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恋はアルデンテがお好き  作者: ルイ シノダ
14/21

第四章 思いと現実の中で (2)

会社の帰り三咲と会った優一。我がままが可愛い三咲と楽しい時間を過ごします。三咲は、優一に全てを許しながら、いつもそばにいたいと思う一途な思いに優一は心が揺れます。

「優一、一五分も遅刻だよ。どうしたの」

「ごめん、仕事が延びちゃって」

少し、心に引っかかったが、“そんなに悪意があるわけでもないし”と思うと

「じゃあ、お詫びに私の好きなところへ連れって」

一瞬、“どきっ”としたが、まさかと思うと

「赤ワインのおいしい店。でもホテルのような高いところは“だめっ”。少しおしゃれで普通のお店」

“また難しいことを”と思いながら、いつものわがままだと思うと

「わかりました。三咲の好きなとこいま、考えるからちょっと待って」

三咲は本当に可愛い子だった。七時は遅くない時間とはいえ、心配なので少し込み合うが、ハチ公前交番の前でいつも待ち合わせた。ここならば、変な男が声をかけることもないと思うからだ。

だが、二人のやり取りに交番のお巡りさんまでが、“じっ”と自分の顔を見られている気がすると三咲の手を引いてガード下へ行った。

「優一どこいくの」

「うん、ちょっと知っているお店。素朴だけどしゃれたワインと料理のおいしいお店」

顔を急に明るくして

「本当、楽しみ」

そう言って、今度は三咲が優一の手を握った。


宮益坂下の信号を渡って明治通り方向行き、ちょっと右に折れた左手にお店があった。

見た目が少し古びた感じの重い木のドアを開けると優一は見なれた顔の男に

「マスタ、二人だけど座れる」

「葉月様、大丈夫です」

と言って、奥の左にある二人座りの席を見た。

優一の後をついて“おずおず”と入っていくと優一が奥の席に、自分は店員が引いてくれた席に座った。

 周りをよく見るとフランスの地図に色々なワインの産地の名前が入った地図が壁に貼ってあり、後はワインクーラーやワインが所狭しと並べられていた。

「優一、素敵」

それだけ言って嬉しそうな顔をしている三咲に

「最初は簡単にグラスでビールを飲んだ後、ワインにしようか」

「うん」

そう言って、マスタの持ってきたお絞りで手を拭いた。


優一の言った通り、ワインは美味しかった。そして食事もフランスの普通の料理という感じで決して気取る事ない味に三咲はとてもうれしかった。

お店を出て、ゆっくりと渋谷駅の方向に優一の手を握りながら下を向いている三咲の姿に“まさか”と思いつつ歩いていると

「優一、今日は私の好きなところへ行ってくれるって約束したよね」

そう言って優一の瞳を見た。優一も三咲を見つめ返した後、少し自制心が切れているのがわかりながら

「三咲いいの」

なにも言わずに頭を“コクン”と下げると足を向けた。三咲とは卒業旅行以来、二度ほど体を合わせている。あれ以来、三咲と体を合わせるのにそんなに抵抗はなくなっていたが、美佐子の事を考えると自分から積極的にはいけなかった。それを三咲は良いようにとっているらしかった。


部屋に入ると三咲が優一に寄り添ってきた。

「優一」

それだけ言うと目を閉じて顔を近づけた。三咲の唇はマシュマロのように柔らかい。唇を合わせながら、ブラウスのボタンに手をやると三咲は優一に回している手を緩めた。ボタンをはずすと三咲は自分でブラのホックをはずした。決して小さくなくそしてとても素敵な胸だった。


三咲は、いつの間にか体が覚えためくるめく感覚の中で体をゆだねていた。ただ口から彼の名前だけを呼んでいた。そして、彼の唇が自分が一番感じるところに来ると別の言葉が口から洩れた。更に強い感覚が体に走る。三咲は自分の体が我慢できなくなってきたのを感じると

