優一、綺麗だね」

「うん」

“エレクトリカルパレード”を見た後、シンデレラ城の後ろに上がるように見える花火“ディズニーマジック・イン・ザ・スカイ”が、今日一日を締めくくるように夜空に輝いている。

“なんだろう。一日一緒に居たからかな。この子に慣れた感じ。なんか心が暖かい”

優一は今まで経験したことのない気持ちに戸惑いながらも“今の心地よさ”を感じていた。

“嬉しいな。ずーっと、こうしていたい”

三咲は、優一の腕につかまりながら胸の中にある何かがとても温かくなるのを感じていた。

ちらりと自分の左腕をしっかりと抱いて寄り添う三咲を見ると花火の光でとても素敵に見える。

“可愛いな”

そんな思いを抱きながら見ていると三咲が自分の方を見た。恥ずかしくなって花火の方を見ると三咲が自分を見ているのが分る。少し恥ずかしくなって何となく頬を緩ませると

「優一」

と三咲が声を掛けた。なにも言わずに左を向くと自分の目を“じっ”見ている。

そのままの時間が過ぎていく。三咲は自然と目を閉じた。とても可愛かった。顔を近づけると三咲も顔を近づけた。

ゆっくり近づけると唇が触れた。とても優しく、とても優しく柔らかい唇に少しだけ触れた。

心臓の鼓動が三咲に聞こえるんじゃないか思うくらい高鳴っている。そのままにしていると三咲は一度目を開けて聞こえないくらいの小さな声で

「ス・・キ・・」

と言うと今度はしっかりと唇を当てて来た。時間が過ぎた。唇だけのキッス。例えのない素敵な時間だった。やがて館内放送が流れると唇を離して目を見つめると

「三咲、帰ろうか」

優しい声で言うと“うん”と言って頷いた。

優一は、自分の心の中に何か分らないものが“いる”感じがした。

三咲の右手をしっかりと握って微笑むと“にこっ”と笑って握り返してきた。

帰りの電車は、なにも言わず、ただ寄り添って座っていた。たまに顔を合わせると“にこっ”とする素敵な時間だった。三咲は疲れているのか、優一に寄り添う様に寝ていると“甘い”香りを感じた。

東京駅に着くともう九時半を過ぎていた。ホームに降りて二人で歩き始めると三咲は、なにも言わずに優一の手を握った。

優一は、左にいて一緒に歩く三咲に

「また駅まで送る」

と言うとなにも言わずに頷いた。

“なんだろう、この感覚。なんか胸につまっているものがある”

そんな思いを感じながら渋谷で降りて明大前で乗り換えて京王多摩センターまで来ると人波に流れながら階段を下りた。また、改札と反対側に行った。少しだけ見つめると

「優一、明日も会ってくれる」

「うん」

と言うと

「今日は、このまま帰る。明日、井の頭線の改札一〇時でいい」

「うん」

それだけ言うと三咲は、少し背伸びして、いきなり優一の唇に自分の唇を触れさせ

「じゃあ」

と言って改札に向った。


「ただいま」

「遅かったわね」

息子の声に寝室から出てきた母親のカリンは、玄関まで出てくると“じっ”と見た。

少し見た後、“ふふっ”と笑って

「お風呂入りなさい」

そう言って寝室に戻った。

“何を笑ったんだろう。今日は口紅も綺麗に拭いているし”

分らないまま二階に上がって手を洗うと風呂に入る仕度をした。


寝室の横にあるソファでまだ寝ていない夫の優が、笑顔で戻ってきたカリンに

「どうした」

と聞くと

「ふふっ、優一の顔に“僕は恋をしました”と書いてあったわ」

「えっ」

と驚くと

「やっと出来たか。会ってみたいものだな」

「まだだめですよ。貴方と違って、優一は奥手のようですから。時間を大事にさせましょう」

きつい一言を言われた優は、一瞬、妻の顔を見ると苦笑いをしながらサイドテーブルに置いてある“ジャックダニエル”のロックグラスに手を伸ばした。


「どうしようかな」

「ねえ、どれがいい」

“こんな時、何をいいんだろう。分らないよ”

「ねえ、どれが似合う」

“まいったなあ。大体、女の子の洋服なんて知らないよ。花音がいたらいいアドバイスでもするんだろうけど”

