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愛、即、死。――恋した瞬間、君は死ぬ。  作者: 墻寧
第一部「即死能力発覚編」
6/16

第6話 パーティー結成は、地獄の釜の蓋が開く音

 冒険者ギルドの喧騒が、ピタリと止んだ。

 まるで時が止まったかのように、数百人の冒険者たちが入り口を凝視している。


 俺、相馬ユウリは、受付カウンターの前で石になっていた。

 手には「ソロ活動届」を持ったまま。

 だが、その届出用紙はもう意味をなさないだろう。なぜなら、俺の背後に「世界の終わり」みたいなメンツが勢揃いしているからだ。


 右に、炎を纏う聖騎士、ルミナ。

 左に、冷気を漂わせる魔女、セラフィナ。

 そして背中に張り付く、獣人のミルミル。


 王都の有名人トップ3が、よりによって「街の不審者(俺)」を囲んでいる。

 この構図、もはや処刑台だ。


「……あの、相馬様?」


 受付嬢が引きつった笑顔で尋ねてくる。


「パーティー登録ということで、よろしいでしょうか?」

「違う! 俺はソロだ! 孤独を愛する一匹狼だ! こいつらはただのストーカーだ!」


 俺の悲痛な叫びに対し、三人の女たちが同時に口を開いた。


「失礼な。私は師匠の『盾』です」(ルミナ)

「訂正するわ。私は彼の『管理者』よ」(セラフィナ)

「あたしはご主人様の『ペット』ー!」(ミルミル)


 ギルド内がどよめいた。

 「盾?」「管理者?」「ペット……?」

 おい、ミルミルの発言で空気の色が変わったぞ。なんというか、ピンク色でドロドロした誤解が生まれてるぞ!


「待て! お前ら、いい加減にしろ!」


 俺はカウンターを叩いて振り返った。

 ここで突き放さなければ、俺の人生は詰む。


「ルミナ! お前は聖女だろ! 教会に帰って祈ってろ! 俺みたいな薄汚い男の側にいたら、お前の評判が落ちるんだよ!」


「……っ」


 ルミナが胸を押さえてよろめいた。

 効いたか?


「自分の評判などどうでもいい……そうおっしゃるのですね。私の地位を守るために、あえて悪名を被ろうとするその高潔さ……」


 効いてねえ! むしろ感動してる!

 眼の前の好感度メーター(脳内イメージ)がグイッと上がった。


『警告。ルミナ・フレアハート、恋愛成就まであと2歩』


「次、セラフィナ! お前は賢いんだろ! 計算してみろ! 俺と一緒にいて得られる利益なんてゼロだ! 時間の無駄だ!」


 セラフィナが眼鏡を光らせる。


「計算終了。貴方のその『予測不能な行動原理』こそが、未知の魔術理論を解明する鍵。リスクを上回るリターン(知的興奮)が確認されたわ」


『警告。セラフィナ・フロスト=ルクス、執着度上昇中』


「最後、ミルミル! 離れろ重い! 俺は猫アレルギーなんだ! 近づくと爆発する病気なんだよ!」


「えー? でもお兄さんの心臓、すごいドキドキしてるよ? これって爆発の音? それとも……あたしにドキドキしてる音?」


 ミルミルが俺の胸に耳を押し当て、ニタリと笑う。

 鋭い。獣の勘が鋭すぎる。

 これは恐怖の動悸だと言ってるのに!


『警告。ミルミル・テイルスナッチ、勘違いにより発情(恋)の兆候あり』


 ――ピピピピピピピピ!!

 

 脳内で三つのアラートが同時に鳴り響いた。

 三方向からの「好き(死)」の波動。

 視界が真っ赤に染まる。


「あ、あの……相馬様?」


 受付嬢の声が遠い。


「皆様の登録、完了いたしました。パーティー名は……ええと、ルミナ様から申請があった『ユウリ様親衛隊』でよろしいですか?」


「ふざけんなァァァァッ!!」


 俺は絶叫した。


「そんな名前で活動できるか! 恥ずかしさで死ぬわ! もっとこう、目立たない、地味で、弱そうな名前にしろ!」


「では……『雑草魂』とか?」

「それでいい! 今日から俺たちは『チーム雑草』だ!」


 俺はヤケクソで叫んだ。

 「雑草」。踏まれても蹴られても、誰からも愛されず、ただひっそりと生きる草。

 今の俺にこれほど相応しい名前はない。


 だが。


「『雑草』……。踏まれても立ち上がる不屈の精神……素敵です、師匠!」(ルミナ)

「生命力の象徴ね。生物学的には最強の生存戦略とも言えるわ。悪くないネーミングセンスよ」(セラフィナ)

「草? 草むらで遊ぶの? やるー!」(ミルミル)


 なんで全員納得するんだよ。


 こうして、世界最強(最恐)のヒロイン三人を引き連れた、世界最弱の精神力を持つリーダーによるパーティーが爆誕した。


 ギルドを出た俺たちの背中に、冒険者たちの噂話が突き刺さる。


「おい見ろよ、『チーム雑草』だ……」

「あんな美女たちを侍らせて『雑草』と謙遜するとは……あの男、とんでもない大物だぞ」

「ハーレム王の誕生だな」


 違う。

 これはハーレムじゃない。

 地雷原だ。


「さて、師匠。まずはどのクエストに行きますか? ドラゴン退治? それとも魔王城へのカチコミ?」

「帰る! 俺は家に帰って寝るんだ!」


 俺は三人の美女に囲まれながら、涙目で宿屋への道を急いだ。

 その距離、あまりにも近すぎる。

 歩くたびに肩が触れ、手が触れそうになる。

 そのたびに『ピコン(死の予兆)』と音がする。


 神様。

 もし俺が前世で何か悪いことをしたのなら、素直に謝ります。

 だから頼むから、俺に「普通の不幸」をください。

 こんな「幸せに見せかけた処刑」は、もう勘弁してください……。

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