「優一、お願い」

言葉が漏れた。彼が入ってくるとたまらなかった。可愛い顔が体に走る感覚でゆがんでいた。ただ口だけが空いて言葉が漏れていた。優一はたまらなかった。やがてそれが来ると

「三咲我慢できない」何回も頂点に達した状況の中で彼の声が遠くに聞こえた。

「今日は大丈夫」

それだけ言うと自分の体の奥に熱いものが入ってくるのがわかった。更に彼は激しく突いてきた。三咲はたまらなかった。シーツを思い切りつかみながら声だけが漏れていた。また、彼の熱いものが体の奥に入ってくるとやがて彼は自分の体の上に覆いかぶさった。

「三咲」それだけ言うと唇にキスをした。やがて彼の舌が歯に当たるので少しだけ口をあけると彼の舌が入ってきた。自分の舌が生き物のように合わせている。まだ、彼が自分の中にいる。三咲はずっと目を閉じていた。やがて激しい口付けが終わると彼は自分から抜けて、横になった。

なぜか自分の胸を遊んでいたので

「優一、なにしているの」

「可愛いなと思って」

そう言って遊ばれていると気持ちよかった。“自分の体は優一のもの。お嫁さんになるか、わからないけど優一とずっと一緒に居たい”それだけが三咲の心の中にあった。

だから本当は、もっと体を合わせたかった。そうすると優一がいつもそばにいてくれる気がする。そんな気がしていた。

でも二カ月に一度程度だった。それもいつも自分から誘う。三咲の心はいつも心配の気持ちがあった。“優一は本当は、自分を好きじゃないんじゃないか。葉月家は厳しいから、私となんか付き合うなと言われているんじゃないか”そんな思いがいつもあった。

だから、優一の家には、あれ以来行っていなかった。ご両親や妹が嫌いなわけではない。でも、何か自分には受け入れがたい大きな溝があった。

「優一、私のこと好き」

体を合わせたばかりなのに少しさみしそうな顔をして言う三咲に“なんで今そんなこと聞くんだろう”と思いながら

「好きだよ。三咲」

決して嘘ではなかった。三咲とデートしている時はいつも楽しかった。今日も本当は自分が誘いたかったくらいだが、美佐子の事が頭にあり、自制しているところへ、三咲が誘ってきた。自分としてはうれしかった。自分自身に都合のいい言い訳ができたと。自分ではずるいと思いながら、三咲と体を合わせることは嫌いではなかった。三咲のからだは、唇と同じように柔らかく、きめ細やかで肌を合わせていると気もちよかった。

「優一、本当に今の言葉信じていいんだよね」

なぜ三咲がそこまで言うのかわからなかった。

「うん」

と言うと自分の体に抱きついて来て

「優一、ずっとそばに居たい。こうして居たい。離れていたくない。お願い」

自分の胸に三咲の目から零れ出た涙が触った。

「三咲」

優一はそれしか言えなかった。

結局、朝まで居たいという三咲をなだめて帰ることにした。すでに一時を回っていたのでタクシーで家まで送り、自分もそのタクシーで帰った。

 帰りのタクシーの中で優一は、なぜ三咲が、あそこまで言ったのか。そして可愛い瞳から零れ出た涙の意味がわからなかった。


 次の日、石原美奈と渋谷で会った。二人とも帰りの都合がいいという理由だ。会社にばれないように携帯のCメールで場所を決め、別々に会社を出た。 会社のメールで携帯の番号だけ教えてもセキュリティチームは疑わない。

