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第二章 第三十七話:「公家との駆け引きと新たな市場」

天正四年(1576年)晩冬——京・二条御所

黒川家の影響力を拡大するため、俺はついに京の公家との正式な交渉の場に臨むこととなった。二条御所の奥深く、香の漂う広間で、名のある公家たちが慎重な面持ちで並んでいる。

「黒川殿、貴殿の商業が越前に留まらず、京にまで及んでいることは承知しております。」

藤原家の重臣の一人が静かに口を開く。

「しかし、公家の経済基盤は長年、堺や奈良の商人との結びつきによって支えられてきました。貴殿がそれを覆そうとするならば、相応の覚悟が必要ですぞ。」

俺は落ち着いた様子で微笑みながら応じた。

「もちろんです。しかし、我々は堺を敵視しているのではなく、新たな市場を築こうとしているに過ぎません。」

公家の一人が首をかしげた。

「新たな市場……とは?」

「茶の湯、書物、芸術、そして南蛮交易を活かした新たな文化の流通です。」

俺は扇を広げ、ゆっくりと視線を巡らせた。

「公家の皆様にとっても、単なる金銭ではなく、文化や権威を支える新たな経済基盤が必要なのではありませんか?」

________________________________________

*京の公家との交渉——文化と商業の融合

交渉の場では、公家たちが互いに顔を見合わせながら考え込んでいた。俺の言葉が彼らの関心を引きつけたのは明らかだった。

「例えば、南蛮の香木を用いた新しい薫香を公家の儀式に取り入れる。あるいは、堺ではなく越前を経由して輸入される特別な紙を用いて、写経や公家の書状を製作する。」

藤原家の当主が目を細める。

「確かに、それができれば公家の品格を保ちつつ、新たな交易路を開くことになるでしょう。しかし、堺の商人たちがそれを許すとは思えぬが?」

「だからこそ、彼らを巻き込むのです。」

俺は微笑んだ。

「堺の商人たちにとっても、黒川家との取引が利益になるとわかれば、彼らは反対するどころかむしろ協力するでしょう。」

公家の一人が軽く頷く。

「面白い……つまり、堺の商人と公家、どちらにとっても利益になる形で黒川家の商業が広がるということか。」

「はい。そしてそのためには、公家の皆様の支持が必要なのです。」

________________________________________

*公家の決断と黒川家の立場

交渉の末、公家たちは慎重ながらも黒川家の提案に賛同する姿勢を見せた。

「貴殿の考えは興味深い。しかし、我々が完全に堺を見限るわけにはいかぬ。よって、段階的に取引を広げていく形を取ろう。」

俺は深く一礼した。

「感謝いたします。これをもって、黒川家は越前と京を結ぶ商業路を確立し、新たな市場を共に築いてまいります。」

藤堂宗春が静かに耳打ちする。

「殿、これで堺の独占的な立場を崩し、黒川家の交易が一歩前進しましたな。」

「そうだ。しかし、これからが本当の戦いになる。」

俺は視線を遠くに向けた。

「堺の商人たちは、この変化を決して見逃すまい……次は、彼らの出方を待ち、それに応じた動きを考える必要がある。」

________________________________________


その夜、俺は二条御所を後にしながら、静かに夜空を見上げた。

「公家たちは慎重だが、彼らも変化を求めている……これを機に、新たな商業秩序を作り出さねばならん。」

藤堂宗春が笑みを浮かべた。

「次の一手は?」

「堺の動きに注意しながら、新たな交易品を確保する。特に、南蛮からの貴重な品々をより独占的に手に入れることが重要になる。」

俺はゆっくりと歩を進めながら呟いた。

「黒川家の商業国家としての地位を、さらに強固なものにするのだ。」


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