第二章 第五十話:「勘合符への道と新たな策」
第二章が長くなりすごましたね。既に出来ているので、第二章を終わらせましょう。
天正五年(1577年)晩秋——広州・明国官庁
黒川家の交易品の品質を証明し、明国の官僚たちの信頼を少しずつ勝ち取ることができた。しかし、本格的な交易を行うためには、正式な勘合符を獲得する必要がある。
「勘合符を得るためには、どのような手続きが必要なのか?」
俺は張文興に尋ねた。
張文興は慎重な表情を浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「勘合貿易は、明国が公式に認めた国のみが参加できるものだ。現在、日本との勘合貿易は断絶しており、再開するためには、皇帝の許可が必要となる。」
藤堂宗春が低く呟く。
「つまり、単なる交渉ではなく、宮廷政治にまで影響を及ぼすということですな。」
俺は静かに頷いた。
「ならば、皇帝へと繋がる道を探るしかない。」
張文興がわずかに微笑んだ。
「貴殿の熱意は評価する。しかし、皇帝への道は容易ではないぞ。」
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*明国の官僚階層と外交の難しさ
勘合貿易を再開するためには、まず広州の官僚たちの支持を固め、次に南京や北京の中央政府に働きかける必要がある。特に、宮廷での権力争いに巻き込まれないよう慎重に動かねばならない。
「殿、ここでの味方を増やすことが何より重要です。」
間宮時継が進言する。
「広州の商人や明国の官僚たちと連携し、黒川家が正式な貿易相手として認められるよう動かねばなりません。」
「それと同時に、堺の商人たちの動きを警戒する必要があるな。」
俺は広州の街並みを見つめながら言った。
「やつらは必ず、勘合符の獲得を阻止しようとする。」
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*堺の新たな策動
その頃、堺では津田宗及が新たな策を練っていた。
「黒川家が勘合貿易に加わるなど、絶対に許されぬ。」
津田は集まった商人たちを前に、冷静な声で言った。
「明国の官僚の中には、保守的な者も多い。日本の新たな貿易相手を簡単に受け入れるとは思えぬ。そこで、彼らの懸念を煽るのだ。」
「懸念?」
商人の一人が尋ねると、津田は微笑んだ。
「そうだ。例えば、黒川家が倭寇と繋がっているという噂を流せばどうなる?」
「それは……!」
「明国の役人たちは疑い深い。我々が密かに情報を流し、黒川家の信用を揺るがせば、勘合符の獲得は絶望的になる。」
商人たちは頷いた。
「さすがは津田殿、策は尽きぬな。」
津田宗及は満足げに頷いた。
「黒川家が貿易を支配することはさせぬ。堺こそが、日本の交易の中心であり続けるのだ。」
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*黒川家の対応と新たな戦略
広州での交渉が続く中、俺たちは新たな動きを察知した。
「殿、明国の官僚の中で、黒川家が倭寇と関係しているという噂が広まりつつあります。」
藤堂宗春が報告する。
俺は静かに目を細めた。
「堺か……。」
間宮時継が呟く。
「やつら、今度は噂を利用して我々を貶めるつもりですな。」
「だが、対抗策がないわけではない。」
俺は地図を指しながら言った。
「明国の沿岸で倭寇を取り締まる活動を行えばよい。織田家の名の下に、日本から倭寇を排除する意志を示せば、疑いを払拭できるだろう。」
藤堂宗春が頷いた。
「なるほど、それを明国の官僚たちに見せつければ、信用を得ることができますな。」
「それだけではない。」
俺は扇を閉じ、静かに続けた。
「南京の役人たちとも接触し、黒川家の貿易の利点を直接伝える。我々が提供できるものは、単なる交易品だけではない。秩序をもたらす者としての存在も示すのだ。」
間宮時継が微笑んだ。
「黒川家の商業国家としての力を、明国にも知らしめるわけですな。」
俺は静かに頷いた。
「これが、勘合符獲得への道となる。」