「葉月君、待った」

「ううん、今来たところ」

「どこ連れて行ってくれる」

“えっ、どういうこと”と思いながら美奈の顔を見ていると

「こういうときは男性がエスコートするものでしょ」

“そちらが誘ったのに”と思いながら石原美奈の積極さは、心地よかった。

「何か食べたいものある。和洋中華どれがいい」

「うーん、どれでも。できれば和がいいな」

「わかった。ちょっと待って」

と言うと優一は、スマホを取り出した。前に父親に連れられて行ったお店を頭に思い浮かべると

「すみません。今から行って席ありますか。・・・はい、二人です。・・・そうですか。では五分後位で行きます」

“へーっ、電話で予約するほど知っているんだ。この人”と思いながら

「葉月君、詳しいんですね。渋谷。電話で予約するなんて」

「えっ、いや」

前に父親に連れて行ってもらったお店を一軒知っているだけだった。“なんか誤解されたかな。まあいいや。今日だけだし”と思いながら

「行こうか。あっち」

と言って目線をセンター街に向けた。センター街を歩いて三つ目の十字路を右に曲がった。美奈の右腕が一瞬だけ優一の左腕に触ったので優一は、ちらりと美奈の顔を見たが、あまり気にした様子はないようだった。

 そのまま、ハンズの通りに出ると左斜め前のパルコ通りに抜ける所に階段がある。そこを上がるとお店があった。

“この人、こんなとこ知っているんだ。ちょっと新入社員が入るという感じじゃないけどな”美奈は、どこかのビルの中にある適当な店にでも行くと思っていただけにちょっと内心意外だった。

 階段を上がると、小さく石畳と砂利が敷いてあり、打ち水までしてある。引き戸を引くと“がらがら”という音がした。明らかに“和”を意識したお店だった。

 引き戸を引くとすぐ右に会計処があり、そこの仲居が、

「いらっしゃいませ。葉月様ですね」

「はい」

優一は、なんで知っているんだろう。ここに来たの一年以上前だし“と思いながら仲居を見ていると

「こちらへ」と言って。右手で行く方向を指した。

美奈も少し驚いていた顔をしていた。“すごっ、こんなとこで食べるの”そう思いながら優一の後を付いて行くとやがて、座敷に通された。

「こちらでございます」

“えーっ、入口左あるオープンな場所だと思っていたのに”そう思いながら座敷に上がった。美奈も一緒に上がると結構なテーブルに明らかに高そうな座布団が二枚対面で敷いてあった。仲居が