昨日の“ディズニーランド”のデートの後、今日も会う約束をして、渋谷に来たのは良いが、まさか洋服のショッピングにつき合わされるとは思ってもいなかった。

そもそも女の子の洋服なんてまともに目にしたことも無い優一は、三咲の試着室からの声に答えが見つからなかった。

「優一、どれか選んで」

“えーっ、なんで僕が選ぶの。自分が気に入っていればいいじゃないか”そう思いながら

「うん、これ似合うよ」

「そお、でももう一度良く見て」

と言ってもう一度試着室のカーテンを閉めた三咲に“まだ、見るの”と思いながら待っているとカーテンから首だけ出した三咲は、

「ちょっと」

と言っていきなり手を引かれるとカーテンを少しだけ開けた。三咲は、淡いピンクの下着姿のまま

「どっちがいい」

と言って右手と左手に持った洋服を首から右と左に交互に変えて見せた。

“うっ”いきなり三咲の下着姿を見せられながら洋服どちらがいいと言われてもどうしようもない優一は、

「右手」

と言うとカーテンを思い切り閉じた。

“どういうつもりだ。この子は。いきなりあんな姿を見せるなんて”理解できないまま試着室の外で待っていると元の洋服に着替えた三咲が試着室から出てきた。

「こっちにする」

そう言って、自分が選んだ・・正確にはとりあえず選んだ・・洋服を目の前に出すとそのままキャッシャーに行った。


昨日、別れる時、“明日も会ってくれる”、“うん”と言ったことを頭によみがえらせながら優一は、“どうなっているんだろう”と自分の心に自問していた。

三咲は、生まれた時から両親とはずっとお風呂に入っている。普段でも下着で父親の前を通る普通の家庭に育った。

だからと言うわけではないが、いわゆる“一般的な抵抗”が、心に無かった。優一に対しても異性というより洋服を選ぶ為の意見を聞いただけに過ぎない。そんな育ちの三咲は優一に対して抵抗を持たなかった。


「安西さん。一つ聞いていい」

その言葉に優一を“じーっ”と見ると

「二人の時は、“三咲”って呼んでくれるって昨日約束したでしょ。忘れたの」

“えーっ、それってあの時だけのことじゃ”と思いながら黙ってしまうと

「三咲って呼んでくれたら、優一の質問に答えてあげる」

“まいったなあ、なんかこれじゃあ”と思いながら仕方なく

「三咲、一つ教えて」

「うん」

嬉しそうに自分の顔を見ながら言われると“心がないでしまいそう”になりながら

「さっき、試着室で下着姿見せたでしょ。いつもあんなこと他の人にもしているの」

「えっ」

少し黙った三咲は

「ううん、してない。だって男の人と洋服選んだの、優一が初めてだし」

そう言って下を向くと急に顔を上げて

「優一なら大丈夫だと思った」

“ふふふっ”と笑いながら言う三咲に

“えーっ、どういう意味”そう思いながら顔を見ながら分らないでいると

「だって、優一だったら安心だもの。それに・・・」

下を向いたまま、言葉を閉じた三咲に、全く理解できないまま仕方なく前を向くと

「優一、お腹すいた。何か食べよ」

また、顔を上げて嬉しそうな顔をする三咲に

“参ったなあ。なんか押されぎみ”そんな思いを頭の隅に残しながら渋谷を歩いていると

「ねえ、ここにしよう」

公園通りを上がって、ファイヤ通り側に少し降りた右手にある女の子の好きそうなお店だった。一瞬躊躇したが、

「いいよ」

と言うと三咲は、さっき買った洋服の大きな袋を持ちながら店のドアを開いた。優一は、三咲の後ろから店内を見るとそんなに違和感が無い。“まあいいか”と思いながら入口を入ると

「いらっしゃいませ」

と言って愛想よく女性の店員が声を掛けてきた。

「お二人ですか」

優一は、なにも言わず右手で人差し指と中指を立てて頷いた。

「奥のテーブルへどうぞ」

店員が左手でテーブルの方向を指すとちょうど四人がけのテーブルが一つ開いていた。


「美緒、どうしたの。日曜日、声掛けるなんて」

「うん、ちょっと」

「えっ、“ちょっと”って」

中等部から一緒の美緒は、昨日の夕方にいきなり花音に電話をしてきた。

「花音、明日空いている」

「うん、特に予定は、入っていないけど」

「ねえ、明日会ってくれない」

「良いけど」

「じゃあ、渋谷のいつものところで一一時でいい」

「分かった」

いきなり“会って“と言われた美緒が、目の前に座っている。

「美緒、なあに。昨日いきなり電話してきて会ってと言うから」

下をむいたままにしている友達に“どうしたんだろう“と思って待っていると

「花音、まだ、まだわからないんだけど」

「うん」

「何かいつも頭の中と言うか、心の隅というか、残っている物がある」

そのまま黙って聞いていると

「ねえ花音、男の人が気になった事ある」

「えっ、男の人」

“男の人、縁ないな。どうしたんだろう美緒。まさか“

「美緒、もしかして」

「そうみたい。困ったなあ」

美緒の顔を見ながら次の言葉を待っていると

「ねえ、お願いがあるの」

また、言葉を切ると

「今度、一緒に会ってくれない」

「えーっ、私が。な、なんで」

「だって、一人じゃ、ちょっと」

“わからないマーク”を頭の中一杯にしながら言うと美緒の顔を見た。花音は、まだ男の人に興味を抱いた事がない。というより花音の興味を引く人が現れていないと言った方が正しい。それだけに美緒から“一緒に会ってくれないと言われても”と言う気持ちだった。

