第二章 第四十一話:「博多との交渉と新たな勢力図」
天正五年(1577年)初夏——博多・神屋宗湛の屋敷
博多は西国随一の商業都市であり、長年、中国や南蛮との交易の要衝として栄えてきた。その中心的な商人である神屋宗湛の屋敷に、俺は藤堂宗春、間宮時継、斎藤友継を伴い、交渉の席に着いていた。
「黒川殿、この度はわざわざ博多までお越しいただき、誠に光栄です。」
神屋宗湛は丁寧な口調でありながらも、その目は鋭く光っていた。彼が単なる商人ではなく、政治的な影響力も持つことを一目で感じさせる。
「こちらこそ、お招きいただき感謝する。我々は、博多と越前を結ぶ新たな交易路を開くことで、互いに利益をもたらしたいと考えている。」
俺は静かに告げた。
宗湛は茶を啜りながら、慎重に言葉を選んだ。
「それは興味深い申し出ですな。しかし、ご存知の通り、我々博多の商人はこれまで堺との結びつきが強うございます。今さら黒川家と組むとなれば、堺の商人たちとの関係が揺らぐことになりますが……。」
藤堂宗春が前に出て、静かに微笑んだ。
「そこが、我々の提案の要でございます。」
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*博多への提案——堺を超える交易網
俺は扇を開き、ゆっくりと話し始めた。
「宗湛殿、確かに博多と堺は長年の関係を築いている。しかし、堺は今や黒川家の交易に依存し始めている。彼らは我々を利用し、独占を維持しようと考えているが、いずれはそれが逆に足かせとなるだろう。」
神屋宗湛が興味深そうに眉を上げる。
「ほう、それはどういう意味でしょう?」
「堺の商人たちは、黒川家の交易を妨害しようとしたが、それに失敗した。その結果、彼らは黒川家の流通に頼らざるを得なくなっている。」
間宮時継が続けた。
「つまり、黒川家が博多と直接交易を行えば、堺はさらに我々に依存することになり、博多の影響力も増すのです。」
宗湛がゆっくりと頷く。
「なるほど……。」
俺は更に畳みかけた。
「さらに、博多は南蛮貿易の拠点でもある。もし黒川家がこの地を経由して貿易を行えば、西国と畿内を繋ぐ新たな交易路が生まれる。その流通を我々が管理すれば、堺に頼る必要はなくなる。」
宗湛は静かに考え込み、やがて笑みを浮かべた。
「黒川殿……貴殿は商いを戦と同じく、戦略で動かしておられるのですな。」
俺も微笑み、静かに告げた。
「商業は、国を作る力を持つ。だからこそ、慎重に、そして大胆に動かねばならん。」
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*交易同盟の締結と新たな展望
交渉の末、神屋宗湛は黒川家との同盟を受け入れた。
「この博多と越前の交易路、共に築き上げてまいりましょう。」
「もちろんだ。」
俺は深く一礼し、握手を交わした。
藤堂宗春が耳打ちする。
「これで、西国の流通を抑えることができましたな。」
「そうだ。そして、堺の商人たちは次にどう動くか……我々の次の一手も考えねばならん。」
俺は静かに目を閉じ、戦略を練り始めた。
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その夜、博多の港を見下ろしながら、俺は新たな決意を固めた。
「商業国家としての地位が、さらに盤石なものとなる……次は、どの勢力を味方につけるか。」
遠くには南蛮船の灯りが揺れている。
「堺の商人たちが、どう動くか……楽しみだな。」
何度も決意を新たにする。黒川真秀だけど、ワンパターンかな。