「いま、ご用意します。少しお待ちを」

と言って出て行った。

「葉月君、いつもこういうところで食事するの」

ちょっと驚いたような、怒ったような顔をしながら言う美奈に

「違う、違う。僕も驚いている。このお店は父に一年以上前に連れて来て貰っただけ。僕も入口の左にあるオープンなところかと思っていた」

少し、優一の顔を見た後、

「左側だって、相当な感じよ」

やがて、仲居が、お絞りとお品書きを持ってきた。

「決まりましたらお呼びください」

と言ってもう一度下がった。

美奈はお絞りで手を拭きながらお品書きを見ると、とても自分では来れる値段ではなかった。

割り勘にしても厳しいと思うと

「結構高いですね。良いんですか」

暗に“ごちそうしてくれるんでしょ”と言うと

「うん、いいよ。好きなもの注文して」

“もうどうにかなるだろう。最悪、家のカード使ってお母さんにごめんなさいするしかない”と思うと自分もお品書きを見た。

美奈は、値段を気にしたのか、控え目な品を選んだが、優一はそれではお腹にたまらないと思ってお刺身や揚げ物を選ぶと

「葉月君、結構食べるね」

「えっ、石原さんが控え目だから」

「そんなことないけど」

少し、はにかんだように“にこっ”とすると“結構可愛いな”と思いながら

「ところでなにを飲みます」と言った。

美奈は、結構お酒も飲めた。両親が飲めるからだ。だが、初めからそれを出すわけにもいかないと思うと

「うーん、どうしよう」

迷った振りをしながら飲み物のリストを見ていると

「じゃあ、最初はビールにしようか。瓶ビールなら少しずつ飲めるし」

美奈が頭を縦に振ったので優一は仲居を呼ぶボタンを押した。


「葉月君、今の会社、どうして選んだの」

本当は、一気に飲みたいグラスに入ったビールを三分の一位口にしながら聞くと

「うーん、ちょっと」

“どうしようかな。親が決めた腰かけなんて言えないし”と思いながら実際のところ就職活動しなかった自分の痛いところを突かれたと思った。

「ちょっと」

“答えになっていない“という言い方をすると

「うん、実は、父の関係で」

“わーっ、なんで言っちゃたんだろう。誰にも言っていないのに”、アルコールが入ってもそうそう口にしない言葉に自分で驚いていると

「ふーん、縁故なんだ」

なんとも言えない雰囲気で言うと、優一の瞳を見た。

「石原さんは」と聞くと

「一応入社試験は受けたけど、縁故ちょっとありってところ。今の会社に知り合いがいて、うちの親に紹介してくれたの」

「そう」

“どんな家の人のなのかな”優一はすぐに相手の素性を気にしたがる自分の癖にちょっと腹の中で笑うと

「葉月君、なにがおかしいの」

「えっ、いや、なんでもない」

“まいったなあ。でもなんでこの子には抵抗ないんだろう”そう思いつつ、テーブルにある料理に手を進めた。

 結局、優一は、瓶ビールの後、日本酒を二合飲んだ。美奈は、ビールのままにしていた。

少し入ったせいか。つい首元から胸のラインに目が行くと“ふっ”と思い、美奈の顔に視線を戻すと“どこ見ているの”という顔をしていた。

「葉月君、飲みじゃないの。そろそろ帰ろうか」

“えっ、もう少し居たいのに。あれ何でそんなこと思うんだろう”

「葉月君って、ほんとあまり話をしない人ね。せっかくこうして二人で居るのに」

「いや、その」

話す前にいつも色々考える習慣が付いている優一は、そういう風に見えるらしい。

「まあ、いいわ。葉月君。今日はありがとう」

“もう少し、色々話したいのに”そう思いながら自分の言った言葉に残念がっていると

「うん、じゃあ出ようか」

仲居を呼んで精算をお願いすると

「これを会計にお出しください」と言ってプレートを優一に渡した。

入口の右に有った会計処で支払いを済ますと

「ご馳走様」

と言って美奈が微笑んだ。

 外に出る九時ちょっと前だった。まだ帰るには、早かったが

「葉月君、今日は楽しかったわ。ありがとう」

美奈は、本当はもう少し話していたかったが、これから次に行くと遅くなると思うとあえて自分から時間を切ることで帰ることにした。

「石原さん、僕も楽しかったです」

「じゃあ」と言って帰ろうとする美奈に

「あの」

と言って中途半端に声をかけると美奈は“なあに”という顔をした。

「また、会って頂けませんか」

「葉月君次第。じゃあね」

と言って地下鉄の入口に入って行った。

“なんであんなこと言ったんだろう”自分でも分からなかった。三咲と美佐子という女性がいる。そしてどちらも自分にとっては大切な人だ。

 三咲の我がままに“ちょっと”と思う時もあるが、一緒に居ると楽しい。美佐子はとても惹かれるものがある。美佐子には“三咲の事をはっきりしてくれないと自分自身の気持ちに素直になれない“と言われている。その上、二人とも両親に紹介している。三咲に至っては、向こうの両親にも挨拶に言っている位だ。それだけに石原になぜあんなことを言ったのか、自分でも分からなかった。電車の中で“やはり自分は祖父と父の血をひいているのか“そう思わざるを得なかった。


昨日、三咲と会う前にお茶を誘われた石原美奈と会社の帰りに会った優一は、何か惹かれるものを感じながら自分の行動を理解できないでいます。

しかし、優一は罪ですね。やはり祖父と父の血を引いているのでしょうか。

さて来週は、美佐子との関係が進みます。お楽しみに。

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