第二章 第四十話:「堺の策謀と新たな同盟」
天正五年(1577年)晩春——堺・津田宗及の屋敷
「……黒川家の影響力が、もはや無視できぬものとなった。」
堺の豪商たちが集まる屋敷の広間で、津田宗及は静かに扇を閉じた。
「京の公家が黒川と結び、さらにはフィリピンとの交易まで成功させた。これでは、堺の独占は崩れ去る。」
周囲の商人たちがざわめく。
「このままでは、堺は黒川家の手のひらで踊らされることになる!」
「なんとかしなければならぬ……!」
津田宗及は軽く微笑み、深く頷いた。
「その通りだ。しかし、力ずくではなく、策を講じるのが商人の道よ。」
「策……?」
「黒川家の交易を利用し、奴らが築き上げた商圏を逆に我々のものとするのだ。」
________________________________________
*敦賀・黒川家の商館
俺は取引報告書を確認しながら、藤堂宗春の話に耳を傾けていた。
「殿、ここ最近、堺の商人たちが黒川家の取引を拒むのではなく、逆に積極的に取引しようと動いております。」
俺は眉をひそめた。
「それはどういうことだ?」
「堺の商人たちは、黒川家が確立した交易ルートに便乗し、南蛮品の取り扱いを強化しようとしております。つまり、我々を排除するのではなく、共存するふりをして、交易の流れを堺中心に戻そうとしているのです。」
俺は扇を開き、ゆっくりと考えた。
「つまり、黒川家を利用するつもりか……。」
間宮時継が低く笑った。
「ですが、それを逆手に取ることもできますな。」
「どういうことだ?」
「堺の商人たちがこちらの交易に依存するようになれば、黒川家の影響力はさらに増します。つまり、我々が堺の交易を管理できる立場に立てるのです。」
俺は微笑んだ。
「なるほどな。ならば、こちらからも堺との取引を強化し、商流を完全に掌握しよう。」
________________________________________
*新たな同盟と戦略
「だが、それだけでは足りない。」
俺は扇を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。
「堺の策を封じるためには、さらに強固な同盟が必要だ。」
藤堂宗春が頷いた。
「どこと組むおつもりですか?」
「博多の商人たちだ。」
間宮時継が目を輝かせた。
「博多は、西国交易の要所……そこを抑えれば、黒川家の影響力はさらに拡大します。」
「その通り。」
俺は地図を指し示した。
「堺が黒川家の交易に依存せざるを得ない状況を作るには、さらに西の交易を確保し、彼らに取引の選択肢を与えないようにすればいい。」
斎藤友継が慎重に言葉を選んだ。
「しかし、博多の商人たちは、これまで堺と結びつきが強かったはず。彼らが黒川家につく保証はあるのでしょうか?」
俺は微笑んだ。
「商いにおいて、最大の保証は利益だ。黒川家と組むほうが得だと理解させれば、彼らは迷わず動くだろう。」
________________________________________
その夜、俺は城の縁側に座り、静かに茶を啜った。
「堺は、黒川家を利用することで生き延びようとしている……だが、それが逆に、彼らの自由を奪うことになる。」
藤堂宗春が静かに笑った。
「堺が黒川家に依存すればするほど、彼らは我々の手の中に収まる……まさに、商人の戦ですな。」
「そうだ。そして、次の一手は博多との交渉だ。」
俺は夜空を見上げ、静かに呟いた。
「これで、黒川家の商業国家としての地位が、さらに盤石なものとなる。」
博多商人でも有名人はいっぱいいますね。