「ねえ、花音お願い」

真剣な眼差しで自分を見てくる美緒に仕方なく

「いつ」

「今日、これから」

美緒の突然の言葉に目を丸くして驚くと仕方ない顔をして

「どこで待ち合わせているの」

と聞いた。美緒は、花音の顔を見ると

「パルコの前。駅の近くは人が多いから分かりやすい所と思って」

「パルコの前って、ここから直ぐじゃない」

「うん」

「何時に待ち合わせ」

仕方ないと思って開き直って聞くと

「二時」

袖を少し上げて自分の時計を見ると、まだ一時間近く有った。

「花音、いつもながら素敵な腕時計ね」

美緒の言葉に花音は微笑むと

「うん、去年の誕生日にお父様から頂いたの」

「羨ましいな。花音は」

そう言って本当に羨ましそうな顔をすると

「美緒は、アルバイトが出来るでしょ。私はさせてくれないもの」

いつもながらと思いながら花音の“ちょっと世間ずれした”と言うか“世間知らず”に微笑むと

「花音。アルバイトって大変なのよ。それにアルバイトどんなにしてもその腕時計は買えないわ」

友達の言葉に

「そうかなあ」

と言って自分の腕にしている腕時計を見た。文字盤が絵本仕掛けになっていてリングとベルトには、ダイヤが散りばめられている。決してしつこくなく。チラリと隣に目をやると年輩の女性が羨ましそうに見ていた。その顔に気がつくと花音は、すぐに洋服の袖を元に戻した。

「でもね、美緒」

と言ってお店の外を見ながら

「美緒が、思うほど好きには出来ないわ。不自由と言う意味では無いけど」

そう言って美緒の顔を見ると“確かに”という顔をして微笑んだ。

二人で学校の事や遊びの事を話しているとやがて二時一〇分前になった。

「花音、そろそろ行こうか」

と言って美緒が、声を掛けると花音は頷いた。


花音は、美緒とパルコ通りをちょうどスペイン坂から上って右手に行く方向に歩いて行くとパルコのビルが見えてきた。

一緒に並んで歩いていると花音は、自分の目を疑った。“えっ、そんな”信じられない光景にちょっと立ち止まるとそのまま一点を見つめた。

パルコ前の通りの坂を下りるようにして兄の優一が女性に手をつながれて“明らかにつないでというよりつながれて”歩いて行く。見間違いはなかった。

「どうしたの花音」

いきなり立ち止まった友達に不思議そうな顔をしながら覗くと思い切り驚いた顔をしていた。

「美緒、ちょっとごめん。少しでいいから、彼と二人でいて。すぐに戻る」

一緒にいたのは、青山通りで、やはり兄と一緒にいた女性だ。そう思うと花音は、自分の好奇心を抑えられなかった。

いきなり走り去る友達を驚きながら見ていると、すぐ後からサングラスにスーツ姿の男が同じように走って行った。

“ったく、花音たら”そう思いながら“思ったら止めようのない友達”をは、半分あきらめながら見送った。


結局、花音は、優一と女性の後を尾行するように後を付いたが、その後映画館に入られてしまい、あきらめて美緒のそばに戻るため、坂を上っていると美緒が男性と楽しそうに話している。

“なーんだ。私はお邪魔虫だね”と思うとスマホを取り出し、メールをタップすると

“美緒、ごめん。お邪魔虫しない。じゃあ明日学校で教えて”と入力すると“送信”をタッチしてそのまま、バッグにしまった。

歩みを止めた花音は、後ろを振り返るとサングラスの男に頭だけ“コクン”と頷いた。


“なんで私だけ”と思いながら車の後部座席に座る花音は、窓ガラスの外に映る景色を見ながら何も頭の中に浮かばずにいた。


美緒との相談に渋谷で会っていた時、三咲と優一のデートを偶然見つけた。興味津津で二人の後を追いますが、結局映画館に入られ、あきらめて美緒と彼のところに帰ろうとして結局、行かずに自宅に戻ることになった花音。

少し可愛そうな気もしますが。さて、次回は優一の心にある戸惑いが生じます。お楽しみに。

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